「なりたかった大人になれなかった」人たちの物語
というのがこの映画のキャッチフレーズだけど、
なりたかった大人・・・なんて無かった。
いつもその時その時
懸命に考え、振り回されながら、這いずりながら
周囲と折り合いをつけ、妥協もしながら
なんとか生きてきた55年。
いくつであっても自分は自分でしか無かった。
この映画の主人公である阿部寛さんなんかは
だからまだ自分の思うように生きて来て
ある意味うらやましく思ったりもするんだ。
自分で自分が情けないんだろうとは思うけど
でもまだ何者かになろうとしている。
それは誰でもできることじゃない。
彼もまた必死に生きている市井の人間のひとり。
その姿に勇気をもらうよ。
ラストシーンの背中の切なさも
自分のことのように感じたし。
阿部さんの役のことを「主人公」と書いたけど
この映画のタイトルの意味を考えると
本当の主人公は樹木希林さんの母親なんだろうね。
登場人物一人一人に味があり
希林さんの存在感が特別目立つわけじゃないけど。
エンディングテーマのハナレグミの歌がまた沁みた。
人は誰しも一人で生きているんだなぁ・・・
是枝監督、良いわぁ。