大統領選挙がやっと終わり、8年間続いた与党の政権を野党が奪回した。といってもこの間のアメリカの大統領選挙のことではない。まして、コートジボワールの話でもない。隣国ガーナの大統領選挙の話である。
とにかく見事な、というか凄まじい民主主義であった。1月3日、野党の大統領候補が、有力視されていた与党候補を僅差で破り、新大統領に選出された。ほんとうなら、大統領選挙は12月7日の投票で決着しているはずであった。なんといっても与党(NPP)のアクフォ=アドゥ候補が、前から有力視されていた。現職のクフォー大統領の党であるが、クフォー大統領は3選目になるので出馬できない。それでアクフォ=アドゥ候補を立てた。
第一回投票が12月7日にあったときに、大方の予想を覆し、アクフォ=アドゥ候補の得票は、49.13%に留まった。50%を越えていたら、その時点で決着が付いていたのであったが、規定に従って選挙管理委員会は第二回投票を宣言した。つまり、アクフォ=アドゥ候補(与党NPP)と、ミルズ候補(野党NDC)の2人だけの一騎打ちで、第二回投票が、12月28日に行われた。
第二回投票が開票された。何と、それでも決着が付かない。アクフォ=アドゥ候補(NPP)が49.87%、ミルズ候補(NDC)が50.13%という開票結果であったが、実は投票当日にトラブルがあって投票が実施できなかった選挙区があった。二人の得票差は、わずか2万3千票。その選挙区でちゃんと実施すれば、票数が逆転する可能性が十分ある。
そこで、1月2日に、そのタイン選挙区で投票が行われた。その開票結果を踏まえて、選挙管理委員会は、野党NDCのミルズ候補の逆転勝利を宣言した。
アクフォ=アドゥ候補(NPP):4,480,446票(49.77%)、ミルズ候補(NDC):4,521,032票(50.23%)、という最終結果である。投票率は72.91%。当然ながら、負けたNPP側からは選挙の不正について異議申立てが出た。選挙管理委員会は、この異議申立ても審査して、却下している。
大統領選挙の実現そのものに四苦八苦しているコートジボワールならずとも、アフリカ諸国は、ここまで見事な民主主義が行われたことに、感銘を受けるであろう。そもそも、憲法の規定にしたがって現職のクフォー大統領がちゃんと降りて、出馬しないというところからして、ガーナの民主主義は成熟している。アフリカでは、まず現職大統領が、憲法の改正(改悪)をして権力に居残ろうとするかどうか、から議論がはじまるのが普通だから。
いや、クフォー大統領の前に、1981年のクーデターで政権を握ったローリングス前大統領が、2000年の大統領選挙で、憲法の3選禁止規定を守って出馬しなかった。しかも、ローリングス前大統領の党はその選挙で敗れ、その後8年間も野党の位置に甘んじた。今回、そのローリングス前大統領の政党が、与党に返り咲いた。つまり、政権交代の教科書的な実践である。
コートジボワールのバグボ大統領は、ミルズ新大統領に早速祝辞を送っている。
「貴大統領の選挙による勝利は、全ての選挙監視団により認定され、貴国の民主主義を確固たるものとし、そしてアフリカに栄誉を与えるものです。ガーナ国民が貴大統領に委ねた任務を、見事に果たされることを祈念するとともに、両国の関係強化にむけた私の意欲をお伝えします。」
コートジボワールの新聞も、賛辞を惜しまない。「友愛朝報(Fraternité Matin)」は、昨日(5日)の社説で次の通り述べている。
「年頭にあたって、ガーナの選挙に感謝する。この選挙で、アフリカの民主主義は何ら世界に恥じないものであることが示せたからである。選ばれた新大統領は何ら傲慢な演説をしなかった。敗れた候補者も敗北を認めて相手を祝福した。ガーナを誇らしく思わないわけにはいかない。とりわけ、ギニアで軍靴の騒音のもとに政権交代が行われた後だけに、そうである。エンクルマの国は、我々に民主主義の素晴らしい手本を示してくれた。我々も、何回も延期が重ねられた大統領選挙に、今年こそ打って出なければならない。」
これほど僅差の大統領選挙の結果であると、ガーナの政治を不安定にするかもしれない、という悲観論もある。新大統領が、政権を担うために十分な国民の信任を得ていないという見方、ガーナの世論の分裂を示したという見方である。そういう側面については、もちろん十分注意して見ていかなければならない。民主主義の成否は、選挙実施の問題で終わりではなく、むしろ選挙結果を人々が受け入れるか、新しい政権が安定した政治を行えるか、という点においても問われなければならない。
でも、とにもかくにもガーナにおいて、大統領選挙が粛々と行われ、政権交代が実現しているということは賞賛すべきことであり、アフリカでは大変勇気づけられることだ。コートジボワールの人々は誰しも、ガーナの民主主義の力強さに、大いに励まされたはずである。「友愛朝報」が訴えるとおり、隣国の示した民主主義の手本にならって、今年こそコートジボワールが大統領選挙を実現することを期待したい。
とにかく見事な、というか凄まじい民主主義であった。1月3日、野党の大統領候補が、有力視されていた与党候補を僅差で破り、新大統領に選出された。ほんとうなら、大統領選挙は12月7日の投票で決着しているはずであった。なんといっても与党(NPP)のアクフォ=アドゥ候補が、前から有力視されていた。現職のクフォー大統領の党であるが、クフォー大統領は3選目になるので出馬できない。それでアクフォ=アドゥ候補を立てた。
第一回投票が12月7日にあったときに、大方の予想を覆し、アクフォ=アドゥ候補の得票は、49.13%に留まった。50%を越えていたら、その時点で決着が付いていたのであったが、規定に従って選挙管理委員会は第二回投票を宣言した。つまり、アクフォ=アドゥ候補(与党NPP)と、ミルズ候補(野党NDC)の2人だけの一騎打ちで、第二回投票が、12月28日に行われた。
第二回投票が開票された。何と、それでも決着が付かない。アクフォ=アドゥ候補(NPP)が49.87%、ミルズ候補(NDC)が50.13%という開票結果であったが、実は投票当日にトラブルがあって投票が実施できなかった選挙区があった。二人の得票差は、わずか2万3千票。その選挙区でちゃんと実施すれば、票数が逆転する可能性が十分ある。
そこで、1月2日に、そのタイン選挙区で投票が行われた。その開票結果を踏まえて、選挙管理委員会は、野党NDCのミルズ候補の逆転勝利を宣言した。
アクフォ=アドゥ候補(NPP):4,480,446票(49.77%)、ミルズ候補(NDC):4,521,032票(50.23%)、という最終結果である。投票率は72.91%。当然ながら、負けたNPP側からは選挙の不正について異議申立てが出た。選挙管理委員会は、この異議申立ても審査して、却下している。
大統領選挙の実現そのものに四苦八苦しているコートジボワールならずとも、アフリカ諸国は、ここまで見事な民主主義が行われたことに、感銘を受けるであろう。そもそも、憲法の規定にしたがって現職のクフォー大統領がちゃんと降りて、出馬しないというところからして、ガーナの民主主義は成熟している。アフリカでは、まず現職大統領が、憲法の改正(改悪)をして権力に居残ろうとするかどうか、から議論がはじまるのが普通だから。
いや、クフォー大統領の前に、1981年のクーデターで政権を握ったローリングス前大統領が、2000年の大統領選挙で、憲法の3選禁止規定を守って出馬しなかった。しかも、ローリングス前大統領の党はその選挙で敗れ、その後8年間も野党の位置に甘んじた。今回、そのローリングス前大統領の政党が、与党に返り咲いた。つまり、政権交代の教科書的な実践である。
コートジボワールのバグボ大統領は、ミルズ新大統領に早速祝辞を送っている。
「貴大統領の選挙による勝利は、全ての選挙監視団により認定され、貴国の民主主義を確固たるものとし、そしてアフリカに栄誉を与えるものです。ガーナ国民が貴大統領に委ねた任務を、見事に果たされることを祈念するとともに、両国の関係強化にむけた私の意欲をお伝えします。」
コートジボワールの新聞も、賛辞を惜しまない。「友愛朝報(Fraternité Matin)」は、昨日(5日)の社説で次の通り述べている。
「年頭にあたって、ガーナの選挙に感謝する。この選挙で、アフリカの民主主義は何ら世界に恥じないものであることが示せたからである。選ばれた新大統領は何ら傲慢な演説をしなかった。敗れた候補者も敗北を認めて相手を祝福した。ガーナを誇らしく思わないわけにはいかない。とりわけ、ギニアで軍靴の騒音のもとに政権交代が行われた後だけに、そうである。エンクルマの国は、我々に民主主義の素晴らしい手本を示してくれた。我々も、何回も延期が重ねられた大統領選挙に、今年こそ打って出なければならない。」
これほど僅差の大統領選挙の結果であると、ガーナの政治を不安定にするかもしれない、という悲観論もある。新大統領が、政権を担うために十分な国民の信任を得ていないという見方、ガーナの世論の分裂を示したという見方である。そういう側面については、もちろん十分注意して見ていかなければならない。民主主義の成否は、選挙実施の問題で終わりではなく、むしろ選挙結果を人々が受け入れるか、新しい政権が安定した政治を行えるか、という点においても問われなければならない。
でも、とにもかくにもガーナにおいて、大統領選挙が粛々と行われ、政権交代が実現しているということは賞賛すべきことであり、アフリカでは大変勇気づけられることだ。コートジボワールの人々は誰しも、ガーナの民主主義の力強さに、大いに励まされたはずである。「友愛朝報」が訴えるとおり、隣国の示した民主主義の手本にならって、今年こそコートジボワールが大統領選挙を実現することを期待したい。
日本でも政権交代は、必須だと思う訳です。
http://blog.goo.ne.jp/samu_one