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量的研究のための調査や実験デザインを平易に解説する

2017-05-23 21:07:22 | 読書ノート
伊藤公一朗『データ分析の力:因果関係に迫る思考法』光文社新書, 光文社, 2017.

  計量経済学入門のさらに前段階での入門書。中室牧子の『「原因と結果」の経済学』と同様に、統計分析手法そのものではなく、実験や調査の設計を説く内容である。本書のほうが実際の研究成果に言及することが多く、分析事例も楽しめる。

  ランダム化比較試験がお薦めだとまず力説されるが、実施にはコストがかかることが多いという。それができないならば「自然実験」となる状況を見つけよ、ということで、RDデザイン、集積分析、パネルデータ分析が説明される。それらの説明のために、著者自身が行った日本およびカリフォルニアの電気料金価格の調査、オバマ前大統領選挙陣営のウェブサイトでの実験、医療費の自己負担率が患者数に与える影響の調査、自動車への補助金政策の効果などなどが紹介される。

  ただし、あまり統計になれていない人ならば、事例のいくつかを見て「価格が上がれば需要は減る。当たり前だろ」と言いたくなるだろう。次の点は本書であまり強調されていないが、メリットはその点の実証の意義ではなく、価格がどの程度変化すればどの程度需要が変化するのか、その程度がわかることである。文献紹介もあり、結果の解釈への注意も親切で、「使ってみよう」という気にさせる良書である。
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