電脳筆写『 心超臨界 』

悲しみは二つの庭を仕切るただの壁にすぎない
( ハリール・ジブラーン )

◆「進歩的文化人」という名の国賊《 久野収——恫喝が得意な権力意識の化身 》

2024-05-23 | 05-真相・背景・経緯
§4-4 戦後の戦争の敵の中にはスターリンの息のかかった共産主義者がいた
◆「進歩的文化人」という名の国賊《 久野収——恫喝が得意な権力意識の化身 》


当時の『思想』は泣く子も黙る、葵(あおい)のご紋章の入った印籠でした。そういう時代のまっただなかにおいて、久野収は、俺は『思想』の編集顧問なんだぞ、と学者や評論家を恫喝したのです。文壇に確乎たる地位を占めていた伊藤整であっても、『思想』に書かせるかどうかの判断は久野収の胸三寸にあるのです。いわんや、これからなんとかして『思想』に拾われたいと願っている論壇二軍の大勢に対して、久野収のこのなにげない一言は、電流のように行きわたったでしょうね。


『悪魔の思想』 「進歩的文化人」という名の国賊12人
( 谷沢永一、クレスト社 (1996/02)、p175 )
「進歩的インテリ」を自称する道化・久野収(くのおさむ)への告発状
第7章 恫喝が得意な権力意識の化身

  久野収(くのおさむ)
  明治43年生まれ。京都帝大卒。治安維持法違反で投獄。元学習院
  大講師。現在、『週刊金曜日』編集委員。左翼ジャーナリズムの
  “奥の院”。

  久野収にも何冊かの著作はありますが、これこそ主要な業績と見な
  しうるまとまった研究はありません。彼の精力はもっぱらふたつの
  方面に注がれました。第一には左翼系出版社の編集者に影響を及ぼ
  しながら進歩的文化人の奥の院に君臨することです。第二にはせっ
  せと座談会に出席して、同座する誰もがまだ読んでいないはずの新
  着の原書を誇示(ひけらか)しながら、仲間である進歩的文化人の連
  中を煽動して、反日的言論の模範例を示して尻を叩くことでした。

■久野収における権勢の築き方

この一件は、表向きは手柄話として美談であるかのように聞こえますが、その奥には、久野収のしたたかな計算がひそんでいます。

今は岩波書店の雑誌『思想』と言ったって誰も後(あと)じさりしませんが、この鼎談(ていだん)が行なわれた昭和39年ごろ、『思想』の権威は絶大であり、最高潮に達していました。言論界(ジャーナリズム)における超一流の晴れ舞台であり、『思想』に一篇の論文が載ったら、それだけでほとんど確実に世に出られたものです。当然のこと、あの人は『思想』に書いたほど実力があるんだからと、どこかの大学から丁重なお呼びの声がかかったでしょう。

当時の『思想』は泣く子も黙る、葵(あおい)のご紋章の入った印籠でした。

そういう時代のまっただなかにおいて、久野収は、俺は『思想』の編集顧問なんだぞ、と学者や評論家を恫喝したのです。「ぜにのないやつぁ俺んとこへこい」(「だまって俺について来い」)と植木等は歌いましたが、久野収の場合は、『思想』に書きたい奴は俺んとこへ来い、なんですね。

文壇に確乎たる地位を占めていた伊藤整であっても、『思想』に書かせるかどうかの判断は久野収の胸三寸にあるのです。いわんや、これからなんとかして『思想』に拾われたいと願っている論壇二軍の大勢に対して、久野収のこのなにげない一言は、電流のように行きわたったでしょうね。

久野収に胡麻を擂(す)ったら首尾よく登場(デビュー)できるかもしれない。その反対にもし片言隻語(へんげんせきご)でも久野の書いたものを批判したり、批判しないまでもひょっとして少しでもご機嫌をそこねたら、もし『思想』の編集者に自分を使ってみようかという気があっても、その編集者が久野収と「いろいろ話をしているうちに」、それは駄目だよ、とあっさり消されてしまうかもしれない。ああ怖ろしや怖ろしや、触らぬ神に祟(たた)りなし。久野収は、こうして権勢を築き上げたのでした。

いちばんの高峯(こうほう)であった『思想』だけではありません。当時、たくさん刊行されていた「進歩的」なさまざまな雑誌の編集陣と、久野収がしょっちゅう「いろいろ話をしている」という噂は、局外者である私の耳にも入ってきておりました。

久野収は左翼雑誌の編集に影響力をおよぼすという隠微な手段を通じて、進歩的文化人の陣営の奥の院に鎮座したのです。彼が傲然として自分こそ進歩的文化人の「先頭」であると放言したのは、以上のような条件に立脚しての自讃でありました。
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