29Lib 分館

図書館・情報学関連の雑記、読書ノート、音楽ノート、日常生活の愚痴など。

武雄市図書館に行ってきた。複本は二冊まで?

2013-11-22 06:56:25 | 図書館・情報学
  機会があって武雄市図書館に行ってきた。別のエントリにすでに記したように、特に目新しい図書館というわけではない、というのが僕の考えである。しかし、その後ネットを通じてそのOPACを検索してみると、ベストセラー本の複本をあまり持っていないのがわかった。もしや、同じ本を館内で買わせているのか?そうだとしたら、これは「新しい」。考えを改めなければならなくなるかもしれない。そう思って訪問してみた。



  仮に、数冊以上の販売点数が見込めそうな書籍については所蔵せずに館内で売ってしまい、そうでない書籍でかつ図書館向きであるものは所蔵するという方針であったならば、これは議論を呼ぶ選書方針だろう。指定管理者が利益を追求したら、ある意味で「公共的」な図書館蔵書が出来上がるというパラドクスである。複本が少ない分住民の読書需要を十分満たすことはできないが、対して代わりに多くのタイトルを図書館は購入できるわけで、ストックを重視する論者からは支持されていいはずの考え方である。出版社ならば、このような方針を持つ図書館を歓迎すべきだろう。ただし、指定管理者のCCCは小売もやっているので、その売れ残った本を所蔵させられているという可能性もあるし、そうでなくても選書の能力が不十分という可能性もある。今回の訪問ではその辺りを見極めたかった。

  で、どうだったかというと、確かに複本は少ない。販売スペースで展示されていたベストセラーランキング上位の書籍の所蔵を調べてみたところ、次のような結果だった。『人間にとって成熟とは何か』1冊、『海賊とよばれた男』2冊、『ロスジェネの逆襲』2冊、圏外ながら春先のベストセラー『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』も2冊だった(別館は除く)。人口5万人程度の市の図書館の複本数としてこの数が多いか少ないかが問題だが、慶應大の糸賀先生が比較に使ったお隣伊万里市図書館では、本によっては4冊ほど入れている。だから、武雄市図書館は抑えていると言っていいだろう。(ちなみに委託前の平成12年中に購入したと推定される『スタンフォードの自分を変える教室』は5冊ある)。

  また同じくベストセラーの『人生はニャンとかなる! 』や堀江隆文『ゼロ』は販売のみで所蔵していなかった。それぞれこの秋に出たばっかりの新刊だが、いずれ所蔵されるのだろうか。さらに、販売スペースで平積みされていた『ヴィジョナリーカンパニー』シリーズだが、各巻ちゃんと所蔵されているものの一巻のみ書庫になっているのはなぜだろう。書架には二巻以降が並んでいた。

  一方で、所蔵される新刊本は、図書館に適したものだったのか。率直に言って、短時間の訪問では判断つきかねるところがあった。『正社員の研究』のような渋い新刊が入っている一方、ベストセラーになった『統計学が最強の学問である』は所蔵していなかった。だが、このようなムラはどこにでもあることかもしれない。うーん新刊のチョイスはこんなものなのか?灰色文献がどこに置いてあるのかわからなかったし、政令指定都市の図書館に慣れた身からはちょっとという気もする。自分の中でこの規模の図書館が所蔵すべき書籍の基準がはっきりしていないこともあって、なんとも言い難い。

  以下煽りを込めてコメントすると、複本2冊というのは図書館界に対して弁解がましく、かつ中途半端すぎる。何をやってもどうせ批判されるのだから、売れる本は販売のみで所蔵しないという大胆な方針でやってほしい(そして売れる見込みが無くなったら所蔵する)。その代わりとして、公共図書館としてストックを重視するという方針が無ければならないけれども。すなわち、単純な読書量の追求ではなく少数の良質な読書を支援する、一方で同じ空間で私企業として利益を追求する、と。このようなコンセプトは両立可能であるように思えるし、広く議論を呼んでほしいところである。

  しかしながら、今年秋の図書館総合展の際のように、糸賀先生に「貸出数が少ない」と突っ込まれてキレている1)ようでは、運営者側はまだ従来の公共図書館イメージに縛られていると言わざるをえない。複本を抑えているという実態があるのだし、あそこは「貸出数なんか目標としていません」と返すべきところだっただろう。糸賀先生も、樋渡市長が「公設民営のブックカフェで何が悪い」と切り返すの期待していたはず。僕としてはもっと逸脱してほしいのだが、以上が無責任な物言いであることは自覚している。

--------------------------

1) 図書館総合展「"武雄市図書館"を検証する」全文(樋渡啓祐市長、糸賀雅児教授、CCC高橋聡さん、湯浅俊彦教授)-激論、進化する公立図書館か、公設民営のブックカフェか? / ハフィントンポスト
  http://www.huffingtonpost.jp/2013/10/31/takeo1_n_4186089.html
ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« いろいろ難しいことをやって... | トップ | 脳についての説明も面白いが... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。