坂井豊貴『社会的選択理論への招待:投票と多数決の科学』日本評論社, 2013.
「社会的選択理論」なる、選択の合理性を数理的に検証する領域について解説する内容。タイトルに「招待」とあるが、一般向けとしてはやや難しく、数学的な素養のある「初学者」向けというのがその位置だろう。前著『マーケットデザイン』(参考)が面白かったので読んでみた。
そのテーマは、票割れを起こさず、より正確に多くの民意を反映する投票システムはどのようなものかというものである。例えば現在の小選挙区制度では、40%の支持率しかない政党から出る一人の候補者が、60%の支持率のある政党から出た二人の候補者に勝つことがありうる。こうした問題に対する取組みはフランス革命期の学者、ボルダーとコンドルセに遡ることできるという。そこでまず、候補者をランクづけて得点の多さで勝者を決める「ボルダールール」が検討される。以降、それに代わる方式について比較検討するのだが、このボルダールールが相対的に良いとのことだ。また、アローの不可能性定理も過大評価だとのこと。
率直に言って、各章で展開された理論のもつインプリケーションについて、もっと議論を展開してほしいという感想を持った。また、1970年代に証明されたというボルダールールの優位性が、なぜ今まで埋もれたままになっており、投票システムで採用されていないのか、これについても知りたい。各章は解説と証明を中心として禁欲的に記述されており、本書が狙った初学者にはこの分野の重要性を伝えきれていないと思う。一方で、日本国憲法や知人の不当逮捕について突然饒舌になったりして、バランスの悪さも感じる。
「社会的選択理論」なる、選択の合理性を数理的に検証する領域について解説する内容。タイトルに「招待」とあるが、一般向けとしてはやや難しく、数学的な素養のある「初学者」向けというのがその位置だろう。前著『マーケットデザイン』(参考)が面白かったので読んでみた。
そのテーマは、票割れを起こさず、より正確に多くの民意を反映する投票システムはどのようなものかというものである。例えば現在の小選挙区制度では、40%の支持率しかない政党から出る一人の候補者が、60%の支持率のある政党から出た二人の候補者に勝つことがありうる。こうした問題に対する取組みはフランス革命期の学者、ボルダーとコンドルセに遡ることできるという。そこでまず、候補者をランクづけて得点の多さで勝者を決める「ボルダールール」が検討される。以降、それに代わる方式について比較検討するのだが、このボルダールールが相対的に良いとのことだ。また、アローの不可能性定理も過大評価だとのこと。
率直に言って、各章で展開された理論のもつインプリケーションについて、もっと議論を展開してほしいという感想を持った。また、1970年代に証明されたというボルダールールの優位性が、なぜ今まで埋もれたままになっており、投票システムで採用されていないのか、これについても知りたい。各章は解説と証明を中心として禁欲的に記述されており、本書が狙った初学者にはこの分野の重要性を伝えきれていないと思う。一方で、日本国憲法や知人の不当逮捕について突然饒舌になったりして、バランスの悪さも感じる。