英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

よいお年を

2008-12-31 20:21:24 | 日記
 あと3時間ちょっとで2008年が終わります。
 どんな年だったかなあ……北京五輪、これはよく覚えています。五輪閉幕後もドキュメントやバラエティに、メダリストたちが登用されるせいかも知れません。五輪本体の思い出としては、実際の時間より昔のような気もします。それだけ、暗いニュースが多かったということでしょうか。
 夏以前の出来事といったら、ガソリン代が上がったこと、『そばにいるね』が流行ったことぐらいしか思い出せません(老化現象か)。
 個人的なことでは、羽生名人の将棋に一喜一憂し続けた一年と言えます。あとは、PTA活動ですね。やはり、一生懸命したことはよく覚えていますね。

 そして、何と言っても、このブログを始めたことです。今までも、共同でサイトを運営したり(この時も生活が激変しました)、将棋SNSに参加したりしていましたが、個人のブログは純粋に楽しめます。
 おかげで、睡眠時間が減りました。って、そうではなくて、ブログを通して友達が増えたことが、2008年の大きな出来事だと言えます。
 私のぶろぐに訪れて下さる方々、コメントを残してくださる方々、本当にありがとうございました。来年もよろしくお願いします。
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年末桜と海と鰯雲

2008-12-30 01:38:19 | 歳時
 例の桜、12月17日の冬桜の続報です。
 写真はその10日後です。多少散ったようですが、まだかなり咲いています。


 その日は曇っていました。日本海沖ではこんな光景も


 12月20日はいい天気で、海も空も綺麗でした。


 今日(12月29日)は久々に晴れました。空には鰯が泳いでいました。この時期、福井は1週間に1日ぐらいしか晴れません。

 ついでに、今日の夕焼けです。
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情熱大陸

2008-12-29 22:57:33 | ドキュメント
 『情熱大陸extra(棋士)』を観る。
 正直言うと、残念な内容でした。

 確かに、密着して取材していました。しかし、せっかく密着したのに、それを深く掘り下げていない感じました。何か上っ面だけをなぞっただけの感があります。
昨年の佐藤二冠王の時のほうが遥かに面白かったです。
 原因は、羽生名人3連勝した時点で、『羽生、永世七冠制覇』というテーマで番組作りや編集・演出を進めたはずで、渡辺竜王3連勝の時点、あるいは2連勝の時点で、方針を変更せざるを得なかったことが、大きな要因であると考えられます。それに付随して、最終局までもつれ込んだため、七局に及んでしまい、それらをすべて盛り込もうとしたため、一局一局が希薄なものになってしまいました。
 もう一つの原因は、今回は羽生名人、渡辺竜王、どちらが勝っても永世竜王の資格を獲得するので、焦点を一人に絞ることができなかったことも、浅くなってしまった原因でしょう。

 その結果、全体的に中途半端になってしまいました。例えば、タレントのつるの剛士氏を起用したこと。はっきり言うと、余計な登用で、その分を対局に時間を割いて欲しかったです。将棋にあまり興味がない人の興味を引くための起用とかもしれません。
 楽天の野村監督の起用も中途半端で、知将の野村監督の勝負観と将棋を結びつける狙いだと思われますが、あの程度の掘り下げ方なら、もっと対局の周辺に焦点を絞って欲しかったです。

★もっと掘り下げて欲しかった点
①第一局、渡辺竜王の将棋観や自信を木っ端微塵に粉砕した羽生名人の大局観と、驚愕する周囲の反応
②第四局、何度も諦めかけた渡辺竜王の心境
③第七局、何も解説いらないから、終局直前の30分ぐらいの映像の10分間ぐらいのダイジェスト映像

 とにかく、ぎりぎりの勝負、その両者の息遣いがあまり感じることができなかったのが残念です。

 あと、これは賛否両論あると思いますが、

④第三局に敗れた渡辺竜王が、逃げるように宿を去っていったのを、ホームまで追っかけカメラとマイクを向けたこと
⑤羽生名人に「今回の竜王戦、なんで渡辺さんは勝てたんですか?」と尋ねたこと

 ④については、ここまで追及しなくてもいいんじゃないかと思いました。ドキュメント的にはおいしいシーンかもしれませんが、人としてどうなのかと思いました(仕事だから当然という考え方もありますが)。それと、勝負に影響するような取材はやめて欲しいです。
 ⑤は、愚問でしょう。突っ込んだ取材をするという姿勢は買いますが、突っ込みどころが違っているでしょう。
 「私が弱かったからです」と答える騎士もいると思いますが、羽生名人は「それは私に聞かれても分からないんで、渡辺さんに聞いてください」とさわやかに笑いながら答えていたのが、羽生名人らしいと思いましたが、そのあと、映像が切れる前、一瞬、羽生名人が悔しそうな怒っているような目をしていたと感じたのは、私の考えすぎでしょうか?
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学力テストのデータ公表と知事の品格

2008-12-25 21:49:35 | 時事
 秋田県が各市町村別の平均正答率などのデータを公表しました。これまで、都道府県単位としては、大阪府が情報公開請求に応じる形で市町村別のデータの一部を公表していますが、すべての市町村のデータを公表したのは、秋田県が初めてです。

 学力テストのデータ公表については、10月23日の『自慢したかったの』で、熱く語っていますので、ここでは詳しく述べませんが、私は反対です。


 まず、秋田県知事の言葉を紹介します。
「私は、純粋に、公表することが秋田県の教育の向上につながると、一途に考えて公表させていただいてます。
 公教育はプライバシーを除いて、公開は基本だと思っています」

 データの公表が、学校の序列化や行過ぎた競争につながるのではないかという指摘については
「子どもたちにとっては、序列化や過度の競争はないと思っている。他の市やよその学校のよさを理解して、自分たちの教育の向上につなげることが、あるべき姿だとおもっています」

 これに対し、公表に反対してきた秋田県内の市町村の教育委員会は強く反発しています。
 八幡町教育長は
「まさか公表されるとは思ってなかったので、動揺しています。(中略)公表されたのは非常に残念だと率直に思います」
 秋田市教育長は
「数字が一人歩きをするということを、大いに懸念せざるをえない。序列化や競争激化ということで、教育現場に決していい影響は与えない。平均正答率の公表は好ましくない。すべきでないと考えている」


 文部科学省は来年度以降も、市町村別や学校別の結果の一覧表は公表すべきではないとして、昨日、来年度のテストの実施要領を示したばかりでした。

 文部科学省は
「実施要領では、市町村の結果の公表は市町村の教育委員会にゆだねられている。秋田県が教育委員会の意思に反して公表したことはまことに遺憾である。今回の公表の狙いと教育の改善につながるのかきちんと確認したい」
と、コメントしています。


 まず、文部科学省のコメントは少しおかしいと思います。文部科学省の方針もデータは公開すべきではないであったはず。秋田県の市町村の教育委員会の意向を盾にとって批判するのはおかしいと思います。

 まあ、それは措いておいて、秋田県の知事のやり方はおかしいです。
 たとえ、正しいと思っても、正式な手順を踏まないで断行するのはルール違反です。(今回の場合、正しいかどうかも甚だ疑問ですが)
 知事は県のトップです。そのトップが、ルール違反をしていいものでしょうか?まず、データ公表の利を文科省や教育委員会や世間に説いて理解を得るべきです。 ニュースでは「市町村の教育委員会は公表に反対していた」と表現しているので、知事はそう訴えてきたのかもしれませんが、それでも、今回の断行は賛成できません。知事の経歴を知らないので、断言はできませんが、教育は畑違いなのではないでしょうか。教育現場や教育委員会の意見を尊重するのが筋だと思います。

 これに関連して、大阪府の橋下府知事についても語らせてください。
 少し前ですが、文部科学省の指針について「ばっかじゃないの!」と「ばか」を5、6回連発していました。知事はわざとこういう言い回しをして、世論を煽っているのではないかという節も見られますが、府のトップが、こういう言い方をしていいものかと、腹立たしく思いました。

 あと、「情報開示請求」という件もあり、これについてはよく分かりません。何でも情報を公開すればいいというものではないと思うのですが、どうなのでしょう。公表した場合、不都合が生じると判断できる場合は拒否すべきだと思います。その基準は難しいですが。


 「学力テストのデータ公表は学力の向上につながる」という考え方もあるでしょう。確かに、データを公表すれば、現場の尻を叩くことになり、学力向上に今以上に力を注ぐようになるでしょう。もちろん、学校の序列化や過度の競争という弊害も生じます。これらのプラス・マイナスを比較して、また他の要素も考慮して総合的に公表の是非を下す必要があります。

 しかし、その前に根本的な問題があります。データ公表のような成果主義の下で、本当に学力向上が望めるのでしょうか?
 教育現場が殺伐としたものになり、その状況で本当の教育が行われるのでしょうか?
 もっと端的に言うと、点数は伸びても学力が向上するかは疑問です。成果主義に陥ると、「ここはテストに出る可能性が高いから覚えておくように」とか「余計なことは考えなくていいから、この公式を覚えて使えるようにしなさい」とかいう教え方が横行するのではないでしょうか。
 小学校というのは、点数よりも、今後勉強していくのに基本的なものの考え方や思考力、論理的な思考の積み重ね方を身に付けるのが大きな目的だと思います。だいいち、成果主義では勉強の面白さは、まったくわからないと思います。
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クリスマス・イブの思い出②

2008-12-25 19:18:56 | 日記
 子ども時代には、ロマンティックな想い出がまったくない私でした。青春時代は割愛して、時は今から7、8年前に跳びます。

 サンタの存在とは縁遠い私でしたが、まあ子どもたちには人並みの想い出をと頑張っていました。しかし、仕事は年末年始は平常の3倍くらい忙しくなるので、その中でクリスマスプレゼントを用意するのはけっこうきついのです。
 子どもたちの希望をさりげなくリサーチしなければなりません。希望が変わる恐れもあるので、あまり早く用意もできません。しかし、あまり遅いと売切れてしまいます。
 妻は働いていますし、おもちゃやゲームには疎いので、それは私の役目になっていました。

 その年も忙しかったです。子どもは長女は小学5年生、長男は小学4年生、次男は4歳でした。
 次男はともかく、上ふたりは、サンタがプレゼントを持ってくるとは思っていないだろう。そう思い、ふたりに打ち明けました。
「改めて言うのもなんだけど、クリスマスプレゼントだが、希望のものを言ってくれ。サンタは世界のどこかにいるとは思うが、うちには来ない。まあ、もう知っていたとは思うけど。
 好きなものを言ってくれた方が間違いがないし、助か…」

 と、ここまで言って、長男のほうに目をやると、ショックを受けて、固まっている長男の姿があった。
(娘のほうは、とうに気づいていたようだが、あわせてくれていたようだ)


 もうちょっと、頑張ればよかったと思っています。 
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クリスマス・イブの思い出

2008-12-24 19:15:20 | 日記
 私のクリスマスの思い出というのは、微妙です。

 「ケーキを食べられる日」
それが、クリスマスのイメージでした。
 もちろん、サンタクロースの存在?は知っていましたが、それは、どこか遠い国(東京)、あるいは、テレビや童話の中の話だと思っていました。

 冬休みが始まり(当時は25日が終業式だった)続いてお正月がやってくるそんな期待と興奮に包まれながら、ケーキを食べるという至福の時でした。ケーキは一年に一度(バースデーケーキは無い)しか食べられないので、それはもう嬉しかった。
 多分、ケーキも生クリームではなかった(バタークリーム?)ので、それほどおいしくなかったと思う。
 それでも、いろいろとデコレートされたケーキをみんなで食べるのは楽しかった。
 不思議とサンタクロースの話は出なかった。兄や友達との会話でも、あまり出てこなかった。福井県は田舎過ぎてサンタクロースは認知されていなかったのだろうか。とにかく、頭の中にはクリスマスプレゼントという概念は無かった。その範囲は私の周りのごく小さいものなのか、もしかすると、福井県全域かもしれない。

 一応釈明すると、うちはプレゼントを買う金銭的余裕はあったはずだ。とにかく、うちの家業は年末が滅茶苦茶忙しい。プレゼントを買う時間的余裕がなかった……はず。
 でも、うちの両親の性格を考えると、余裕があったとしても、プレゼントは無かったと思う。

 まあ、けっこう幸せな気分でした。ただ、心残りは、毎年クリスマス前にお菓子屋さんの店頭に飾られているお菓子の入った長靴(ブーツ)を買ってもらえなかったことだ。
 ちなみに、クリスマスは12月25日なので、ケーキも25日に食べていた。うちには、クリスマス・イブという概念も無かった。
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竜王戦第七局③

2008-12-23 22:17:39 | 将棋

 第6図より、▲9二と△6五銀▲5五銀△7六銀▲6三歩成△同金▲6四銀(飛車取り)△6二飛▲5二香成(第7図)と進む。

 この局面では、①△6七銀成、②△8七歩成、③△5二同飛が有力。
 控え室の研究では①②は先手優勢。③は先手良し、後手良し、互角と評価が分かれていたが、先手良しに傾きつつあった。渡辺竜王は▲5二香成をうっかりしていたそうだ。

 渡辺竜王は③の△5二同飛を選択し、以下▲6三銀不成△5一飛(第8図)と進む。

 ここでA▲5二金とB▲2三歩が有力とされ、どちらも先手良しらしい。
 Aは筋が悪いが、とにかく飛車筋を止めながら飛車をいじめれば良いという手。後手が攻めあいにくるなら先手の手勝ちだが、飛車を見捨てて△2二玉と玉を安定させ粘られる手が先手としては嫌味。
 Bは後手玉を狭めて、後手の粘りを許さない手だ。ただ、後手の飛車筋が通っていて危険を伴う。

 結論は若干Aの方がよかったらしい。羽生名人は慎重に読んでBの▲2三歩を着手。ただ、もちろんこれでも先手良しは変わらない。ただ、そこでの△4二金(第9図)が粘り強い指し手だった。一見、2二への利きを減らして損のようだが、先手からの打ち込む駒を金に限定している(▲2二銀には△3二玉とできる)。また、先手からの▲5二金を防いでいる。

 先手からすると▲2三歩を咎められた気がするのではないだろうか。もう▲5二金は打てないし。
▲2三歩に1時間近く考えたにもかかわらず、再び長考に沈む羽生名人。
 45分ほど考えて、▲6二金。飛車さえ取ってしまえば安全になるという発想だが、飛車筋は通ったままだし、大丈夫なの?
 △6七銀成▲同金に△5八金や△7八金▲同玉△5八飛成の筋が気になるが、それは大丈夫らしい。▲6二金に△5三飛なら▲5四歩で良い。
 BS中継解説の藤井九段と淡路九段がいろいろ考えて、「▲6二金が決め手かも」と言ったので、ほっとした途端、△6五香!(第10図)。

 次に△6七銀成が厳しいので▲6六歩と受ける一手。そこで、△5三飛と逃げられてみると、5四に打つ歩がない。これを先に△5三飛と手順前後すると▲5四歩に△6五香と打っても▲5三歩成で先手の勝ちになる。
 △5三飛に▲6五歩と香を取っても、△8七歩成が厳しく、そこで▲5四香には金2枚取られ、6三にも銀の質駒があるので、先手勝てそうにない(実際は先手が残っているらしい)

 「変調ですね」(淡路九段)
 「こんなことなら、先ほど▲2三歩のところで▲5二金と打ったほうがよかった」(藤井九段)
 「これはちょっと変でしょう」
 「ここ(6二)に金を打つくらいなら、こっち(5二)に打ったほうが(良かった)」

 おいおい、「▲6二金は決め手かも」と言ったところやんか!
 もちろん、大盤での解説は大変なので、両九段を責めるところではないが、羽生ファンとしては「え~、そんなあ!」と叫びたくなる。

 戻って▲6二金では▲6四角が正着で、以下△5三香▲5四歩で先手が良いとのこと。
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竜王戦第七局②

2008-12-22 21:52:42 | 将棋

 ▲4六角により後手飛車を9筋に追いやった第4図。しかし、ぐずぐずしていると逆に後手の銀によってその角は撤退させられてしまう。よって、先手の羽生名人は▲7五歩△同歩▲8六歩△同歩▲8二歩(第5図)と動いていく。

 「普通はない手なんですが」と羽生名人自身も述べていた(BS『囲碁将棋ジャーナル』)が、8六に後手の歩が残り、これは相当な傷となる。その上、歩切れにもなるので、香を取るくらいでは釣り合わないのではないかと心配になる。しかし、第5図を想定しての少し前の▲6五歩から動きなので、予定の行動であるはずだ。第4図になって仕方なく動くのではなく、△3三銀の渡辺新手に対しての構想であるところに、羽生名人の羽生名人たる所以を感じる。(第5図の▲8二歩では▲8五歩も考えられるが、これは後手のペースとなるらしい)

 第5図以下△7三桂▲8一歩成△5二飛▲9一と△5四銀▲6四歩△6二金▲5九香△5五歩▲2四歩△同歩(第6図)と進む。

 途中△5二飛では、当初は△6二飛で後手が良いのではないかと言われていた。しかし、これには▲7七金寄△6四歩▲8六金△6五歩▲7五銀で先手が優勢らしい。
 それで△5二飛と指したが、これには取った香を5九に打った手が、相当味がよく先手が指せるのではないかと言われていた(途中▲6四歩△6二金と利かせたのも巧妙)。しかし、△5五歩と打たれてみると、中央は先手が数的には優位であるはずだが、単純に5五の歩を取ると後手に捌かれてしまって良くない。

 どうするのかと見ていると、▲9二と!
 羽生名人ならあるかもしれないと予想はしていた。が、これはちょっとやそっとでは指せない。何しろ、このあと8二→8三と動かしてやっと意味を成す手である。しかも、やっと8三まで来ても目標の角はそのタイミングで6六角と銀と刺し違えられ、3手が無駄になる公算が高い。
 なので、▲9二とには△6四歩と自然に指して後手良しと見られていた。△6四歩以下▲8二となら△7六歩▲8三と△6六角▲同金△6五桂と進めば、後手快調。先手のと金は8三に置き去りとなる。
 しかし、△6四歩には、そこで▲5五銀と中央に動く手がある。以下△5五同銀▲同角△5七歩▲同香△6五桂(参考図)が想定される。

 ここで、▲6四角と王手で角が出ることができる。つまり▲9二とと△6四歩の手の交換を入れておくことにより、▲6四角が可能になっているのだ。
 「▲9二と」は角取りに動いたのではなく、プレッシャーをかけることにより(本局の場合、相当緩やかなプレッシャーで手待ちの意味が強い)、後手に一手指してもらい、それを利用して反撃するのが狙いだったのだ。

 そこで、渡辺竜王も△6四歩とせず、△6五銀。竜王はこの辺り、苦しいと感じていたと言う。
 羽生優勢。

 通常ありえない傷を残す「▲8六歩」。
 香を取れるが歩切れになり手が遅れる「▲8二歩」。
 間に合いそうにない「▲9二と」。

 確固たる大局観と緻密な読みに基づく大胆な指し手! 羽生将棋の真髄の一端がここにある。(敢えて「一端」と言うところに私のこだわりが(笑))
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竜王戦第七局①

2008-12-21 17:33:58 | 将棋
 世紀の一局となった竜王戦第七局の指し手について言及するのは非常におこがましいのですが、『感想』を述べているということで、大目に見てください。


 第1図、渡辺竜王は第六局に引き続いて、急戦矢倉を採用する。後手番の矢倉が渡辺竜王の過大だと考えられていたが、竜王が最強の挑戦者を迎えて無策であるはずがなく、用意の作戦であったと考えられる。
 第六局、第七局となっての採用は非常に効果的で、策戦家の竜王らしいが、それは考えすぎだろう。第二局は普通の後手番矢倉。後手番ながらも積極的に仕掛けたが、羽生名人に押さえ込まれてしまった。まず、普通に戦ってみたかったのかもしれないし、急戦矢倉の研究が不完全だったのかもしれない。
 第四局は羽生名人が相掛かり戦を選択したため、当然急戦矢倉とはならなかった。この一局は、自玉の打ち歩詰めを読みきって、△8九飛と踏み込んだのが勝因となった。何度もあきらめかけた竜王、「当然のことながら、この一局が大きかった」と述べている。
 そういう経緯で、運命のいたずらか、第六、第七局と急戦矢倉と秘策の登場となった。振り駒で、後手番となったのも、因果を感じる。第六局で完敗を喫した羽生名人が、どういう対策を見せるかも興味深く、序盤から緊迫感が高まる。
 そう言えば、中原16世名人が大山15世名人を破った名人戦は、追い込まれた中原挑戦者が、第六局、第七局と大山名人のお株を奪う振り飛車を連採している。


 △5五同角(第2図)の局面で羽生名人が手を変える。「第六局の▲7九角はあまり面白くなかった」とBS『囲碁将棋ジャーナル』の自戦記解説で述べている。


 第3図、△3三銀の新手。羽生名人が手を変えた直後だけに、渡辺竜王の研究の網にかかっているのではないかと、羽生名人はともかく、私は危惧した。
 この△3三銀は藤井九段の解説によると
「棋は対話なりで、後手が5筋で角を捌きつつ歩の交換を果たしたのだから、先手は2筋の交換をさせてくださいと言ってきたのに対し、いいえ、それは許しませんと、それを拒否した手です。だから、先手としては怒って動いてくるはずです。そうしないと先手の作戦負けになります」
という手だ。
 また、『囲碁将棋ジャーナル』で羽生名人は、
「後手の△3三銀は5五の角の退路を狭めた手で、危険な意味がある」
と、述べている。
 それに加えて、銀が4二から3三に動いたため、中央が薄くなっている。2筋の交換を拒否された先手としては、中央に動きを求めて▲6五歩。以下△9二飛(第4図)まで進む。

 この手順の他に、4八の銀を5七に上がって、じっくり盛り上がるなどの順も考えられた。本譜は是非はともかく、早急な感があり、怒っているのではないかと考えてしまった。
 4八銀の形が第六局を思い出させ、不吉な予感がした。
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竜王戦 勝負を分けたもの(渡辺竜王の強さ)

2008-12-20 23:51:00 | 将棋
 渡辺竜王は強かった。
 佐藤棋王を2年連続退けた時も強いと思ったが、まさか羽生名人が、しかも、3連勝の後、4連敗するとは思わなかった。
 第五局、第六局は羽生名人の出来が悪かったせいもあったが、第四局、最終局は恐ろしいほどの強さを感じさせた。

 渡辺竜王の強さは
①詰みや寄せの有無などの読みが深い
②最新戦法や定跡などの研究や情報に明るい
③「勝ちにくい(易い)形」とか「堅さを優先」とかパターンを考慮し、手の取捨し差し手を選択し組み立てる
④封じ手をするかさせるかどちらの方が得かを考えて、考慮時間を調節するなど、戦略的に勝負を考える
⑤精神的に強い

というようなものが考えられる。特に③と④は特徴的なので、そこに目が行きがちになっていた。
 しかし、やはり①が一番の強さの要素だと感じた。それについて考えていきたいが、その前に大きな疑問がある。

 この七番勝負で渡辺竜王の強さが絶大に証明されたが、順位戦のB1組で停滞している。また、他のタイトル戦に登場するどころか挑戦者決定戦に進出することもままならない。なぜか?
 その大きな要素に、持ち時間の長さが上げられる。もちろん、短時間の将棋でもその強さは発揮されているが、渡辺竜王の真価は二日制タイトル戦によって発揮される。
 しかし、それだけではない。佐藤棋王との竜王戦、そして今期の竜王戦とギリギリに追い込まれないと彼の強さが目覚めないのではないか。
 だとすると、今後もA級に昇級することも、タイトル戦に登場するのも困難のように思える。しかし、今期の竜王戦の経験で、一皮むけて、通常状態に於いてもその強さを発揮できるようになる。または、強さ自体が1ランク上のものになり、フルパワーにならなくとも勝ち抜いていけるということも大いに考えられる。
 羽生ファンとしては後者は特に困るが、渡辺竜王の強さを見てみたい。渡辺×深浦戦も見たい。

 さて、今期の竜王戦で感じた渡辺竜王の強さに話を戻そう。
 今回は③、④はそれほど感じられなかった。逆に、敢えて真正面から羽生名人に挑んでいるように感じた。
 ②については、第六局、第七局に窺えた。第六局の新手△3一玉、第七局の新手△3三銀がそれ。
 最近の渡辺竜王は後手番、特に矢倉戦に苦労をしていた。しかし、竜王戦を迎えて、その課題を克服するよう研究を重ねていたと考えられる。その答が急戦矢倉だった。
 羽生名人は、第六局ではその研究に踏み込みを躊躇し完敗を喫した。第七局はさすがに対応し互角以上の将棋を展開した。

 そして将棋の強さの根幹となる①読みの深さ。特に終盤は鬼神(この場合は棋神と言うべきか)のごときだった。
 第七局に絞って考えると、渡辺新手より未知の局面に突入し、捻り合いが展開された。第四局同様、中盤力(大局観)において優位な羽生名人がリードして終盤に突入した。
 終盤に入ると羽生名人の足取りがほんの少しよろける。これは、渡辺竜王の終盤力を感じている羽生名人がそれを意識して読みが鈍るのか、終盤になる前に優位に立っておくために消耗していたのかもしれない。その両方かも。
 特に最終局は、渡辺竜王の新手も出て、その研究の網を食い破るのにかなりの精力を注いだのではないだろうか。

 終盤は際どく難解で、凄まじい勝負を繰り広げた。秒読みとなり形勢が二転三転した。お互い勝が見えそうな局面もあったが、決めきれない。決めきれないと言うより劣勢になったほうが踏みとどまったと言った方がいいだろう。
 結局、羽生名人の方が力尽きたという気がする。終盤、▲2四飛が敗着となり、代わりに▲4八飛なら羽生名人の勝ちだったというのが結論とされているが、BSのご本人の解説によると、勝ちがあると思うが、まだまだ大変とのこと。
 ▲4八飛と指したとしても、渡辺竜王がややこしい手をひねり出して、最後には渡辺竜王が勝ってしまうような気がする、今回は。
 永世竜王を懸けた大きな勝負であった今棋の七番勝負であるが、タイトルを失うと「ただの九段」になってしまう渡辺竜王のほうが、執念が強かったのではないか。

 執念の差が、最後の最後で勝敗を分けたような気がする。
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