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世界デビューしてしまった地味目のインディーズ系バンドの苦痛

2013-12-24 15:29:38 | 音盤ノート
The Sundays "Reading, Writing & Arithmetic" Rough Trade, 1990.

  ロック。ネオアコ/ギターポップにカテゴライズされるグループだが、パンク・ニューウェーヴの流れをあまり感じさせず、むしろ正統派のフォークロックとして聴いたほうがしっくりくる。1990年代にアルバム三枚を残してすでに活動停止しているが、これはデビュー作にあたる。レーベルは、英国ではインディーズのRough Tradeだが、米国では大手のGeffenからだった。

  編成は、ドラム、ベース、エレクトリックギターのトリオに、ファルセットから低音部まで使いこなす女性ボーカルを組み合わせるというものである。この時期の英国インディーズバンドには珍しく、ギターにほとんどエフェクトをかけず、単音でレスポールの柔らかい音色を聴かせる。そのサウンドは内省的で、その詞も根暗文学少女のつぶやきのようだ(歌詞カードを読む限りでは)。ボーカルの声質が高めで、高音部になるとやや幼い感じが出るところは好みが分かれるかもしれない(少なくとも僕は低い女性ボーカルの方が好きだ)。全体的に地味な佇まいだが、収録曲は粒揃いでかなり聴かせる。

  デビュー直後に来日した際、僕はこのバンドの名古屋公演を観に行った記憶がある。ビートルズ以来、英国のバンドの多くは生演奏が下手という個人的な偏見(だからこそスタジオ録音が発展した)があるのだが、このバンドの楽器隊は完璧なアンサンブルを聴かせた。一方で、ボーカリストのステージさばきはかなり控え目で、たぶん人前に立つのが苦痛だったのだと思う。クオリティの高いアルバムを作るのに、活動を止めてしまった理由もなんとなくわかる。
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