英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2023年度NHK杯将棋トーナメント 準決勝 羽生善治九段-藤井NHK杯保持者 その1

2024-03-19 15:21:47 | 将棋
決勝戦の放送も終わってしまいましたが、準決勝です。


 角換わり模様の出だしだったが、後手の藤井NHK杯保持者(以後“藤井八冠”と表記)が雁木を選択。
 角換わりの通常の初手▲2六歩ではなく、▲7六歩と指し飛先の歩も2六で留め▲7八金を先に指したので、羽生九段が後手雁木を誘導したのかもしれない。第1図の先手の陣形は短手数で固め、右四間飛車腰掛銀と戦闘意欲十分の構えだ。
 後手は居玉のうえ、桂頭も手薄。仕掛けるなら、今がタイミング。▲4五歩△同歩▲7五歩△同歩▲2四歩△同歩と進む。

 《陣形の差(後手は居玉で桂頭に弱点)》、《攻めている》ので、アマチュア二段同士なら相当先手の勝率が良いはずだ。もちろん、藤井八冠は先手の仕掛けとの間合いを計り、仕掛けられても大丈夫(悪くはならない)と見ている。
 ここで(第2図で)、▲4五桂と跳ねるのが順当と思われたが、羽生九段は▲3五歩。△同歩なら3三への歩の叩きが生じ、攻めの手段を広げる羽生九段好みの突き捨てだが、藤井八冠は取らずに△7七角成▲同桂△2六角(第3図)と角交換から先手飛車に当たりを掛けられ、

 ▲3八飛を強いられ△4六歩と突きだされ、先手の5六の銀がいなくなると△4七歩成とされる嫌味が生じている。それにより、《先手の先制攻撃から主導権を取って攻める》という目論見だったのが、《攻め合い》に持ち込まれてしまった感がある。
 先手としては、《先手攻勢、後手守勢》でも《攻め合い》でも攻めるという選択肢には変わりはなく、▲3四歩と攻めを継続。対する藤井八冠も△8六歩▲同歩を利かせ、△5五歩と狙い筋を敢行。▲同銀なら△4七歩成があるので、後手の攻めが部分的には決まってるのだが、先手も▲4五桂と跳ねて、全軍総攻撃の態勢。『肉を切らせて、骨を断つ』という兵法だ。

 後手も△5六歩と銀を取り、次に△4七歩成(これが飛車取りになる)を見せる。この猛烈な攻め合いは、先に銀を取った後手の攻めが速いように思えるが、NHKのAI形勢判断は若干先手に振れていたように思う。

 後手としては、銀取りに△5五歩と突きだした手では△7五歩、△5六歩と銀を取る手では△4四銀と手を戻す手が有力だったようだ。実際、感想戦で藤井八冠も「△7五歩の方が良かったかもしれない」と言っていたような…
 ただし、藤井八冠の感想はともかく、AIの評価値……例えば、勝利確率60%であっても、その60%の有利を維持する手が指せなければ意味がない。要は、棋士(人間)のトップレベルが勝ちやすいかどうかが問題なのである。

 とは、言ったものの、テレビ画面のAI形勢判断や候補手には、どうしても目が行ってしまう。
 △5六歩と銀を取られた局面は、評価値は“先手やや良し”だったと思う。そして、候補手の最上位(最善手)は▲7四歩(変化図1)

 私からすると、△4七歩成が相当な脅威で、対する▲7四歩は単なる桂取りで、反撃のパンチとしては軽すぎるように思える。
 しかし、△4七歩成には▲3六飛が角取りになる。この角取りには、△5九角成と切る“返し技”があるが、▲5九同銀と取る手が次の△5七歩成に対する先逃げとなっており、先手からは次の▲7三歩成の非常に厳しい手が残っている(△7三同金には▲5三桂成がある。角を切ったことで2六の角の5三への利きもなくなっている)
 なので、▲7四歩には△同飛としておく方が良いのかもしれない(飛車を7四に移動させた方が先手の得になるのかは私には分からないが、NHKのAIは“▲7四歩が良い”と言っていた)
 でも、これはAI的な手で、藤井八冠ならともかく、人間には浮かびにくい手だ。羽生九段は、人間の最善手の▲3三歩成。
 以下△3三同桂▲同桂成に△4七歩成と進む。

 ここで、羽生九段は▲3六飛と躱す。角取りの先なので当然に思えたが、この手で画面の形勢判断の藤井八冠の帯グラフがにゅ~と伸びた(60%ぐらいで藤井有利)。ただし、この将棋、AIにとっても難解らしく、よく帯が伸びたり縮んだりした。この局面について言うと、▲3六飛と指す直前で羽生有利の60%をが53%に減り、▲3六飛の直後には40%(藤井60%)になり、約30秒後に藤井八冠が指す直前は44%に戻っているという具合。

 ともかく、上記の評価値の変動が示すのは、《▲3六飛は疑問手で最善手を指せば、先手羽生九段がやや有利だった》ということ。
 で、その最善手というのは……「その2」に続く。

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