プロジェクト・シンジケートのJ・スティグリッツ教授の新しい論文「アメリカのサイレント・プログレッシブ・マジョリティー America's Silent Progressive Majority」が非常に興味深い。
今回の米国中間選挙について、トランプ嫌いが徹底している教授の論考であるから、私など大いに溜飲が下がって面白かった。
今回の米国中間選挙での共和党の勝利という恐れられていた「赤い波」が実現しなかったので、世界は安堵のため息をついた。共和党が下院を僅差で制したのに対し、民主党は上院を維持した。共和党の業績は予想より悪かっただけではなく、ホワイトハウスを支配していない政党にとっては、数十年で最悪の中間選挙であった。
今年の有権者は共和党の過激主義と偽善を拒否したようで、トランプ前大統領が支持した多くの候補者の勝利を大部分否定した。彼らは、トランプの支持を得るために、2020年の選挙が「盗まれた」という彼の嘘を受け入れ、平和的な権力移譲や無党派の選挙管理など、基本的な民主主義の原則に公然と疑問を投げかけて立候補したのだが、アリゾナ、ミシガン、ペンシルベニアなどの主要な激戦州を含め、ほとんどで敗北を喫した。
しかし、楽観してはならない。
ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバが、ブラジルでジャイール・ボルソナロ に勝利したときのように、心強い選挙結果によって、権威主義の台頭というより広範な傾向から気をそらしてはいけない。イタリア、スウェーデン、ハンガリーでの最近の選挙から、中国共産党による中国の習近平国家主席の「再選」まで、右傾化、強権化が進展して、世界が民主主義にとって安全になったと考える理由はない。それが実現するのは、民主主義政府が一貫して有権者の利益に貢献し、21 世紀の決定的な問題に取り組んでいることを示したときだけである。
ここで、スティグリッツ教授は、2年間のバイデン政権の善政と業績について詳細に論じていて
興味深いが、省略する。
面白いのは、 COVID-19のパンデミックについては、少なくともバイデンは、トランプとは異なり、それを封じ込めるためにできる限りのことをしたし、インフレも、パンデミックとその後のロシアの戦争が、多くの供給側のボトルネックと部門別の需要の変化を引き起こしたからであって、バイデンの所為ではない。「より良い」議会があれば、バイデンはもっと多くのことができたかも知れない。などと述べていることである。
さて、今回の選挙で、アメリカの有権者が共和党の過激主義を拒否したように見えるとして、アメリカ人が直面する課題を察知し、情報に基づいた市民の議論と適切に設計された公共政策を通じて、課題に対処するより良い仕事ができるであろうと、持論を展開している。
共和党が社会主義だと糾弾している民主党左派のリベラルな政策について、これらの進歩的なアジェンダのほとんどは、1948 年の世界人権宣言など、すでに世界的に認められている権利を促進することを目的としており、絵に描いた餅ではない。これらの目的は、他の多くの場所で常識と見なされていて、一貫してより高い生活水準と幸福を追求している国では、これらの原則を反映した政策の採用に成功しており、それは偶然ではない。と一蹴している。
多くの社会問題などに対して政策的解決策を要求したり、環境を保護したり、経済的安全を強化したり、競争を強化したり、すべての人の声が政治システムに反映されるようにしたりすることは、左翼の過激主義ではない。右派は、この進歩的なアジェンダを急進的な行き過ぎだと主張しているが、ほとんどの有権者はそれを受け入れていない。進歩的なアジェンダは既に中道的なアジェンダになっていて、これらの前線での進歩に反対しているのは、過激派の保守主義者、盲目的なイデオロギー信奉者、および特権を維持することに専心している特別利益団体だけである。と言う。
進歩的なアジェンダを支える基本原則の 1 つは、特に 21 世紀の大きな問題は、個別にではなく、集合的に取り組むのが最善であるということで、もう 1 つの原則は、成功する集団行動は民主的かつ包括的に動員されなければならないということであるが、今日のテクノ・リバタリアンは、これらすべてを無視している。
革新的で適切に設計された公共政策は、すべての人の行動範囲を拡大し、自由の領域を根本的に拡大することができる。
今日の分断された社会においてさえ、有権者の抑圧は道徳的に間違っているという広範な合意がなされるべきである。 2020 年と 2022 年の選挙で注目に値するのは、政治はゲーム以上のものであり、取引よりも深いものであることを認識した政府高官 (その多くは共和党員) の数の増加で、彼らは正道を歩み、選挙プロセスを弱体化させて結果を覆そうとするトランプの努力に屈することを拒否した。
2022年の選挙は、少なくとも、有権者の大部分がトランプの政治からの移行を望んでいることを示した。彼らは我々が直面している課題を察知しており、市民的で情報に基づいた議論を通じて、より良い解決策を一緒に講じることができると信じている。アメリカ人は悪口や脅しにうんざりしている。意識しているかどうかにかかわらず、ほとんどの人が進歩的なアジェンダと、すべての人により高い生活水準を提供するという約束を支持している。
と、スティグリッツ教授は結んでいる。
この論文は、スティグリッツ教授の希いと言うかアメリカの民主主義に対する限りなき期待が込められているが、トランプの悪気とも言うべき「赤い波」が空振りに終って、民主党が上院で勝利し、下院でも敗北が小差に終ったのは、強烈な逆風に抗しての民主党にとっては幸運であった。
ジョージアでの上院議員選挙では、トランプを嫌って民主党が勝利するであろうから、ミンチンのような造反議員を心配しなくて済むので、ねじれ国会ながら、バイデンにとっては、多少余裕を持って大統領選挙に臨めるはずである。
今回の米国中間選挙について、トランプ嫌いが徹底している教授の論考であるから、私など大いに溜飲が下がって面白かった。
今回の米国中間選挙での共和党の勝利という恐れられていた「赤い波」が実現しなかったので、世界は安堵のため息をついた。共和党が下院を僅差で制したのに対し、民主党は上院を維持した。共和党の業績は予想より悪かっただけではなく、ホワイトハウスを支配していない政党にとっては、数十年で最悪の中間選挙であった。
今年の有権者は共和党の過激主義と偽善を拒否したようで、トランプ前大統領が支持した多くの候補者の勝利を大部分否定した。彼らは、トランプの支持を得るために、2020年の選挙が「盗まれた」という彼の嘘を受け入れ、平和的な権力移譲や無党派の選挙管理など、基本的な民主主義の原則に公然と疑問を投げかけて立候補したのだが、アリゾナ、ミシガン、ペンシルベニアなどの主要な激戦州を含め、ほとんどで敗北を喫した。
しかし、楽観してはならない。
ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバが、ブラジルでジャイール・ボルソナロ に勝利したときのように、心強い選挙結果によって、権威主義の台頭というより広範な傾向から気をそらしてはいけない。イタリア、スウェーデン、ハンガリーでの最近の選挙から、中国共産党による中国の習近平国家主席の「再選」まで、右傾化、強権化が進展して、世界が民主主義にとって安全になったと考える理由はない。それが実現するのは、民主主義政府が一貫して有権者の利益に貢献し、21 世紀の決定的な問題に取り組んでいることを示したときだけである。
ここで、スティグリッツ教授は、2年間のバイデン政権の善政と業績について詳細に論じていて
興味深いが、省略する。
面白いのは、 COVID-19のパンデミックについては、少なくともバイデンは、トランプとは異なり、それを封じ込めるためにできる限りのことをしたし、インフレも、パンデミックとその後のロシアの戦争が、多くの供給側のボトルネックと部門別の需要の変化を引き起こしたからであって、バイデンの所為ではない。「より良い」議会があれば、バイデンはもっと多くのことができたかも知れない。などと述べていることである。
さて、今回の選挙で、アメリカの有権者が共和党の過激主義を拒否したように見えるとして、アメリカ人が直面する課題を察知し、情報に基づいた市民の議論と適切に設計された公共政策を通じて、課題に対処するより良い仕事ができるであろうと、持論を展開している。
共和党が社会主義だと糾弾している民主党左派のリベラルな政策について、これらの進歩的なアジェンダのほとんどは、1948 年の世界人権宣言など、すでに世界的に認められている権利を促進することを目的としており、絵に描いた餅ではない。これらの目的は、他の多くの場所で常識と見なされていて、一貫してより高い生活水準と幸福を追求している国では、これらの原則を反映した政策の採用に成功しており、それは偶然ではない。と一蹴している。
多くの社会問題などに対して政策的解決策を要求したり、環境を保護したり、経済的安全を強化したり、競争を強化したり、すべての人の声が政治システムに反映されるようにしたりすることは、左翼の過激主義ではない。右派は、この進歩的なアジェンダを急進的な行き過ぎだと主張しているが、ほとんどの有権者はそれを受け入れていない。進歩的なアジェンダは既に中道的なアジェンダになっていて、これらの前線での進歩に反対しているのは、過激派の保守主義者、盲目的なイデオロギー信奉者、および特権を維持することに専心している特別利益団体だけである。と言う。
進歩的なアジェンダを支える基本原則の 1 つは、特に 21 世紀の大きな問題は、個別にではなく、集合的に取り組むのが最善であるということで、もう 1 つの原則は、成功する集団行動は民主的かつ包括的に動員されなければならないということであるが、今日のテクノ・リバタリアンは、これらすべてを無視している。
革新的で適切に設計された公共政策は、すべての人の行動範囲を拡大し、自由の領域を根本的に拡大することができる。
今日の分断された社会においてさえ、有権者の抑圧は道徳的に間違っているという広範な合意がなされるべきである。 2020 年と 2022 年の選挙で注目に値するのは、政治はゲーム以上のものであり、取引よりも深いものであることを認識した政府高官 (その多くは共和党員) の数の増加で、彼らは正道を歩み、選挙プロセスを弱体化させて結果を覆そうとするトランプの努力に屈することを拒否した。
2022年の選挙は、少なくとも、有権者の大部分がトランプの政治からの移行を望んでいることを示した。彼らは我々が直面している課題を察知しており、市民的で情報に基づいた議論を通じて、より良い解決策を一緒に講じることができると信じている。アメリカ人は悪口や脅しにうんざりしている。意識しているかどうかにかかわらず、ほとんどの人が進歩的なアジェンダと、すべての人により高い生活水準を提供するという約束を支持している。
と、スティグリッツ教授は結んでいる。
この論文は、スティグリッツ教授の希いと言うかアメリカの民主主義に対する限りなき期待が込められているが、トランプの悪気とも言うべき「赤い波」が空振りに終って、民主党が上院で勝利し、下院でも敗北が小差に終ったのは、強烈な逆風に抗しての民主党にとっては幸運であった。
ジョージアでの上院議員選挙では、トランプを嫌って民主党が勝利するであろうから、ミンチンのような造反議員を心配しなくて済むので、ねじれ国会ながら、バイデンにとっては、多少余裕を持って大統領選挙に臨めるはずである。