河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

1520- ワルキューレ、ローウェルス、プロダクション、沼尻竜典、神奈川フィル&日本センチュリー響2

2013-09-23 18:31:58 | インポート

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2013-2014シーズン聴いたコンサート観たオペラはこちらから
2013-2014シーズン
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2013.9.14satキャスト1
2013.9.15sunキャスト2
2013.9.21satキャスト1
2013.9.22sunキャスト2
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2013年9月22日(日)2:00pm びわ湖ホール
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ジョエル・ローウェルス プロダクション
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ワーグナー  ワルキューレ
 第1幕 63分
 第2幕 91分
 第3幕 70分
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ヴォータン、グリア・グリムズレイ
ワルキューレ、8人
フリッカ、加納悦子
ジークムント、望月哲也
ジークリンデ、橋爪ゆか
幼少のジークムント、末本眞央
幼少のジークリンデ、広瀬英恵
フンディング、山下浩司
フンディングの仲間たち、(省略)
(以上第1幕に出ます)
ブリュンヒルデ、エヴァ・ヨハンソン
少女時代のブリュンヒルデ、浅野ユリ雅
 (第2幕で揃います)
以上、in order of appearance
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沼尻竜典 指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団
日本センチュリー交響楽団
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びわ湖ホールでの二日目です。最終公演となります。出演者は前週横浜で聴いたものと同じくキャスト2です。
ヨハンソン、グリムズレイが数段上なのは、もう明らかで、それに引っ張られるように他の出演者たちの馬力、充実度もすごいものでした。
それにこの日は、終演後にヨハンソンがもう一つの奇跡を起こしました。あれは空前絶後で絶対に二度と見ることのできないものだと思います。(あと)
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演出の妙については既にブログ2回のなかで断片を書いてきたのでそれを参照していただくとして、
この演出、ヴォータンが抱く幻影、家族への憧憬など幼少期の家族を舞台に載せ、契約や理屈を最後は越えてしまうお涙まで誘う非常に振幅の大きい演出だったと思います。
もう一人、彼の奥さんフリッカのウエイトが高い。
歌の出番だけだとフリッカは第2幕第1場後半で歌うだけです。通常の出番もそこだけだと思います。それがこの演出だと第1幕第1場ヴォータンが出てきて直後のシーン、ヴォータンのお城にそのヴォータン、それにワルキューレたちと一緒にまず現われます。そして、第3幕幕切れ最後の最後、亡霊ジークムントがヴォータンのお城に現われるところでも出ます。(最初のシーンと同じ構図ですね)
もっと妙なのは、第1幕双子の春の訪れのところで、ジークリンデが何かが入って来た、というところでゆっくりとフリッカがはいってきます。もちろん、双子には見えないという想定ではありますが。
いたるところに現われるフリッカ。あとで思い起こすと歌の出番で出てきたような錯覚に陥ってしまうぐらい印象度が高い。
フリッカの歌唱の部分は少ないものですが、リングのストーリーを展開させる大事なもの。双子の運命は、ヴォータンは自然の成り行きに任せればいいじゃないかと言う、フリッカは剣を持っているジークムントを負けさせろと。まぁ、摂理が自然でなくなるところですね。物語としては展開していく、ということだと思います。ヴォータンが長大な語りをはじめる前に物語は決まった。ここを押さえればこの第2幕、ちっとも長いと思わなくなる。展開が面白くてグイグイ惹きこまれていきます。オペラをあまり知らない連れが隣にいれば、この第2幕のあとの休憩はいらないわ、となる。気持ちが間延びするよりは第3幕をどんどん進めて言ってちょうだいよ。という話になってくる。
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第1幕
最初のヴォータン出現と幕。次のお城のヴォータン、フリッカ、ワルキューレのところにジークムントがはいってきて第一声を歌うシーンと幕。そしてようやくフンディングの家近辺のシーンとなる。最初の数分でこれです、とにかくめまぐるしく変わる。最初のブログ(2013.9.15公演)に書いた通り、ほぼコミックのコマ状態です。それだけでは済まず、それぞれの幕が上がる前にそのシーンを象徴する単語まで映し出される。説明過多なのか、私の感想は最初のブログに書きました。
とにかくこんな感じで流れていきます。
ジークムントの声質としてはキャスト1の福井よりこちらの望月のほうが個人的には好みです。進むにつれて流れ落ちる汗が凄い。汗まみれの熱演、好演でした。
惜しむらくは、声自体よく出ていたと思いますが伸ばし続けるところの保持が若干つらい。前の週の横浜の時の方が、のどに疲れが無い感じで痛快に歌えていた。この演出では2回のヴェルゼのうち最初のほうは聴衆に背を向けて歌います。同じ馬力で歌っても後の方が通りがよいという当たり前の結果で、ローウェルスの意図とは?という話になるが、ここもフル歌唱の熱演でした。
ジークリンデはキャスト1は馬力あり過ぎで、キャスト2橋爪の方がバランス良くイメージ通り。
つまりジークムントとジークリンデのいい組み合わせの歌を聴くことが出来ました。
フンディングはキャスト1の方が見た目はいい。キャスト2の山下は声は横浜の方が出ていたと思いますが、横浜でもびわ湖でも演技が自然でタイミングがよく、キャラクターがよく決まっていた。
この日の3人、役どころを歌い切りました。
最後のシーンに向けて集中していくところは横浜の方が決まっていたと思います。
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第2幕
フリッカは演出の妙で目に焼き付く。そしてこの演出に相応しいふてぶてしさが出ている。旦那のヴォータンを演技では食っている。字幕を見ながらのこの夫婦の動きを観ていると、シリアスと言うよりコミック風な感じがしてくる。
第1場のフリッカ、第2場のヴォータン、良かったです。
フンディングはジークムントを刺殺した後に、フリッカに倒されます。そして幕の直前、まだ息のあるジークムントにヴォータンがとどめを刺すところで幕。声なき展開ですがローウェルスの演出が光ります。
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第3幕
前幕の演出が濃いので、ここまで来るともう物語的には終わっているようなものですが、逆にどのように見せ場を作っていくのか、観る方としても余裕の観劇となる。観る方が自由に思い入れを作りながら観ていくことが出来ます。死体処分のワルキューレたちのグロテスクなあたりから、思いっきり始まる。
そんな感じで進む中、ヴォータンの家族の幻影も頂点に達する場面があります。舞台中央奥に一本ある木、そこのまわりにワルキューレ、ブリュンヒルデ、それからヴォータン幼少、双子幼少、みんな集まり、涙を誘うようなヴォータンの憧憬。そして歌い切り振り向くとそこには誰もいない。印象的な場面です。第3幕のグリムズレイの絶唱は、第2幕の語りのシーンとはまた別の張り詰めた悲しくも強い意志、錯綜した斉唱。そして絶妙な演技。最高のヴォータンでした。
これがあれば娘の最後の望みを叶えるしかない。ローゲ・ファイヤー、でも杖の3叩きはありません。音をたてない杖の演出ははじめて観たような気がします。
そして最後は、最初のシーンの回帰、ヴォータンのお城に亡霊ジークムントがヴォータンの腕を払いながらもその家族の方に向かっていくところで幕。
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ブリュンヒルデのエヴァ・ヨハンソンは、第2幕の最初の場のところからいきなり飛ばします。まだら模様にならない音域の広さとピッチの正確さ、それに歌いこまれているのでこなれている。ダイナミックレンジの幅が驚異的で振幅がすごい。安心して一緒にクレイジーになれるところがいい。こんな感じで第2幕の告知シーンまで圧倒的。第3幕でも衰えを知らず、ヴォータンとのやりとりは、二人で舞台の、そして心理的なパースペクティブが広く、10メートルぐらいのスチール製の刀が2本でじゃれ合っているような錯覚に陥る。
まことに素晴らしい、今回の数あった名シーンのなかでも白眉の、ヨハンソン、グリムズレイの場面であったのです。
ローゲ・ファイヤーはもう少し派手でもよかったかなと思いましたが、でも最後の最後のシーンがもう一つ用意されていたわけですから、これ以上多く望むものではありません。
大変に素晴らしい好演でした。
(ただ、オーケストラについては完全に横に置きたいと思います。)
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この日は4公演の千秋楽。カーテンコールでヨハンソンに呼ばれた沼尻はひかえめに入ってきましたが、彼女は沼尻を抱きかかえるだけでは気が済まず、体もろとも抱き上げた。沼尻がブリュンヒルデに両足を床からはがされた瞬間でした。
おわり


1519- ワルキューレ、ローウェルス、プロダクション、沼尻竜典、神奈川フィル&日本センチュリー響2

2013-09-23 00:40:00 | インポート

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2013-2014シーズン聴いたコンサート観たオペラはこちらから
2013-2014シーズン
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2013.9.14satキャスト1
2013.9.15sunキャスト2
2013.9.21satキャスト1
2013.9.22sunキャスト2
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2013年9月21日(土)2:00pm びわ湖ホール
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ジョエル・ローウェルス プロダクション
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ワーグナー  ワルキューレ
 第1幕 63分
 第2幕 92分
 第3幕 68分
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ヴォータン、青山貴
ワルキューレ、8人
フリッカ、小山由美
ジークムント、福井敬
ジークリンデ、大村博美
幼少のジークムント、末本眞央
幼少のジークリンデ、秋山珠羽沙
フンディング、斉木健詞
フンディングの仲間たち、(省略)
(以上第1幕に出ます)
ブリュンヒルデ、横山恵子
少女時代のブリュンヒルデ、小宮優
 (第2幕で揃います)
以上、in order of appearance
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沼尻竜典 指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団
日本センチュリー交響楽団
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先週2013.9.15に続いてのワルキューレ。キャストが変わりました。
先週の感想では演出のことを書きましたが、そのあとこの日の公演を観る前にもう一つわかったことがありますので書きとめておきます。
第3幕のローゲ・ファイアーに包まれて通常、幕が下りるのですがこのプロダクションでは、曲が終わる前に幕が下りごく短いですがもう一度幕が開きます。ヴォータンのお城に家族がそろっている。そこに亡霊ジークムントがあらわれる。よく来たというしぐさのヴォータンの手を払いながらも、その家族の中に入っていき、幕。
この最後のシーン自体ショッキングな演出ですが、このシーン、どこかで観た。
第1幕の最初のヴォータンがあらわれるシーン、そのあと2つ目のシーンがこれです。全く同じ構図。
この演出の組み立てはどのような意図でなされたのかは知りませんが、ヴォータンの前にあらわれる家族の幻影、憧憬、頻繁に出てくるがそのうちの一つなのか、最初が実在で最後の方は亡霊といった単純な構図でもないような気がするし。
ローウェルスのリング・サイクルとしてのプロダクション構想があれば観てみたいものだ。
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ということで、
この日の公演は、キャストがガラッと変わり、オールジャパニーズ。
別のオペラ感想でも何度か書いていますがこの日のジークムント役は、自分の持っているヘルデンのイメージの声と異なり、喉に横幅があるというか声が広がり過ぎでイメージが合わない。黒光りする突き刺すようなヘルデン・テノールのイメージが自分としては欲しいので、たくさんの賞賛の中、今一つ没頭できない。じゃなんでびわ湖まで聴きに行くの?という話になるのかもしれませんが、第一義的にはワーグナーの天才の脳を見たいからです。
まぁ、それはそれとして福井は、ピッチが良く安定していて慎重すぎるくらい丁寧な歌でかなり用意周到な練習量であったことは言をまたず、素晴らしい出来であったのは確かなんです。若さとは別かもしれません、経験に裏打ちされた正確性のようなものがあふれ出ておりました。
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ワルキューレ第2幕は90分かけてリングのストーリーの転換点を示していく。本当に味わい深い、聴けば聴くほど味が出てきますね。この幕で一番好きなところはヴォータンが長い時間かけてブリュンヒルデに語りかけるところ。通常のプロダクションだと第2場。歌なのか語りなのか名状し難い心の響き、それに寄りそう見事な音楽。
ストーリーの理不尽な展開の起点は既にフリッカにより第1場で示されている。第2場は語りかける内容もさることながら親と子の見つめ合い、聞くブリュンヒルデ。ワーグナーのひらめきが静かに広がるところだ。
ワーグナーは自分でストーリーを作り、歌詞テキストを作り、曲を作り、それで頭韻を踏んで、・・などと言われると、聴けば聴くほどアンビリーバブル・ワールド!
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告知のあと、ブリュンヒルデがお父さんとの約束をちょっと破り、でも結果は同じ。だけど罰は受ける。このシーケンス。通常ならフリッカの場より前から5場使って作り上げます。ローウェルスの演出もさすがに第2幕の場については出し入れが少なかったような気がしますが、登場人物の変わり目のところで幕の上げ下げがありますのでやはり、場ではなく場面というイメージが強い。
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内容のつまったこの第2幕のあとの第3幕は長いと思ってしまうのだが、ここは思いっきりエンターテイメントを楽しめばいいと思う。幻影の家族がそろっていつの間にかいなく、その部分のヴォータンはこの日はグリムズレイほど決まりませんでした。見た目や動きも大事な要素のヴォータンではあります。声は出ておりました。
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それからブリュンヒルデもヨハンソンなみではなくともかなり強烈に響き渡りました。ただ、見た目がワルキューレ8人とあまり区別がつかない、衣装で工夫が必要かと思いました。8人衆は、今回の方(キャスト1)が前回の方(キャスト2)より若干上だと思います。アンサンブルの緻密さとピッチそれに8本の馬力。
ジークリンデは、ど迫力で弱々しさはない。
フンディングは、演技はキャスト2が上だが、今日の方が役柄にマッチ。
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沼尻の棒は精力的。左腕は大きなアクションではないが、的確に歌い手にキューを与えている。こんなに頑張っているのにオケの汚れは前回から未改善。この合同オケよくありません。特に両サイドに分かれているブラスの響きはかなり聴くぐるしい箇所あり。
ホールの音響は前回2010年のトリスタンのときにも感じたが、1階センターにいても音が来ない、みぎひだりに分かれて後方に行ってしまう感じ。
おわり