29Lib 分館

図書館・情報学関連の雑記、読書ノート、音楽ノート、日常生活の愚痴など。

腸内細菌は脳にも影響しているかもしれない、とのこと

2021-05-28 07:00:00 | 読書ノート
アランナ・コリン『あなたの体は9割が細菌:微生物の生態系が崩れはじめた』(河出文庫), 矢野真千子訳, 河出書房新社, 2020.

  腸内細菌が、身体の健康や肥満度に、はては精神の安定にまで影響していると主張するポピュラーサイエンス本である。著者は英国のサイエンスライターで、大学院時代にコウモリの研究のためにマレーシアを訪れたところ、ダニに噛まれて重症に陥ったことがあるらしい。が、問題はその後である。大量の抗生物質によって回復したのだが、その後何年もの間、以前の体調に戻らなくなったという。これまで体内にいた細菌を死滅させてしまったからだ。原書は10% Human: how your body's microbes hold the key to health and happiness (HarperCollins, 2016)で、邦訳も2016年に河出書房から発行されている。僕が読んだのは昨年出た文庫本である。

  肥満に腸内細菌が影響しているのではないかという話は、ティム・スペクターの『ダイエットの科学』にもあった。またアレルギーと腸内細菌の関係を整理して衛生仮説を否定する(修正する?)話はアダム・ハートの『目的に合わない進化』にも出てくる。これら以外に目を引くトピックは、乳幼児期に過剰に抗生物質を投与されると、体内にいる細菌のバランスが崩れ、遅発性の自閉症が起こるとする議論である。うつ病も同様に細菌に影響されるらしい。また、猫からトキソプラズマ菌をうつされると反社会的な性格になるとも。腸内細菌はホルモンバランスを通じて心もコントロールしているわけだ。ただし、それぞれ十分に科学的に証明されているわけではないとのこと。

  というわけで、体内の細菌は重要だ。しかし、いかなる細菌が心身にどのような影響を与えているのかの研究はまだ端緒についたばかりで、よくわかっていない。だからとりあえず今いる細菌の多様性を維持しましょう。具体的には、盲腸は細菌の避難所だから切ってはダメ、抗生物質の使用は限定的にしよう、食生活では食物繊維を多く摂取しましょう、出産育児ではできるだけ母親から子ども細菌がうつる(!!)ような方法をとりましょう(母乳育児推奨・帝王切開は好ましくない)、などのメッセージとなっている。

  以上。ある種の感染症には他人の糞便を移植することが効くという話もあって、食事の前後に読むことはお勧めできない。が、タイミングを考えて読めば啓発されるところが多いだろう。でも、因果関係については未確定なところが多いので、あくまでも可能性の話であることにも注意が必要である。
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相対的地位をめぐる「無意味で」激しい競争を抑えましょう、と

2021-05-24 07:00:00 | 読書ノート
ロバート・H.フランク『幸せとお金の経済学』金森重樹監訳, フォレスト出版, 2017.

  経済学。著者のロバート・フランクはコーネル大の先生で、『日常の疑問を経済学で考える』(日経新聞, 2008.)などの緩い入門書の邦訳がある。本書もそれと同じく、論理とデータでゴリゴリ押すスタイルではなく、エッセイ的に論述している。原書はFalling behind : how rising inequality harms the middle class (University of California Press, 2007.)。ところで監訳者の金森重樹って誰? 僕は知らないけれども、その名に反応する層があるということなんだろう。訳者名(手嶋由美子・武田玲子)は表紙や奥付にもクレジットされていない。

  話を単純化すれば「隣の芝生は青く見える」という話である。消費の対象は地位財と非地位財に分けられる。地位財とは人間関係や社会関係における相対的地位を示すもので、家の広さとか子どもが通う学校とかがそうだ。隣の人や知人が、より大きい額で消費を行ってみせびらかすと、自分が行った消費はかすんでしまい、劣位にあるかのように感じさせられる。一方の非地位財には、余暇や労働時間の短さなどが挙げられている。非地位財は、他人との比較ではなく個人的満足の領域に属する重要な財であり、幸福度を決定する。しかし現代では、地位財をめぐる競争が激しく、それを獲得するために労働時間が伸び、一方で非地位財の消費機会が失われる傾向にある。個人で競争から降りることは難しいので、社会全体で地位財消費を抑える仕組みが必要だ。というわけで累進消費税(日本でいう消費税=売上税ではなく、所得と貯金額の差額からわかる消費額に課せられる税)が推奨される。

  説得力はあるが、目新しさはない。特に、なぜそんなに相対的地位が重要なのかという論点への突っ込みが無い点で、ヴェブレン以来の消費社会論と変わらない。(この点の説明があるジェフリー・ミラー『消費資本主義!』のほうが優れている)。なので、消費を抑えたところで、金銭以外の領域で激しい競争が起こるのではないかという気がする。いや、著者は競争が社会的に有益ならば敗者が出てもいいという立場なのかもしれないな。
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デジタル環境下における言語習得についての研究動向のレビュー

2021-05-20 07:00:00 | 読書ノート
バトラー後藤裕子『デジタルで変わる子どもたち:学習・言語能力の現在と未来』(ちくま新書), 筑摩書房, 2021.

  教育学。テクノロジーと教育の関係を扱った諸研究をレビューするという内容である。動画視聴、電子書籍、SNS、テレビゲーム、AI、コロナ禍の教育について取りあげられている。著者はペンシルバニア大学所属の言語学者で、2015年に『英語学習は早いほど良いのか』という新書も出している。

  最初の章で、デジタルテクノロジーの普及が若者の生活に影響を与えつつあるという指摘と、情報の信頼性を測る読解力の欠如やそうした能力の格差の問題が今後重要となるという指摘の二つがなされる。第2章は、YouTubeやテレビの視聴である。言語習得の文脈では、乳幼児期においては「大人の応答」が言葉を身につけるうえで重要で、子どもを一人で動画視聴させておいても学習効果は低く、害さえあるという。ただし「年齢による」という条件もあって、3歳以上ならば番組の内容次第では学習効果があるとのこと。第3章はデジタル教科書ほか、辞典のポップアップやゲームなどがついた電子教材の効果についてである。そうした教材に付されたポップアップなどは、読者のレベルによっては本文への没入を妨げることもあるらしく、まずは気を散らさずに長文読解ができる能力を身につけておく必要があるとのこと。

  第4章はSNSについてで、前章と同じく「はじめにちゃんとした言語能力ありき」という方向性でまとめられている。第5章はゲームを使った学習である。ゲーム化されていればなんでもいいというわけではなく、学習効果をもたらすゲームデザインがあるとのこと。デザインの詳細について突っ込んだ議論も展開されているが、効果については検証待ちのようだ。第6章はAIについてで、将来の教育へ導入の期待は高いけれども、今後の進展次第であるという。最後の第7章はオンライン教育ほか今後の展望である。ベースとなる言語能力の上に文脈毎の言語使用があるという認識のもと、基本的な読解力と、デジタル環境という文脈に対応した言語能力(機器操作も含む)、それぞれの育成を両輪で行うことが勧められる。

  以上。教育者側があたらしいテクノロジーへの対応をしつつ、子どもたちにしっかりとした言語能力を身につけてもらうというスタンスである。そこに異論はないのだが、ならば問題になるのは学習時間の配分をめぐるトレードオフということになるのではないだろうか。テクノロジーの使い方を学習する時間は新しいものだから、これまでにあった「ベースとなる能力を身につける学習時間」を削ってそれを行うということになる。すでに日本の国語教育や情報教育まわりの議論はそういう段階にあると思う。とはいえ、これは著者ではなく我々が考えるべきことだろう。本書は、最新情報をつかむことのできる手堅いレビューとして役に立つ。
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最近の米国における日本産マンガの普及について雑感・その2

2021-05-16 16:13:17 | 図書館・情報学
  前回の続き。ニューヨーク公共図書館ブログに掲載されたマンガ紹介記事のリンク集を作ってみた。30点ある記事あるうちの2つを除いたすべてをAmanda Paganという著者が書いている。もちろん日本の公共図書館でもマンガをある程度は所蔵している。とはいえ、いまだ公式HPで堂々とお勧めするというものとはみなされていない。日本では少年週刊誌連載中のシリーズを所蔵しない(とはいえ未完結作品の所蔵を見ないというわけでもない)だろうけれども、あちらはお構いなしの様子。『監獄学園』を勧める日本の公共図書館というのも想像できないが、あちらはエロシーンがあろうがBLだろうがレーティング表示をしっかりしておけば所蔵OKという考えみたいだ(とはいえ米国でも積極的には所蔵されないだろうが)。

  こういうのを見ると日本の図書館は保守的だという認識に陥りがちだ。が、しかし、日本の公共図書館がマンガ提供に積極的でなかったというおかげで、日本でマンガが商業的に栄えたという可能性もある(もちろん無関係であるという可能性もあって、因果関係はよくわからない)。マンガをどこかでアーカイブしておく必要性については同意するものの、その話と広く無料でアクセスできるようにするという話は別である。マンガの図書館所蔵をめぐる議論は昔からあるものの、日本の出版における主力商品を公共図書館が需要に応じてただで提供してしまうことにたいする躊躇は強い。それが、現時点でマンガ所蔵に積極的になれない大きな理由となっているだろう。しかし、米国の公共図書館は出版社のことは気にしないんだね。

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by Amanda Pagan

April Fools Comedy Special! Our Favorite Funny Manga! (March 30 2018)
  https://www.nypl.org/blog/2018/03/29/top-7-comedy-manga-anime-april-fools

A Beginner's Guide to Manga (December 27 2018)
  https://www.nypl.org/blog/2018/12/27/beginners-guide-manga

A Beginner's Guide to Science Fiction (January 2 2019)
  https://www.nypl.org/blog/2019/01/02/beginners-guide-science-fiction

Manga Monday Picks: Shonen Jump Classics (January 10 2019)
  https://www.nypl.org/blog/2019/01/10/manga-monday-picks-shonen-jump-classics

Manga for Middle Schoolers: Guide and Recommendations (February 4 2019)
  https://www.nypl.org/blog/2019/02/04/manga-recommendations-middle-schoolers

Everybody Say Love: Romance Manga (February 12 2019)
  https://www.nypl.org/blog/2019/02/12/manga-love-stories-best

Manga Monday Picks: Shojo Beat Favorites (February 19 2019)
  https://www.nypl.org/blog/2019/02/19/manga-monday-recommendations-shojo-beat

A Beginner's Guide to Mecha (April 4 2019)
  https://www.nypl.org/blog/2019/04/04/beginners-guide-mecha-manga-anime

A Beginner's Guide to LGBTQ+ Manga (June 17 2019)
  https://www.nypl.org/blog/2019/06/17/beginners-guide-lgbtq-manga

A Beginner's Guide to Isekai (July 15 2019)
  https://www.nypl.org/blog/2019/07/15/beginners-guide-isekai-manga

Get Your Head in the Game! Sports and Game-Based Manga Recommendations (July 24 2019)
  https://www.nypl.org/blog/2019/07/24/game-based-manga-recommendations

Nom-Nom November: Food and Cooking Manga (November 25 2019)
  https://www.nypl.org/blog/2019/11/25/food-related-manga

End of the World as We Know It: Apocalyptic, Post-Apocalyptic, and Dystopian Worlds (December 19 2019)
  https://www.nypl.org/blog/2019/12/19/apocalyptic-post-apocalyptic-dystopian-worlds
  
A Look Back: The Most Loved Books of 2019 by Mid-Manhattan Librarians (January 14 2020)
  https://www.nypl.org/blog/2020/01/07/mid-manhattan-librarian-book-recs

A Beginner's Guide to Manga 2: Manga Fewer than Ten Volumes (January 23 2020)
  https://www.nypl.org/blog/2020/01/23/beginners-guide-manga-2-manga-less-ten-volumes

Award-Winning Manga 1: General Category (September 8 2020)
  https://www.nypl.org/blog/2020/09/08/award-winning-manga-general-category

Award-Winning Manga 2: Shojo Category (September 18 2020)
  https://www.nypl.org/blog/2020/09/18/award-winning-shojo-manga

Award-Winning Manga 3: Shonen Category (October 22 2020)
  https://www.nypl.org/blog/2020/10/22/award-winning-manga-shonen-category

A Beginner's Guide to Manga Classics (Novemver 3 2020)
  https://www.nypl.org/blog/2020/11/03/beginners-guide-manga-classics

Blast from the Past: Historical Fiction Manga (Novemver 13 2020)
  https://www.nypl.org/blog/2020/11/13/blast-past-historical-fiction-manga

Manga for Days: Manga 25 Volumes or Fewer for Teens (March 12 2021)
  https://www.nypl.org/blog/2021/03/12/manga-days-manga-25-volumes-or-fewer-teens

Art and War: World War II Graphic Novels (March 23 2021)
  https://www.nypl.org/blog/2021/03/23/art-war-wwii-graphic-novels

Manga for Days: Manga 25 Volumes or Fewer for Adults (March 25 2021)
  https://www.nypl.org/blog/2021/03/25/manga-days-manga-25-volumes-or-fewer-adults

A Feast for Fans: Manga of Epic Proportions (April 13 2021)
  https://www.nypl.org/blog/2021/04/13/feast-fans-manga-epic-proportions

Jump on the Bandwagon: New and Ongoing Manga To Get Excited About (April 30 2021)
  https://www.nypl.org/blog/2021/04/30/ongoing-manga-get-excited-about

Beginner's Guide to Manga 3: Genres and Subgenres (May 4 2021)
  https://www.nypl.org/blog/2021/05/04/beginners-guide-manga-3-genres-and-subgenres

Battle Manga! All-Out Fight to the Finish! (May 7 2021)
  https://www.nypl.org/blog/2021/05/07/battle-manga-all-out-fight-finish

Beauties and Beasts: Monster Manga (May 12 2021)
  https://www.nypl.org/blog/2021/05/12/beauties-and-beasts-monster-manga

by Joe Pascullo
Dystopian Manga You Need To Read (February 6 2019)
  https://www.nypl.org/blog/2019/02/06/best-dystopian-manga

by Keiko Sugimoto
On the Bookshelf: Classic Manga Series to Revisit (April 1 2021)
  https://www.nypl.org/blog/2021/04/01/classic-manga-series
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最近の米国における日本産マンガの普及について雑感

2021-05-12 12:21:32 | チラシの裏
  以下はネットで行き当たりばったりで見た限りのまとめ。日本産マンガが海外で人気らしいという話はここ数年耳にしたことがあると思う。ある報道1)によれば、昨年の大人向けグラフィックノベルの米国での売上は30%増加したが、そのうち8割は日本産マンガの翻訳だったという。別の報道2)では、2021年4月期の大人向けグラフィックノベルの売り上げチャートのうち、全20位中20作品が日本産である。『僕のヒーローアカデミア』『チェンソーマン』『呪術廻戦』『鬼滅の刃』『進撃の巨人』『Spy x Family』などの名がみえる。グラフィックノベルも一般書籍もごちゃまぜにして集計するBarnes & Nobleのベストセラーチャートでも、上記タイトルの単行本かなりの数ランクインしている3)(5月12日12時時点で100位中24点が日本産マンガだ)。

  北米におけるマンガの普及は2010年代後半からのようで、ニューヨーク公共図書館のブログでも2018年末から所蔵するマンガをガイドする記事がいくつかある4)。こうしたトレンドが、コロナ禍で強制された在宅生活によって余暇時間が増えた中、マンガに触れる人が増えてその魅力がさらに広く認識されるようになったみたいだ。しかし、なぜこうまで人気なのかは、日本人からみてよくわからない。週刊少年ジャンプ系のマンガは主人公が日本人であり、また日本を舞台にしたものも多い。北米の少年たちの感情移入の妨げになったりしないのだろうか。

  いくつかの海外掲示板を読んだ限りでは、この状況を苦々しく感じているあちらの人が少々いるようだ。「日本からの侵略によって米国の文化が破壊されている」と。団塊ジュニア世代以上の日本人ならば、こうしたコメントを見ると1990年前後の日米貿易摩擦の頃の雰囲気を思いだす。しかし、そもそも日本の出版関係者が海外進出に熱心だったという印象はない。国外のオタクが無許諾で翻訳してスキャン画像をネットにあげてしまうから、出版関係者は仕方なく対処してきた、というのが日本にいて見聞きした限りの印象である。そこそこの数存在するらしい国外オタクへの対応のために、不得手な国際的なビジネスをやらざるを得なかったという。日本人自身が、日本のマンガが海外(特に自国の文化に対するプライドの高いアングロサクソン系の国で)でベストセラーチャートを席巻するなどと期待してはいなかっただろう。

  幸いにも、マンガへの反発は貿易摩擦の頃ほど強いものではないようだ。マンガの進出を歓迎する声も多くある。あちらの掲示板では原因の分析もなされていて、本来ならばマンガを迎え撃つ立場のアメコミ側の問題が指摘されている。キャラクターの著作権を出版社側が持つという違いの指摘と、ポリコレに屈した説教くさいスピンオフが増えたために魅力を失ったのだという批判をよく見かける(で、国外のオタクたちは、アメコミを破壊したSocial Justice Warriorがいずれ日本の出版社に脅しをかけるだろうと危惧している)。簡単に言うと、アメリカのほうは企業やら世間体やらの圧力が強くてコミック作者の意向が軽視される一方、日本のほうがマンガ家の作家性が高い。よくある日米文化比較の典型的言説とはまったく逆の傾向がマンガ出版の領域であるみたいだ。

  とはいえ、作家のコントロールが作品に及ぶということが作品の質を保証するというものでもない。米国のコミック出版事情を知ったとしてもなぜマンガがメジャーになっているのかはよくわからないままだ。もしかしたら、うまくプロモーションができているのかもしれない。もし、そうだったら向こうでどう宣伝活動をしているのか誰か教えてほしい。プロモーションって、日本人が下手なことの代表だから。しかし、いやいや戦場に引きずり出されて無双しているマンガの海外進出事情を思うと、ガンダムのアムロ・レイが思い起こされてしまう。

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1) Chris Arrant (Jan, 2020) "Adult graphic novel sales figures reveal nearly 30% sales jump in 2020" / Gamesrader
  https://www.gamesradar.com/adult-graphic-novel-sales-figures-reveal-nearly-30-sales-jump-and-the-most-popular-comics-of-2020/

2) Brigid Alverson (May 7, 2021) "April 2021 NPD Bookscan - Top 20 Adult Graphic Nnovels" / ICV2
  https://icv2.com/articles/markets/view/48284/april-2021-npd-bookscan-top-20-adult-graphic-novels

3) Banes & Noble Bestsellars Top 100
  https://www.barnesandnoble.com/b/books/_/N-1fZ29Z8q8

4) Amanda Pagan (Dec 27, 2018) "A Beginner's Guide to Manga" / New York Public Library
  https://www.nypl.org/blog/2018/12/27/beginners-guide-manga
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進化社会学ではなくなぜ遺伝子社会学なのか

2021-05-07 22:41:07 | 読書ノート
桜井芳生, 赤川学, 尾上正人編著『遺伝子社会学の試み:社会学的生物学嫌いを超えて』日本評論社, 2021.

  社会学領域に進化生物学を導入しようとする試み。論文集かつ専門書である。赤川学は著名な社会学者であるが、他の二人のうち桜井は鹿児島大学の教授、尾上は奈良大学の教授とのこと。編著者三人のほか、単著論文を二人が寄稿している(これらとは別に編著者が関わった共著論文もある)。率直に言って玉石混交の内容である。

  第一部はゲノム解析を行って、特定の行動と遺伝子の相関を見るという研究の結果報告である。ある遺伝子の変異のあるなしによって、twitterに熱心だったり、生きにくさを感じたりする傾向が見て取れるという。その発見は興味深いものであるが、論文そのものは実験結果の報告に留まり、かなりあっさりした記述だ。先行する議論がどうだったかとか、結果の含意だとかを加えてもう少し膨らませてほしいと感じる。

  第二部は理論編である。進化社会学についての国外の動向を伝える8章、『これが答えだ! 少子化問題』で言及された高田保馬について論じる6章はいい。尾上による、社会構築主義と二重継承理論(参考)の距離を探った論考(7章)と、女性の地位と居住地域の緯度(つまり気候がもたらす狩猟vs採取のバランス)に関連があるとする論考(11章)も面白い。ただし、遺伝病患者の家族へのインタビュー(9章)は、書籍のテーマとズレている気がする(娘を持つ父親としては泣ける話だけれども)。
  
  問題は、本書の筆頭編著者で、かつ複数章で登場する桜井の書きぶりがざっくばらんすぎることである。著者の興奮は伝わるのだけれども、研究の文脈がわからず、発見の意義について説明不足を感じることがしばしばだ。もうちょいその面白さを丁寧に伝えられないものだろうか。せっかく日本でこの領域に先鞭をつけたのだからもったいない。これから冷たい反応や無視と戦うことになるはずなのだから、もっと用意周到であるべきだろう。
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現代社会と進化における適応のズレをめぐる考察

2021-05-03 13:28:07 | 読書ノート
アダム・ハート『目的に合わない進化:進化と心身のミスマッチはなぜ起きる』柴田譲治訳, 原書房, 2021.

  人間の身体や認知傾向は進化によって環境に適応したはずであるが、人間が環境を変えてしまったために進化のミスマッチが起きていると主張する一般向けの書籍である。最初の章で示されるこの主張だけだと『人体600万年史』に近い印象だが、本書は、適応の歴史を描くことに関心はなく、むしろトピック毎に現代社会とのミスマッチと思われる現象を検証することに熱心だ。著者は英国の生物学者で、原書はUnfit for purpose : when human evolution collides with the modern world (Bloomsbury, 2020) である。

  取り上げられているトピックは、肥満、乳糖不耐性、腸内細菌、ストレス反応、ネットワーク、暴力性、依存症、フェイクニュースである。説明にはパターンがある。まず、遺伝的傾向と環境とのミスマッチを確認し、次にそこそこ知られた有力な仮説が紹介され、さらにその説に対する反論が示される。最後は「今のところよくわからないのだけれども、おそらくこの範囲で落ち着くだろう」という議論で終わる。

  上における「有力な仮説」とは、肥満の章では「飢餓のときに適応した遺伝子がある」という説で、腸内細菌の章では衛生仮説、フェイクニュースの章では「オキシトシンによって他人を信用しやすくなる」という説、となる。いずれも後続の研究によって反証されるものの、かといって最終的に全否定されたというわけでもないところに落ち着いている。ネットワークの章におけるダンバー数(参考)についてはかなり肯定的だ。

  トピック毎の結論が不明瞭であることに対して、読者として不満を覚えないわけではない。けれども、新しい知見が得られることも確かだ。例えば、依存症の章では、植物としての大麻もまた現代に至って変化しており、幻覚をもたらす化学物質の含有量が増えていることが告げられる。先進国の多くで大麻が合法化されたため、作物としてより洗練された商品が開発されるようになったからだ。より強い大麻の開発は、他の麻薬より安全だという合法化当時の認識を脅かすという。このように、結論に期待するよりも、著者の脱線を楽しむべき本だろう。
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