勝手に映画評

私の見た映画を、勝手に評論します。
基本的に、すべて自腹です。

ミッドナイト イーグル(2007年)

2007年11月24日 | 邦画
心の傷ついた戦場カメラマン西崎優二(大沢たかお)が冬の北アルプスに篭っている目の前に、ナゾの光る物体が墜落した。その落ちた光る物体は、特殊爆弾を搭載したアメリカのステルス爆撃機B-5”MIDNIGHT EAGLE”。ナゾの光を追い、西崎と西崎の後輩落合信一郎(玉木宏)は吹雪の北アルプスに登るが、その吹雪の中では、特殊爆弾をめぐり、自衛隊とナゾの武装集団の攻防が始められようとしていた・・・。

日本のサスペンス史に残る壮大なスケールの映画です。実は、結構前に原作も読んだことがあります。細かいことは忘れてしまいましたが、原作では慶子は別居している妻であるのに対し、映画では死んだ妻の妹だったり、最後の処理方法の提案人が違ったり、最後に一緒に居る自衛官の名前と階級が違ったりしていますが、大筋は原作と合っていて、結構きちんと映画化されたと思います。”日本のサスペンス史に残る”というのも冗談ではないですね。これまでのちゃちい映画ではなく、きちんとした映画として作り上げられています。日本の映画も、2005年に福井晴敏の『亡国のイージス』や『終戦のローレライ』などが映画化されてから、変わってきましたね。このことは、正しく評価するべきですね。

西崎は、戦場で、目の前に居た少年が爆撃で命を落としたのを見て、心が折れてしまったと言う設定のようですが、なんか、もう少し強烈なことがあったほうが良かったような気もします。あれで、心が折れるのか?

竹内結子演じる、西崎の義妹有沢慶子は、写真週刊誌の記者という設定ですが、これは偏見かもしれませんが、あんなにきちんとした格好の写真週刊誌の記者って言うのはどうなんでしょう? それにしても彼女、憂いを湛えた表情が上手いと言うか、何と言うか。良い女優さんだと思います。

総理大臣の渡良瀬隆文は藤竜也が演じていますが、ちょっと微妙な演技。これが、小泉元総理の頃だったら、彼の風貌に似せた感じにする(2006年の『日本沈没』)んでしょうが、そう言う感じではなく、風貌は普通でした。今の日本の俳優で、総理大臣を演じることのできる人って、居るのだろうか?

袴田吉彦が、内閣危機管理監と言う設定で出ていますが、まず危機管理監としては若すぎると思うんですが、それを置いておいても、この映画で彼の役どころが必要不可欠であったかというと、そうではないですね。ちょっと冗長です。それと、官邸?のシチュエーションルームのシーンがあって、自衛隊幹部役も出ているんですが、自衛隊の将官としてはちょっと不自然な感じで、全く軍人、って言うか自衛官らしくありません。リアリティに欠けますね。吉田栄作の佐伯三等陸佐は良いんですけどねぇ。彼の、西崎の発言に対する「(われわれは)軍隊ではない。自衛隊だ。」と言うセリフが、自衛隊の矜持を示しているのでしょうか。このセリフがあったから、防衛省・陸上自衛隊・航空自衛隊の協力が得られたのかも。協力した部隊数は、結構あったようです。

突っ込みどころとしては、そのシチュエーションルームのシーンで、陸上幕僚長と言う設定の人物がブリーフィングを行っているんですが、陸幕長自らブリーフィングする可否は別として、陸幕長なのに肩章が三ツ星だったこと。陸幕長の肩章は四ツ星ですよ。統合幕僚長と見られる人物は、きちんと四ツ星だったんですけどね。映画の冒頭、F-15のスクランブルシーンから始まるのですが、これらの撮影は、先にも記したとおり、防衛省・陸上自衛隊・航空自衛隊の全面協力があったため可能であったんですが、陸上自衛隊の協力があっても、陸幕長の肩章は間違うんですね。それともう一つ。これも冒頭のシーンに関係する事柄ですが、この物語の設定では、日本の領空内でB-5 MIDNIGHT EAGLEに爆発が生じ、国籍不明機としてレーダサイトで探知されたことになっているのですが、日本の防空監視網って日本の領空の外側に向いているので、日本の領空内でいきなり国籍不明機が出現したとして、迅速に探知できるかと言う問題とスクランブルがかけられるかと言う問題があります。多分、両方とも、ダメなはずです。あ、あと、設定ではMIDNIGHT EAGLEの乗員は脱出しているのですが、ベイルアウトしたならコクピットの屋根は吹き飛んでいるはずだし、第一、座席が残っているのは変なんですけどね。まぁ、いろいろと突っ込むところはあるんですが、あんまり言うと、物語が成り立たなくなるので止めて置きます。

敢えてネタバレ的なことを記しますが、最後のシーン、日本的なハッピーエンドでなくて良かったです。『アルマゲドン』にも通じるエンディングでした。不覚にも、泣きそうになってしまいましたよ。今年の邦画の最高傑作だと思います。

タイトル ミッドナイト イーグル
米Yahooでの紹介 Midnight Eagle
日本公開年 2007年
製作年/製作国 2007年/日本
監督 成島出
原作 高嶋哲夫
出演 大沢たかお、竹内結子、玉木宏、吉田栄作、袴田吉彦、大森南朋、石黒賢、藤竜也、佐原弘起、浪岡一喜、金子さやか

[2007/11/24]鑑賞・投稿

マイティ・ハート/愛と絆(2007年)

2007年11月23日 | 洋画(アメリカ系)
2002年1月、パキスタンにおいて実際にあった、ウォールストリートジャーナル紙記者ダニエル・パールの誘拐殺人事件を描いた作品。ブラッド・ピットが製作に携わったことでも話題にもなりました。

9.11以降、テロとの戦いやイスラム世界とアメリカの対立を描いた作品は数多いですが、これもその一つです。しかしながら、戦争ではなく、戦争を報じるジャーナリストが巻き込まれた事件、そして、自身もジャーナリストである誘拐被害者の妻を描いています。その意味では、一般の9.11モノ(と敢えて言いますが)とは、一線を画している作品と言っても良いと思います。

アンジェリーナ・ジョリーが、事件被害者の妻マリアンヌ・パールを演じています。妖艶な雰囲気の演技の多い彼女ですが、この作品ではその妖艶さは封印。夫の誘拐に苦悩する妻、そしてそれにもめげず強く生きる妻を演じています。実在の人物を演じているわけですが、マリエンヌ本人と、映画のアンジーは、非常に良く似ています。実際、アンジーはマリエンヌ本人とも知り合いであるそうで、その事が役作りに役立ったのかもしれませんね。

”事実は小説よりも奇なり”とも俗に言いますが、この映画は逆に、”事実は小説より単調である”と言って良いと思います。映画のシーンのほとんどが、マリエンヌの自宅です。そう言う、シーン転換の無さが画面にちょっとけだるい単調な雰囲気を与えてしまったのは否めないと思います。

実際の出来事を映画にしたので、結末は分かっていますが、改めて映画で見てみると、不幸な出来事と言うのと同時に、何で分かり合えないのだろうか?と言う、疑問が再び頭の中に沸き起こりました。

そうそう、いつもは映画のことしか書かないのですが、今日は我慢できないので書いてしまいます。映画館の隣の席に、ショートパンツをはいた女の子を連れたデブが座って、思いっきり邪魔でしょうがなかった・・・。女の子が私の隣に来ていれば、そんなに文句は無いんだけど、デブでむさ苦しい男だったので、何とも不満です。しかも、どう考えても映画に興味を持っておらず、途中で寝ているし。だったら来るなよ。邪魔なんだから。

タイトル マイティ・ハート/愛と絆
原題 A Mighty Heart
日本公開年 2007年
製作年/製作国 2007年/アメリカ
監督 マイケル・ウィンターボトム
製作 ブラッド・ピット、デデ・ガードナー、アンドリュー・イートン
出演 アンジェリーナ・ジョリー、ダン・ファターマン、アーチー・パンジャビ、ウィル・パットン

[2007/11/23]鑑賞・投稿

ボーン・アルティメイタム(2007年)

2007年11月10日 | 洋画(アメリカ系)
記憶をなくした暗殺者、ジェイソン・ボーン3部作の最終第3作目。ボーン誕生の秘密が明らかになります。マット・デイモンと言えば、ひ弱なお兄ちゃんというイメージでしたが、この作品で、力強い演技も出来る俳優なんだなぁとイメージチェンジされました。

1作目『ボーン・アイデンティティー』と、2作目『ボーン・スプレマシー』の間は、約2年ほど経ったと言う設定ですが、2作目と今回の3作目は、ほぼ繋がっている時間設定ですね。2作目同様、自分に全く関係の無い秘密工作が、なぜがボーンのせいとされ、古巣のCIAに追われるという筋は、他の作品と同じ。ロンドン、マドリッド、タンジール、ニューヨークと、世界中を駆け巡ります。

2作目もモスクワで非常に激しいカーチェイスシーンがありましたが、今回も、ニューヨークで激しいカーチェイスシーンがあります。あれだけのダメージを受けたら、普通の人間だったら動けなくなりそうなものですが、ボーンは超人です。多少のダメージはありますが、倒れることはありません。凄いです。

1作目、2作目にも出ていたニッキー・パーソンズ(ジュリア・スタイルズ)と、2作目のボーンハンターのパメラ・ランディ(ジョアン・アレン)も本作に出ていますが、この二人が、ボーンの記憶再生に重要な役割を演じています。二人とも、ボーンを狩る側だったのですが、その狩りを通じてボーンの孤独さを理解し、影に協力しようと言う気になってたと言うことなのかな。今回も、ボーンが巻き込まれるのはCIA内部の腐敗が原因。今回のトラブルは不正と言うよりも、まさに腐敗って言うか、暴走と言うことですね。二人の協力で、その暴走を止め、自分の記憶を取り戻します。ニッキーとボーンの、その後が、気になる感じなんですけどね・・・。

このシリーズは、前の作品の内容が、後の作品の伏線になっているので、1作目から順に見ることを推奨します。そうでないと、話が繋がりません。3作品それぞれは、独立のものと言うより、3つが連続されて一つの作品と言うように理解したほうが良いと思います。ラストのボーンの映像は、、これは、最初のボーンの映像と対を成していると言うことですね。

タイトル ボーン・アルティメイタム
原題 The Bourne Ultimatum
日本公開年 2007年
製作年/製作国 2007年/アメリカ
監督 ポール・グリーングラス
出演 マット・デイモン、ジュリア・スタイルズ、ジョアン・アレン、デヴィッド・ストラザーン、パディ・コンシダイン、スコット・グレン

[2007/11/10]鑑賞・投稿

ALWAYS 続・三丁目の夕日(2007年)

2007年11月03日 | 邦画
舞台は前回から一年後の昭和34年。建設中だった東京タワーも完成し、東京の空に聳え立っています。そんな三丁目の日常が再び帰って来ました。

始まりがいきなりゴジラ?です。と言っても、それは茶川(吉岡秀隆)の作品のようです。でも、茶川の作品と言うことはゴジラじゃないんですよね(笑)? 淳之介(須賀健太)に「それって、ゴジラじゃないですか。」と突っ込まれていたし。うーん、話に引き込む手法としては良いのかもしれませんが、この映画の雰囲気としてはちょっと違和感。

今回の主題は『恋』ですかね。茶川とヒロミ(小雪)、六子(堀北真希)と幼馴染の武雄(浅利陽介)、一平(小清水一揮)と美加(小池彩夢)と3組の恋が物語には織り込まれています。番外としては、嘗て愛した山本(上川隆也)と結ばれること無く、鈴木(堤真一)と結婚したトモエ(薬師丸ひろ子)もいますが。時代が昭和34年(1959年)なので、まだまだ時代背景には戦争が漂っています。この話も、戦争を理解しないと分からない話です。

今回も非常にいい仕上がりです。でも、うーん、やっぱり大ヒットした作品の二作目というのは、前回と比べられるだけ厳しいですね。しかも、『二作目は無い』と言い切っておきながらの二作目ですからね。前回もそうでしたが、今回はそれ以上にVFXを駆使して、首都高の無い日本橋や、街に聳え立つ東京タワー、東京駅、そして果ては、羽田空港から飛び立つ飛行機や、特急こだまなど、当時のものが再現されています。でも、特に羽田のシーンですが、VFXであることがちょっとはっきりし過ぎていますね。もう少し自然な処理は出来なかったのかなぁ。一方、特急こだまは結構自然です。鉄道マニアから借りたこだまの模型を使って走行シーンを撮影したらしいのですが、実物に見えます。これは、精巧で成功だと思います。それと、羽田から飛び立つのはDC-6なのですが、これのSEを録音するために、まだ現役で使われているアラスカまで行ってきたそうです。別に、他のレシプロ機の音を使っても問題は無いのですが、リアリティにこだわった、その心意気には関心です。

今回は何故だか、日本橋のシーンが多いです。夕日を見るのも日本橋だし。日本橋の上の首都高が無いと、あんなにいい景色なんですね。これは、石原都知事の日本橋再生プロジェクトへの援護射撃なのでしょうか?

ちょっと厳しいコメントも記しましたが、それも、この映画の仕上がりが良いからこそ。笑あり、涙あり。今回も、いい映画になっています。

タイトル ALWAYS 続・三丁目の夕日
日本公開年 2007年
製作年/製作国 2007年/日本
監督 山崎貴
出演 吉岡秀隆、堤真一、堀北真希、薬師丸ひろ子、小雪、もたいまさこ、小日向文世、須賀健太、小清水一揮、三浦友和、吹石一恵、手塚里美、平田満、小池彩夢、上川隆也

[2007/11/03]鑑賞・投稿