マイク・サヴィジ『7つの階級:英国階級調査報告』舩山むつみ訳, 東洋経済新報, 2019.
英国民の階級分析。昔ながらの中流・労働者階級という分け方──月給か週給かで分割されたとのこと──ではなく、職業だけでなく、学歴、所得、資産、文化資本、社会関係資本、居住地といった要素も考慮しているのが新しいところである。原書はSocial Class in the 21st Century (Pelican, 2015)で、2011年~13年にかけてBBCの協力のもとに行われた「英国階級調査」の分析結果の一般向けの報告書である。回答者は32万5000人にのぼったとのこと。
統計分析の結果、英国民はエリート、確立した中流階級、技術系中流階級、新富裕労働者、伝統的労働者階級、新興サービス労働者、プレカリアートの七つに分けることができたという。社会関係資本はパットナムではなくブルデュー寄りの解釈が与えられており、エリート層が再生産のために使う「コネ」としてネガティブに捉えられている。文化資本の領域では、高尚な文化と新興文化の対立があって、年齢が関わっている。プレカリアートはアンダークラスとかチャヴなどと呼ばれることもある層である。移民は新興サービス労働者に分類されることが多い、などなど。このほか大学間格差や、首都ロンドンの圧倒的優位などについても言及がある。
著者は特にエリートとプレカリアートに注目して、格差の拡大に注意を払うように読者を促している。この最上位層と最下位層に比べれば、他の五つの階級の間の違いはあいまいだとのことだ。しかし、格差を嘆くのとは別の見方もできる。過去に比べて階級の分類が複雑になり、中間の五つの階級の間を隔てる垣根が低くなっているということは、社会の流動性が高まった結果だろう。それは1990年代から00年代にかけての英国の経済成長の成果であって、否定的に捉えるだけでは一面的すぎるという印象である。もちろん、経済成長があれば格差も拡大するので、それへの対応が必要だという話はわかるけれども。
英国民の階級分析。昔ながらの中流・労働者階級という分け方──月給か週給かで分割されたとのこと──ではなく、職業だけでなく、学歴、所得、資産、文化資本、社会関係資本、居住地といった要素も考慮しているのが新しいところである。原書はSocial Class in the 21st Century (Pelican, 2015)で、2011年~13年にかけてBBCの協力のもとに行われた「英国階級調査」の分析結果の一般向けの報告書である。回答者は32万5000人にのぼったとのこと。
統計分析の結果、英国民はエリート、確立した中流階級、技術系中流階級、新富裕労働者、伝統的労働者階級、新興サービス労働者、プレカリアートの七つに分けることができたという。社会関係資本はパットナムではなくブルデュー寄りの解釈が与えられており、エリート層が再生産のために使う「コネ」としてネガティブに捉えられている。文化資本の領域では、高尚な文化と新興文化の対立があって、年齢が関わっている。プレカリアートはアンダークラスとかチャヴなどと呼ばれることもある層である。移民は新興サービス労働者に分類されることが多い、などなど。このほか大学間格差や、首都ロンドンの圧倒的優位などについても言及がある。
著者は特にエリートとプレカリアートに注目して、格差の拡大に注意を払うように読者を促している。この最上位層と最下位層に比べれば、他の五つの階級の間の違いはあいまいだとのことだ。しかし、格差を嘆くのとは別の見方もできる。過去に比べて階級の分類が複雑になり、中間の五つの階級の間を隔てる垣根が低くなっているということは、社会の流動性が高まった結果だろう。それは1990年代から00年代にかけての英国の経済成長の成果であって、否定的に捉えるだけでは一面的すぎるという印象である。もちろん、経済成長があれば格差も拡大するので、それへの対応が必要だという話はわかるけれども。