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2009-2010シーズン聴いたコンサート観たオペラより
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この日は初来日のトリノ王立歌劇場の千秋楽
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2010年8月1日(日)3:00pm
東京文化会館
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ヴェルディ ラ・トラヴィアータ
第1幕+第2幕第1場
休憩
第2幕第2場+第3幕
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演出 ローラン・ペリ
合唱指揮 ロベルト・ガッビアーニ
指揮 ジャナンドレア・ノセダ
トリノ王立歌劇場
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ヴィオレッタ ナタリー・デセイ
アルフレード マシュー・ボレンザーニ
ジェルモン ローラン・ナウリ
他
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劇場にはありがちなこととはいえ、ピアニシモが始まったとたんに咳き込んで止まらなくなってしまった御仁には退場いただきたかった。音楽はすすむしかないのだから。
最後はそんな些末なことは忘れさせてくれるいつものトラヴィアータには負けるしかない。
千秋楽のせいか、終演後のデセイのはしゃぎっぷりはかなりのテンションで、さっき悲劇の幕を閉じたタイトルロールとは思えない。なにはともあれ一件落着。
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この日の公演は休憩が一回のみ。それも第2幕を第1場と第2場に分けた。まるで2枚組CDそのもの。
全体の長さはそうでもないが、第2幕第1場が長大であるため、それなら休憩を一回にしてしまえ、というのもわからなくない。
でも、これはローラン・ペリの演出のせいだったのだ。第2幕第2場と第3幕をアタッカで結ぶ。派手に終わる第2幕第2場、その舞台の中央にひとり立ったままのヴィオレッタが、まわりの合唱団らによる衣装転換をおこない、そのとき舞台も白装束、その一つのベッドに倒れこむところから第3幕が始まる。幕はあがったまま。
なるほど、このような演出もあるものかと思った。つまり演出は第2幕第1場と第2場の間に休憩をとることを求めている。
それにしてもだ、ここのアタッカの部分で拍手をしなかった今日の日本の聴衆は偉大というしかない。
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椿姫はヴィオレッタの一人舞台みたいなもんだ。これだけ綿々と続く歌歌。インターミッションまで歌いっぱなし。
あとはアルフレッドとジェルモン、あわせて3人いればこの舞台は成り立つ。
ナタリー・デセイは有名すぎて今日の聴衆のうち何分の一かはお目当てで来ているに違いない。プログラムにはコロラトゥーラ・ソプラノとあるけれど、個人的にはメゾ音域の人が練習を重ねた成果のように聴こえなくもない。ジョン・サザーランドのような吹き上げる超高音のトリッキーな技はない。というかもっと幅があり、音域をぼかしても幅で圧倒、そんな風に聴こえる。表情は豊かでタイトルロールの心の変化を見事にあらわしている。ただ、アルフレッド役のマシュー・ボレンザーニもそうなのだが、劇的な刺激的な表現がもう少し欲しい。メリハリをもっと効かせてもいいと思う。
マシューは、柔らかくこれまた幅がある。柔らすぎで角が甘い。劇的さがもっとほしい。デセイと同じでこれまた贅沢な要求なのかもしれない。
第2幕第1場でヴィオレッタとアルフレッドが劇的に合う場面があるが、あすこはひとつの頂点をつくってほしいのだ。
ジェルモン役のローラン・ナウリはツボを心得ている。聴かせどころは数か所しかなく、そこをじっくりと聴かせてくれる。バリトンの魅力。デセイの次に拍手喝采でした。
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オーケストラは先週聴いた特別演奏会とは別の側面をみた。ここの演奏家は個別にはそれほど上手いわけではない。クラリネットの伴奏はかなりきわどかったが、おしなべて他の楽器もそうだろうと思う。また、結果として、トランペットどこ、ホルンどこ、トロンボーンどこ、といった感じで目立たない。これはこれでいい。
音楽の歌、みんな一緒にプレイしている。これがなかなか日本人にはできない技。
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ノセダの類を見ない明確な棒。といってもオペラでは棒をもたない。基本的に合唱などがはいるような演奏会では棒を持たないのだろう。気持ちはなんとなくわかる。長身で手が長く非常に雄弁。音楽そのもののように腕に音がからみつく。
最初はインテンポで押し通していたのだが、特に休憩後、場が進むにつれ、音楽は少しずつテンポを落としかえって劇的なものが表現できている。面白いものだ。
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この日のオペラは十分に楽しむことが出来ました。千秋楽にプログラムが売り切れになるという大盛況。ちなみにお河童さんは最後の1部をゲットしたようです。
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