先日、ブックレビューで、「エマニュエル・トッド 著「自由貿易は、民主主義を滅ぼす 」」 を書いて、トッドの主張は、折角、人類の多くを、貧困からの脱却に貢献したグローバリゼーションと現在の歴史の潮流にに逆行する「先進国・ファースト」の独善的な見解だと批判した。
今日、インターネットを叩いていたら、10年後の今も、朝日新聞GLOBEで、同じ見解を述べている「自由貿易は民主主義を滅ぼす エマニュエル・トッドが訴える保護貿易」と言うインタビュー記事を見つけたので、もう一度、考えてみたいと思った。
冒頭、米中貿易摩擦について聞かれて、
米国で、グローバリゼーションが進みすぎて、死亡率が増加し、平均余命が低下しており、行き過ぎた自由貿易を止め、何らかの保護、保護主義を必要としている。
もう一つは、より政治的で、グローバルな覇権をめぐるもので、中国が新たな覇権を獲得する手遅れになる前に、少しずつ中国の力を壊そうとしている。と二つの仮説を説く。
WTOについては、失敗ではなく、自由貿易には利点があるが、問題は、完全な自由貿易は国内で格差を拡大させることで、エリート主義、ポピュリズムによる衝突も引き起こし、「(自由貿易を擁護する)高名な経済学者たちは失敗を犯したとして、
トランプは、真実を語って、自由貿易にうんざりして米国民をつかみ、サンダースも保護主義を訴え、米国がより保護主義の態度へと変わったことが見てとれる。と述べている。
世界各地で起きている格差の拡大が自由貿易と関係がある、景気後退、生活水準の低下、それに上流階級とそれ以外の層の社会的な対立が、各国で見られるように、過度な自由貿易は社会を分断する。なぜ、疑いの余地のないこのシンプルな現実を伝統的な経済学者は理解できないのか。と言うのだが、
これは、一面的な自由貿易論で、一例をあげても、大恐慌後に、世界各国が保護貿易政策を取って世界経済がブロック化して縮小し、悲惨な第二次世界大戦に突入した歴史的事実を無視している。
問題は、トッドの保護主義とは何かの認識なのだが、
自由貿易は一種の宗教だが、保護主義というのは、自由貿易のようなイデオロギーではなく、国家がとる手段で、労働市場も違うものになり、労働者の賃金は上昇する。保護主義によって輸入品の価格が上がるというのは古い考えで、保護主義がつくりだすのは社会的な革命で、本当のゴールは、社会の中の力のバランスを変えることなので、格差を解消し、エンジニアや科学者、モノをうみだす人にアドバンテージがあるような社会へと移行させ、何かを創造することである。と言う。
プラトンの哲人政治ならいざ知らず、経済を国家管理下に置けば、上手く行くと言った幻想は、既に、ソ連の崩壊で、社会主義的計画経済がうまく機能しなかったことは歴史が証明しており、中国の国家資本主義も岐路に立っているのみならず、人間にとって最も重要な個人的人権を無視するなど基本的な民主主義に逆行している。
ある程度の自由貿易なら問題ないが、あるポイントに達すると、経済的な格差が広がり過ぎて、民主主義と自由貿易を両立できなくなる。自由貿易をある程度やめて民主主義を救うか選択を迫られる。民主主義の根底には、いくつかの平等が求められ、市民権、法の下の平等、投票権、そして、そこには経済的な要素も絡んでおり、政治的民主主義が、経済的な格差の拡大を野放しにしたままでは成立しない。
我々は、すでにその段階に到達してしまっており、ここでの問いは、完全な自由貿易を手放すか、民主主義を手放すかなのである。と言う。
電信柱が長いのも、ポストが赤いのも、すべて、自由貿易が悪いのです、と言う単純な論法だが、自由貿易とは一体何なのかと言う基本概念に立ち戻る必要があろう。
興味深いのは、トランプのネガティブな部分を抜けば、保護主義的な政策は、民主主義を取り戻すための理にかなった方法であり、米国は今、普通の民主主義に戻ろうとしている。として、トランプを認めていることで、
欧州連合(EU)は、中国と一緒になって、これまで以上に自由貿易を推し進め、擁護を叫んでいるので、フランスでは、保護貿易にはほど遠い。と言って、自由貿易から脱却できそうにないフランスの運命を予見しているかのような見解である。
理解できないのは、保護主義とはナショナリズムとは関係ないと言う見解で、
自由貿易がナショナリズムを生み出す。保護主義は現時点では民主的だが、ナショナリズムは違う。保護主義は純粋に経済的なものだが、ナショナリズムは『力』であり、ナショナリズムの深層には、自らが世界の中心であるという考え方がある。自由貿易が平和をもたらす、というのが事実でないのと同様に、保護主義が国家間で戦争を引き起こすというのは間違いだ。と言う。
もう一つ理解できないのは、保護貿易主義の行きつく先で、
米国だけでなく、欧州も保護主義政策をとったら、中国は対応しないければならなくなる。外需のインセンティブはなくなるわけで、おそらく経済は、内需主導に切り替わっていくであろう。(内需拡大政策を有効に実行できない)中国がいつか、トランプ氏に感謝する日がくるかもしれない。と言っているのだが、別なところで、
国際的な自由貿易はGDP(国内総生産)を上げるかもしれないが、社会の中で格差を広げる、・・・と述べているので、世界全体が保護貿易に走れば、世界経済が縮小することは認めているのであろうか。
いずれにしろ、トッドの「自由貿易は民主主義を滅ぼす エマニュエル・トッドが訴える保護貿易」論は、「先進国・ファースト」の見解であって、特に新興国をターゲットにして、自由な貿易や資本移動を抑制遮断して、自分たちの経済を再構築するために保護貿易主義を実施すると言う、宇宙船地球号の乗組員全体の生活水準を底上げしようとするグローバルなエポックメーキングな歴史の潮流に逆行する動きだと思っているので、再度、問題提起をしておきたいと思ったのである。
今日、インターネットを叩いていたら、10年後の今も、朝日新聞GLOBEで、同じ見解を述べている「自由貿易は民主主義を滅ぼす エマニュエル・トッドが訴える保護貿易」と言うインタビュー記事を見つけたので、もう一度、考えてみたいと思った。
冒頭、米中貿易摩擦について聞かれて、
米国で、グローバリゼーションが進みすぎて、死亡率が増加し、平均余命が低下しており、行き過ぎた自由貿易を止め、何らかの保護、保護主義を必要としている。
もう一つは、より政治的で、グローバルな覇権をめぐるもので、中国が新たな覇権を獲得する手遅れになる前に、少しずつ中国の力を壊そうとしている。と二つの仮説を説く。
WTOについては、失敗ではなく、自由貿易には利点があるが、問題は、完全な自由貿易は国内で格差を拡大させることで、エリート主義、ポピュリズムによる衝突も引き起こし、「(自由貿易を擁護する)高名な経済学者たちは失敗を犯したとして、
トランプは、真実を語って、自由貿易にうんざりして米国民をつかみ、サンダースも保護主義を訴え、米国がより保護主義の態度へと変わったことが見てとれる。と述べている。
世界各地で起きている格差の拡大が自由貿易と関係がある、景気後退、生活水準の低下、それに上流階級とそれ以外の層の社会的な対立が、各国で見られるように、過度な自由貿易は社会を分断する。なぜ、疑いの余地のないこのシンプルな現実を伝統的な経済学者は理解できないのか。と言うのだが、
これは、一面的な自由貿易論で、一例をあげても、大恐慌後に、世界各国が保護貿易政策を取って世界経済がブロック化して縮小し、悲惨な第二次世界大戦に突入した歴史的事実を無視している。
問題は、トッドの保護主義とは何かの認識なのだが、
自由貿易は一種の宗教だが、保護主義というのは、自由貿易のようなイデオロギーではなく、国家がとる手段で、労働市場も違うものになり、労働者の賃金は上昇する。保護主義によって輸入品の価格が上がるというのは古い考えで、保護主義がつくりだすのは社会的な革命で、本当のゴールは、社会の中の力のバランスを変えることなので、格差を解消し、エンジニアや科学者、モノをうみだす人にアドバンテージがあるような社会へと移行させ、何かを創造することである。と言う。
プラトンの哲人政治ならいざ知らず、経済を国家管理下に置けば、上手く行くと言った幻想は、既に、ソ連の崩壊で、社会主義的計画経済がうまく機能しなかったことは歴史が証明しており、中国の国家資本主義も岐路に立っているのみならず、人間にとって最も重要な個人的人権を無視するなど基本的な民主主義に逆行している。
ある程度の自由貿易なら問題ないが、あるポイントに達すると、経済的な格差が広がり過ぎて、民主主義と自由貿易を両立できなくなる。自由貿易をある程度やめて民主主義を救うか選択を迫られる。民主主義の根底には、いくつかの平等が求められ、市民権、法の下の平等、投票権、そして、そこには経済的な要素も絡んでおり、政治的民主主義が、経済的な格差の拡大を野放しにしたままでは成立しない。
我々は、すでにその段階に到達してしまっており、ここでの問いは、完全な自由貿易を手放すか、民主主義を手放すかなのである。と言う。
電信柱が長いのも、ポストが赤いのも、すべて、自由貿易が悪いのです、と言う単純な論法だが、自由貿易とは一体何なのかと言う基本概念に立ち戻る必要があろう。
興味深いのは、トランプのネガティブな部分を抜けば、保護主義的な政策は、民主主義を取り戻すための理にかなった方法であり、米国は今、普通の民主主義に戻ろうとしている。として、トランプを認めていることで、
欧州連合(EU)は、中国と一緒になって、これまで以上に自由貿易を推し進め、擁護を叫んでいるので、フランスでは、保護貿易にはほど遠い。と言って、自由貿易から脱却できそうにないフランスの運命を予見しているかのような見解である。
理解できないのは、保護主義とはナショナリズムとは関係ないと言う見解で、
自由貿易がナショナリズムを生み出す。保護主義は現時点では民主的だが、ナショナリズムは違う。保護主義は純粋に経済的なものだが、ナショナリズムは『力』であり、ナショナリズムの深層には、自らが世界の中心であるという考え方がある。自由貿易が平和をもたらす、というのが事実でないのと同様に、保護主義が国家間で戦争を引き起こすというのは間違いだ。と言う。
もう一つ理解できないのは、保護貿易主義の行きつく先で、
米国だけでなく、欧州も保護主義政策をとったら、中国は対応しないければならなくなる。外需のインセンティブはなくなるわけで、おそらく経済は、内需主導に切り替わっていくであろう。(内需拡大政策を有効に実行できない)中国がいつか、トランプ氏に感謝する日がくるかもしれない。と言っているのだが、別なところで、
国際的な自由貿易はGDP(国内総生産)を上げるかもしれないが、社会の中で格差を広げる、・・・と述べているので、世界全体が保護貿易に走れば、世界経済が縮小することは認めているのであろうか。
いずれにしろ、トッドの「自由貿易は民主主義を滅ぼす エマニュエル・トッドが訴える保護貿易」論は、「先進国・ファースト」の見解であって、特に新興国をターゲットにして、自由な貿易や資本移動を抑制遮断して、自分たちの経済を再構築するために保護貿易主義を実施すると言う、宇宙船地球号の乗組員全体の生活水準を底上げしようとするグローバルなエポックメーキングな歴史の潮流に逆行する動きだと思っているので、再度、問題提起をしておきたいと思ったのである。