熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

NHK BS4K ドラマ: 広重ぶるう

2024年05月02日 | 映画
   浮世絵の世界で、葛飾北斎とともに、世に知られる歌川広重。実は、歌川広重は火消し同心として、江戸の火事を消すかたわら、絵を描いていた!!語られてくることの少なかった広重を、ともに歩んだ妻・加代との夫婦の物語としてドラマ化。したのがこの放送。

   知識としては既にあったが、私が、広重の偉大さを実際に身に感じたのは、オランダ・アムステルダムのゴッホ美術館で、広重の絵のゴッホの模写絵を見たときである。
   広重の「おおはしやたけの夕立」を模した「雨の橋」、「亀戸梅屋鋪」を模した「梅の開花」の克明な描写画で、大黒屋錦木江戸町などと言った漢字まで描かれていて、東西の垣根を越えて、いたくゴッホを感銘させたのを感じたからである。

   NHKの物語を、多少脚色すると、
   文政13年(1830年)。歌川広重(阿部サダヲ)は家業の火消しで生計を立てる下級武士だったが、絵師を目指していた。しかし、派手な美人画・役者絵全盛期時代であったので、広重のような地味な画風の風景画では売れず鳴かず飛ばずであった。
   ところが、妻・加代(優香)だけはそんな広重を気丈に励ましつつ、食い詰めながらも質素倹約につとめ、なけなしの私財を質草にして質屋に通いつめ、身を削りながら広重を支え続けた。
   あるとき、版元岩戸屋喜三郎(渡辺いっけい)から渡されたうちわに、ベロ藍(プルシアンブルー)という舶来絵具で絵が描かれているのを見て、その美しさに衝撃を受け、広重は「この青が生きるのは空!」と叫び、一気に絵心を触発されたが、高価な輸入顔料、
   必死になって助力を懇願する。
   人気絶頂の葛飾北斎(長塚京三)や、美人画の大家の歌川国貞(吹越満)にも及びもつかないが、そのベロ藍を初めて使用して「東都名所」を描いた。当初は一向に売れなかったが、少し芽が出始める。
   そんな時に、献身的な加代が通い続ける質屋であり絵が好きで版元になった保栄堂の主人・竹内孫八(髙嶋政伸)が、旅ブームに乗ろうと、広重を見込んで、「東海道五十三次」を依頼する。広重は、役人納めの東海道旅の道中にスケッチした下絵を元にして作品を描き、周りの人間に支えられながら風景画浮世絵師として大成して行く。
   しかし、中々、自分の描きたい画を掴めず、やっと、描きたいものが見つかった矢先に、加代が逝ってしまう。
   安政の大地震が勃発して江戸は廃墟と化す。失われた江戸を求めて、広重は再び筆をとる。
   ベロ藍を武器にして、世界の絵画に大きな影響を与えることとなった「名所江戸百景」を描き出したのである。
   この絵が、後にゴッホが触発されて模写した前述の作品である。
   
   

   このドラマは、広重の絵師の出世物語と言うよりは、妻・加代の献身的な生き様を描いた作品と言った感じで、優香が実に魅力的な良い味を出していて、感動的である。阿部サダヲの甘々で不器用ながら精一杯の広重像も板についていて面白い。
   北斎や国貞などの絵師や、版元たちを演じたベテラン役者たちの芸の確かさは秀逸で、彼らの会話などが当時の浮世絵界の様子を彷彿とさせていて興味深かった。

   キャストなど、NHKのデータをそのまま転写すると、
【原作】 梶よう子 『広重ぶるう』
【脚本】 吉澤智子
【音楽】 遠藤浩二
【語り】 檀 ふみ
【出演】 阿部サダヲ 優香
勝村政信(岡島武左衛門) 笹野高史(安藤十右衛門) 渡辺いっけい 黒沢あすか(しづ) 中島ひろ子 小松和重 前野朋哉 みのすけ
山本裕子 若林時英 野添義弘 吹越満 髙嶋政伸  長塚京三
【演出】井上昌典
【制作統括】 佐野元彦(NHKエンタープライズ)、松田裕佑(松竹)、遠藤理史(NHK)
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