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新刊書店の現状についての本と昔の古本屋経営についての本二冊

2024-03-20 20:41:52 | 読書ノート
志多三郎『街の古本屋入門:売るとき、買うとき、開業するときの必読書』KG情報出版, 1997.

  経営者目線からの古本屋論。初版が1982年(石田書店)で文庫版が1986年(光文社)。僕が読んだのは1997年の復刊本である。ブックオフによって目立たなくなった個人経営の古本屋の実情を詳細に伝える内容である。棚貸ししているだけの新刊書店とは違って、古本屋の棚に並んでいるのは店主が買い取った個人の所有物である。「だから客とはいえ気軽に本にべたべた触るな」ということらしい。この箇所を読みながら、もう30年も前となる学生時代、横浜とある古本屋で「お前みたいな若造が来るところではない」と怒鳴られ、追い出された経験を思い出した。客は持ち込む前に店の傾向を吟味せよ、ともアドバイスしてくる。このような非常に面倒くさい昔ながらの古本屋が嫌われて、持ち込み客のハードルを低めた新古書店が大歓迎されたというのは、時代の流れとしてとても腑に落ちる。まあでも、具体的な数字もあり、昔ながらの古本屋経営者の論理について理解できる貴重な資料だろう。

本屋図鑑編集部編『本屋会議』夏葉社, 2014.

  書店論と書店のルポ。昨年あたりから老舗の小売書店閉店の報道が相次いでいるが、本書は神戸元町にあった海文堂書店の閉店(2013年)に本屋図鑑編集部がショックを受けて、翌年に企画されたものである。明確にそううたわれているわけではないが、有隣堂や留萌ブックセンターのルポや、地域に献身的な書店主がたくさん出てくることから、地元と密着するのが生残りの道であることを伝えている。また、昭和の書店経営についての議論もあって、全国の書店のどこでも金太郎飴のように同じものが揃えられていることに意義があったとしつつ、今と同じように過去も書店経営は厳しかったと論じている。一方でまた、インターネットの普及で雑誌が売れなくなったこと、かつまた大型書店やネット書店が登場したこと、これらが街の書店を色あせたものにみせる時代になったことが指摘されている。小売書店がいろいろ試行錯誤しているのはわかった。が、もう十年も前の話なのか...。
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