風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

「よみがえる東京」

2016-09-12 | 読書


花巻に今も残る「菊池捍(きくちまもる)邸」という洋館がある。
クラーク博士の教え子で北海道帝大総長を務めた佐藤昌介氏の義弟で
明治製糖の取締役を務めた農林技師だった菊池捍氏が
大正15年に建てた和洋折衷のおしゃれな自宅で、
宮沢賢治の童話「黒ぶだう」のモデルとも
あるいはそこに住んでいた一家が「銀河鉄道の夜」の
カンパネルラのモデルとも言われている。
その「菊池捍」氏の名前をこの雑誌の中で見つけた。

特集前半のモノクロ写真を撮影したのは
菊池俊吉というカメラマンとのこと。
その人が菊池捍氏の息子なのだそうだ。
花巻で生まれ育ち、写真家を目指して東京の写真学校へ。
卒業後は大陸に派遣されて戦地の報道写真などを撮り、
戦後は東京の焼け跡の写真をたくさん残していたとのこと。
先日、新宿駅の中を歩いている時に偶然目に止まり
買った雑誌「東京人」のバックナンバーにその名を見つけ
とても驚いた。
復興に向かおうとする焼けただれた都会の雑踏の中に
郷土の先人がカメラを片手に歩き回っていたのだ。


この特集、正しくは「よみがえる”あの時の”東京」なんだろうね。
終戦直後の東京各所を撮影した貴重な写真がたくさん。
1枚1枚から日々を必死に生きる人々の姿が垣間見える。
終戦後、大学に入り直した亡き親父も
学校がある名古屋に行く途中、こんな風景を目にしたのかな。
鳥類学者だったという進駐軍兵士のカラー写真も
とてもリアルで驚くし
当時を知る人たちの言葉もまた興味深い。

これだから書店での偶然の本との出会いはやめられない。
コメント
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