風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

「ファミリーツリー」

2013-11-29 | 読書
ざっと読んだ感じは少年少女向け青春小説に見える。
ストーリーも少女漫画のようでもある。
・・・が、根底に流れるテーマは
「命のバトン」あるいは「生のリレーション」。
血は連綿と受け継がれ、ツリーを成し、
大地や自然は何代もに渡って共有される。
その雄大さ、有り難さが特に本作後半部分からにじみ出てくる。

新しい命が生まれ、子を成し、
その子がまた子を成していくうちに最初の命は消えてゆく。
そしてまた新たな命が生まれていく。
老いた命から新しい命へのバトンは次々に受け継がれていく。
大地や自然はそれら命のリレーを見守り、包み込み、育む。
そんな「命の営み」を改めて感じながら一気に読了。
普段の生活の中でいつか忘れてしまっている
自然への畏怖や生かされている有り難さ、
そして私たちの命について気づき、認識してもらうために
高校生や20歳前後の若い人たちにも読んで欲しい。
いかに生きるべきかを考えながら。

ワタシ自身は今後
菊さんのように土に足を踏みしめて生きたいと思う。
100%そんな風に生きられなくても
意識するとしないのとでは違う生き方になると思うのだ。
少し、岩手に帰りたくなってきた。

ところで、ワタシが作者または編集者ならば
主人公たちの幼い頃の思い出が語られる前半部分を
もう少しまとめて縮め、後半のボリュームを増したい。
あるいは後半をじっくりと書き込み、
もう少し長い物語にしても良い。
いずれにせよ、途中のストーリーの走った感が惜しい。
主人公が20歳になったあたりから最後まで
もう少しじっくりじっくり描いて欲しかった。

「ファミリーツリー」小川糸:著 ポプラ文庫
コメント
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