ポール・モーランド『人口で語る世界史』(文春文庫)渡会圭子訳, 文藝春秋社, 2023.
英国の人口学者による世界人口史。ただし産業革命以降の人口転換現象に焦点を充てており、それ以前の変化の少ない(と考えられる)時代は扱っていない。原書はThe human tide: how population shaped the modern world (John Murray, 2019)で、邦訳は2019年に文藝春秋社から発行されている。
近代化以降の人口の変化にはパターンがあり、まずは栄養状態や衛生状態の改善によって乳児死亡数の減少と寿命の延長がやってきて、一時的に国内の人口が激増する時代が来るという。その後は、女子教育の普及によって特殊合計出生率が低下し(先進国ならば2人以下に、そうでない国でも3人以下になる)、高齢者が多くを占める社会となる。こうしたパターンは英国が先陣を切り、ヨーロッパ、北米、東アジアが追従した。東南アジア、ラテンアメリカ、中近東もこのパターンを踏襲しつつあり、南アジアやサハラ以南のアフリカも最終的には同様のことになるだろうと予言している。基本的なところは共通しているが、宗教や文化による微妙な違いもあるというので、優生学や移民ほか、イスラエル保守派の多産傾向やロシア人男性の短い寿命などが取り上げられている。また、若年層が人口の多くを占める国は政情が不安定になりやすいとのこと。日本についての記述も多い。
以上。中国や韓国の少子化の話は知っていた一方、なんとなく「イスラム教の国は今後も人口が増える」というイメージを持っていた。だが、インドネシアやイランもまた少子化に向かっているとのこと。宗教がどうあろうと、女子教育が進むと子どもの数は減るというのが著者の分析である。「少子高齢化で福祉国家はどう維持するのか」という疑問に対しては「高齢化がもっとも進んでいる日本の動向が注目される」(超要約)だってさ。
英国の人口学者による世界人口史。ただし産業革命以降の人口転換現象に焦点を充てており、それ以前の変化の少ない(と考えられる)時代は扱っていない。原書はThe human tide: how population shaped the modern world (John Murray, 2019)で、邦訳は2019年に文藝春秋社から発行されている。
近代化以降の人口の変化にはパターンがあり、まずは栄養状態や衛生状態の改善によって乳児死亡数の減少と寿命の延長がやってきて、一時的に国内の人口が激増する時代が来るという。その後は、女子教育の普及によって特殊合計出生率が低下し(先進国ならば2人以下に、そうでない国でも3人以下になる)、高齢者が多くを占める社会となる。こうしたパターンは英国が先陣を切り、ヨーロッパ、北米、東アジアが追従した。東南アジア、ラテンアメリカ、中近東もこのパターンを踏襲しつつあり、南アジアやサハラ以南のアフリカも最終的には同様のことになるだろうと予言している。基本的なところは共通しているが、宗教や文化による微妙な違いもあるというので、優生学や移民ほか、イスラエル保守派の多産傾向やロシア人男性の短い寿命などが取り上げられている。また、若年層が人口の多くを占める国は政情が不安定になりやすいとのこと。日本についての記述も多い。
以上。中国や韓国の少子化の話は知っていた一方、なんとなく「イスラム教の国は今後も人口が増える」というイメージを持っていた。だが、インドネシアやイランもまた少子化に向かっているとのこと。宗教がどうあろうと、女子教育が進むと子どもの数は減るというのが著者の分析である。「少子高齢化で福祉国家はどう維持するのか」という疑問に対しては「高齢化がもっとも進んでいる日本の動向が注目される」(超要約)だってさ。