8月6日早朝にロシア西部クルスク州に侵攻したウクライナ軍は一気に攻勢をかける。
オレクサンドル・シルスキー総司令官は20日、クルスク州への侵攻は28〜35キロメートル前進、93集落を含む1263平方キロメートルを占領したという。
旧態依然とした閉鎖的な体質を引きずるクレムリン、ロシア軍・情報機関は戦場の変化についていけない。英紙デーリー・テレグラフ(8月2日)は22億8000万円もするMi-8医療救護ヘリが7月31日、ウクライナ軍の小型ドローンによって撃墜されたという未確認情報を伝えている。
前線から50キロメートル近く離れたロシア支配地域のドネツク州で、爆発物を搭載したドローンが離陸するヘリにぶつかり、墜落・炎上させ乗員全員が死亡。ウクライナ軍側の操縦者はバーチャルリアリティヘッドセットを使ってクアッドコプター型ドローンをターゲットに誘導したとみられている。
ウクライナ軍がドローンを使ってロシア軍ヘリを攻撃する実験を始めたのは昨年9月のこと。キーウ・インディペンデント紙は今月7日、ウクライナ軍のドローンが露クルスク州上空でロシア軍Mi-28攻撃ヘリに命中したとウクライナ保安局(SBU)筋の話として報じた。
その2日後、ドローンは別のMi-8輸送ヘリも撃墜。
ノルウェー軍司令官ルナール・スパンスヴォル氏は、英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)の論文集に「SNSとクラウドファンディングとドローンの武器化」と題し「デジタル時代のパンドラの箱が開き、戦争の性格に予期せぬ変化がもたらされた」と指摘しているのだそうです。
SNS、クラウドファンディング、市販ドローンという三種の神器が現代の戦争とその性格に変化をもたらし、強力な「三位一体」へと収れんした。ウクライナは西側諸国から武器弾薬だけでなく、大量の市販ドローンを受け取り、武器化していると、国際ジャーナリスト・木村正人氏。
「戦争の性格は時代の技術的・社会的・文化的・政治的変化によって形成され、絶えず進化している。」
ドローンの多くは高火力兵器を搭載し、以前はハイエンドの精密誘導弾に限られていた精度で敵に投下されると、スパンスヴォル氏。
「クラウドファンディングの規模と範囲は過去に例を見ないものであり、戦争の金融兵器に急成長した。これは市販ドローンの大規模な取得と武器化に拍車をかけた。最も普及しているドローンの単価は350~1000ドルとかなり安価である」とスパンスヴォル氏。
ウクライナへの“特別軍事作戦”は「邪悪な」西側諸国からロシアを守るため、というウラジーミル・プーチン露大統領のロジックは破綻している。クルスク州侵攻とモスクワへの大量のドローン襲来はプーチンの権威を足元から揺さぶっていると、木村氏。
ゼレンスキー大統領も19日「積極的で予防的な防衛はロシアのテロに対する最も効果的な対抗手段であり、侵略国家に大きな困難をもたらしている。スームィ州の国境地帯からロシア軍をほぼ排除したことは作戦目標、戦術目標の一つ」と述べた。
停戦交渉に向け、ウクライナが交渉条件を一歩獲得と言えるのでしょうか。
# 冒頭の画像は、ロシアのグデルメスにあるロシア特殊部隊大学で隊員の実践訓練を視察するプーチン大統領
この花の名前は、センニチコウ ファイヤーワークス
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遊爺さんの写真素材 - PIXTA
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オレクサンドル・シルスキー総司令官は20日、クルスク州への侵攻は28〜35キロメートル前進、93集落を含む1263平方キロメートルを占領したという。
プーチンが動揺、ウクライナ軍の「SNS」「クラウドファンディング」「市販ドローン」による三位一体攻勢 | JBpress (ジェイビープレス) 2024.8.22(木) 国際ジャーナリスト・木村正人
「モスクワをドローンで攻撃しようとした最大の試み」
[ロンドン発]ウクライナ軍は8月20日深夜から21日未明にかけ、ロシアに広範囲なドローン(無人航空機)攻撃を仕掛けた。ロシア国防省防空部隊はクレムリンの南約40キロメートル上空やウクライナと国境を接するブリャンスク州上空でドローンを撃墜した。
モスクワのセルゲイ・ソビャニン市長は21日午前1時すぎ、メッセージアプリのテレグラムに「ポドリスク地区(モスクワから南へ40キロメートル)の防空部隊はモスクワに向かって飛来したドローンによる攻撃を撃退した」と投稿した。
それによると、ドローンの破片が落下した現場では損害や死傷者は出ていない。ポドルスク市街地でモスクワに向かって飛行していた2機のドローンを防空部隊が撃墜。ドローン攻撃に対して階層化された防空システムにより計10機を撃墜、ウクライナ軍の攻撃をすべて防いだ。
昨年9月のモスクワ市長選で77%という圧倒的な得票率で3選を果たしたソビャニン市長は「モスクワをドローンで攻撃しようとした最大の試みの一つだ。救急隊が現場で活動している。われわれは状況を監視し続けている」と報告した。
「93集落を含む1263平方キロメートルを占領」
ブリャンスク州のアレクサンドル・ボゴマズ知事も21日午前零時半、テレグラムに「ロシア国防省防空部隊がブリャンスク州上空で敵のドローンを破壊し続けている。8機が探知され、撃墜された。死傷者や損害は出ていない。作戦および緊急サービスは機能している」と投稿した。
「キーウ政権はドローンの助けを借りて私たちの地域に大規模なテロ攻撃を行った。昨日の夕方以降、計23機のドローンが迎撃され、破壊された。勇敢な防衛者たちのプロ意識のおかげで、死傷者や被害はなく、すべての攻撃は撃退され、全標的が破壊された」(ボゴマズ知事)
ウクライナと国境を接するロストフ州のワシリー・ゴルベフ知事は20日午後11時55分「ロストフ州西部の防空部隊がミサイルを撃墜した。死傷者や破片落下による被害はない」と投稿した。
8月6日早朝にロシア西部クルスク州に侵攻したウクライナ軍は一気に攻勢をかける。
ウクライナ軍のオレクサンドル・シルスキー総司令官は20日「作戦上および戦略上の状況は依然困難だ。長さ約1040キロメートルの前線の一部で戦闘を行っている」と説明。クルスク州への侵攻は28〜35キロメートル前進、93集落を含む1263平方キロメートルを占領したという。
ロシア軍のMi-8ヘリを小型ドローンで撃墜
シルスキー総司令官はクルスク州侵攻作戦について「安全な緩衝地帯をつくり、ロシア領からの砲撃を阻止、敵を出し抜くことを目的として実施されている」と語る。15日にはエドゥアルド・モスカリョフ少将を司令官とする軍司令官事務所をクルスク州に設置した。
シルスキー総司令官は「クルスク州におけるウクライナ軍の前進は、ロシア軍がウクライナの前線からクルスク州に不特定部隊の一部を再配置するよう圧力をかけている。ウクライナにおけるロシア軍の攻勢のテンポや見通しに影響を与える可能性がある」と位置づける。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領も19日「積極的で予防的な防衛はロシアのテロに対する最も効果的な対抗手段であり、侵略国家に大きな困難をもたらしている。スームィ州の国境地帯からロシア軍をほぼ排除したことは作戦目標、戦術目標の一つ」と述べた。
旧態依然とした閉鎖的な体質を引きずるクレムリン、ロシア軍・情報機関は戦場の変化についていけない。英紙デーリー・テレグラフ(8月2日)は22億8000万円もするMi-8医療救護ヘリが7月31日、ウクライナ軍の小型ドローンによって撃墜されたという未確認情報を伝えている。
ヘリを撃墜するのにドローンが使われるのは想定外
前線から50キロメートル近く離れたロシア支配地域のドネツク州で、爆発物を搭載したドローンが離陸するヘリにぶつかり、墜落・炎上させ乗員全員が死亡。ウクライナ軍側の操縦者はバーチャルリアリティヘッドセットを使ってクアッドコプター型ドローンをターゲットに誘導したとみられている。
ウクライナ軍がドローンを使ってロシア軍ヘリを攻撃する実験を始めたのは昨年9月のこと。キーウ・インディペンデント紙は今月7日、ウクライナ軍のドローンが露クルスク州上空でロシア軍Mi-28攻撃ヘリに命中したとウクライナ保安局(SBU)筋の話として報じた。
その2日後、ドローンは別のMi-8輸送ヘリも撃墜。クルスク州侵攻作戦に合わせSBUの特殊作戦センター「A」によって実行されたという。ウクライナ戦争では攻撃・監視用ドローンがいたるところで車両、部隊、防衛陣地を標的にしているが、空中のヘリが撃墜されるのは初めて。
ロシアのヘリコプターメーカーはヘリがドローン攻撃に対し脆弱である可能性を認め、ヘリのドローン対策を強化するためのアップグレードに取り組んでいる。2年半前にウクライナ戦争が始まった時、軍用ヘリを撃墜するのにドローンが使われるとは想定もしていなかった。
「デジタル時代のパンドラの箱が開いた」
ノルウェー軍司令官ルナール・スパンスヴォル氏は英シンクタンク、英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)の論文集に「SNSとクラウドファンディングとドローンの武器化」と題し「デジタル時代のパンドラの箱が開き、戦争の性格に予期せぬ変化がもたらされた」と指摘している。
SNS、クラウドファンディング、市販ドローンという三種の神器が現代の戦争とその性格に変化をもたらし、強力な「三位一体」へと収れんした。ウクライナは西側諸国から武器弾薬だけでなく、大量の市販ドローンを受け取り、武器化している。
「戦争の性格は時代の技術的・社会的・文化的・政治的変化によって形成され、絶えず進化している。SNSの接続性とオンライン決済システムの効率化によってグローバルな水平ネットワークが出現し、民間人と兵士がつながるようになった」
スパンスヴォル氏によると、ドローンの多くは高火力兵器を搭載し、以前はハイエンドの精密誘導弾に限られていた精度で敵に投下される。その効果は記録され、SNSを通じてほぼリアルタイムで世界中の視聴者に届けられ、継続的な財政支援の強固なサイクルを生み出す。
「クラウドファンディングは戦争の金融兵器に急成長した」
「クラウドファンディングの規模と範囲は過去に例を見ないものであり、戦争の金融兵器に急成長した。これは市販ドローンの大規模な取得と武器化に拍車をかけた。最も普及しているドローンの単価は350~1000ドルとかなり安価である」とスパンスヴォル氏はいう。
ウクライナへの“特別軍事作戦”は「邪悪な」西側諸国からロシアを守るため、というウラジーミル・プーチン露大統領のロジックは破綻している。クルスク州侵攻とモスクワへの大量のドローン襲来はプーチンの権威を足元から揺さぶっている。
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【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
「モスクワをドローンで攻撃しようとした最大の試み」
[ロンドン発]ウクライナ軍は8月20日深夜から21日未明にかけ、ロシアに広範囲なドローン(無人航空機)攻撃を仕掛けた。ロシア国防省防空部隊はクレムリンの南約40キロメートル上空やウクライナと国境を接するブリャンスク州上空でドローンを撃墜した。
モスクワのセルゲイ・ソビャニン市長は21日午前1時すぎ、メッセージアプリのテレグラムに「ポドリスク地区(モスクワから南へ40キロメートル)の防空部隊はモスクワに向かって飛来したドローンによる攻撃を撃退した」と投稿した。
それによると、ドローンの破片が落下した現場では損害や死傷者は出ていない。ポドルスク市街地でモスクワに向かって飛行していた2機のドローンを防空部隊が撃墜。ドローン攻撃に対して階層化された防空システムにより計10機を撃墜、ウクライナ軍の攻撃をすべて防いだ。
昨年9月のモスクワ市長選で77%という圧倒的な得票率で3選を果たしたソビャニン市長は「モスクワをドローンで攻撃しようとした最大の試みの一つだ。救急隊が現場で活動している。われわれは状況を監視し続けている」と報告した。
「93集落を含む1263平方キロメートルを占領」
ブリャンスク州のアレクサンドル・ボゴマズ知事も21日午前零時半、テレグラムに「ロシア国防省防空部隊がブリャンスク州上空で敵のドローンを破壊し続けている。8機が探知され、撃墜された。死傷者や損害は出ていない。作戦および緊急サービスは機能している」と投稿した。
「キーウ政権はドローンの助けを借りて私たちの地域に大規模なテロ攻撃を行った。昨日の夕方以降、計23機のドローンが迎撃され、破壊された。勇敢な防衛者たちのプロ意識のおかげで、死傷者や被害はなく、すべての攻撃は撃退され、全標的が破壊された」(ボゴマズ知事)
ウクライナと国境を接するロストフ州のワシリー・ゴルベフ知事は20日午後11時55分「ロストフ州西部の防空部隊がミサイルを撃墜した。死傷者や破片落下による被害はない」と投稿した。
8月6日早朝にロシア西部クルスク州に侵攻したウクライナ軍は一気に攻勢をかける。
ウクライナ軍のオレクサンドル・シルスキー総司令官は20日「作戦上および戦略上の状況は依然困難だ。長さ約1040キロメートルの前線の一部で戦闘を行っている」と説明。クルスク州への侵攻は28〜35キロメートル前進、93集落を含む1263平方キロメートルを占領したという。
ロシア軍のMi-8ヘリを小型ドローンで撃墜
シルスキー総司令官はクルスク州侵攻作戦について「安全な緩衝地帯をつくり、ロシア領からの砲撃を阻止、敵を出し抜くことを目的として実施されている」と語る。15日にはエドゥアルド・モスカリョフ少将を司令官とする軍司令官事務所をクルスク州に設置した。
シルスキー総司令官は「クルスク州におけるウクライナ軍の前進は、ロシア軍がウクライナの前線からクルスク州に不特定部隊の一部を再配置するよう圧力をかけている。ウクライナにおけるロシア軍の攻勢のテンポや見通しに影響を与える可能性がある」と位置づける。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領も19日「積極的で予防的な防衛はロシアのテロに対する最も効果的な対抗手段であり、侵略国家に大きな困難をもたらしている。スームィ州の国境地帯からロシア軍をほぼ排除したことは作戦目標、戦術目標の一つ」と述べた。
旧態依然とした閉鎖的な体質を引きずるクレムリン、ロシア軍・情報機関は戦場の変化についていけない。英紙デーリー・テレグラフ(8月2日)は22億8000万円もするMi-8医療救護ヘリが7月31日、ウクライナ軍の小型ドローンによって撃墜されたという未確認情報を伝えている。
ヘリを撃墜するのにドローンが使われるのは想定外
前線から50キロメートル近く離れたロシア支配地域のドネツク州で、爆発物を搭載したドローンが離陸するヘリにぶつかり、墜落・炎上させ乗員全員が死亡。ウクライナ軍側の操縦者はバーチャルリアリティヘッドセットを使ってクアッドコプター型ドローンをターゲットに誘導したとみられている。
ウクライナ軍がドローンを使ってロシア軍ヘリを攻撃する実験を始めたのは昨年9月のこと。キーウ・インディペンデント紙は今月7日、ウクライナ軍のドローンが露クルスク州上空でロシア軍Mi-28攻撃ヘリに命中したとウクライナ保安局(SBU)筋の話として報じた。
その2日後、ドローンは別のMi-8輸送ヘリも撃墜。クルスク州侵攻作戦に合わせSBUの特殊作戦センター「A」によって実行されたという。ウクライナ戦争では攻撃・監視用ドローンがいたるところで車両、部隊、防衛陣地を標的にしているが、空中のヘリが撃墜されるのは初めて。
ロシアのヘリコプターメーカーはヘリがドローン攻撃に対し脆弱である可能性を認め、ヘリのドローン対策を強化するためのアップグレードに取り組んでいる。2年半前にウクライナ戦争が始まった時、軍用ヘリを撃墜するのにドローンが使われるとは想定もしていなかった。
「デジタル時代のパンドラの箱が開いた」
ノルウェー軍司令官ルナール・スパンスヴォル氏は英シンクタンク、英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)の論文集に「SNSとクラウドファンディングとドローンの武器化」と題し「デジタル時代のパンドラの箱が開き、戦争の性格に予期せぬ変化がもたらされた」と指摘している。
SNS、クラウドファンディング、市販ドローンという三種の神器が現代の戦争とその性格に変化をもたらし、強力な「三位一体」へと収れんした。ウクライナは西側諸国から武器弾薬だけでなく、大量の市販ドローンを受け取り、武器化している。
「戦争の性格は時代の技術的・社会的・文化的・政治的変化によって形成され、絶えず進化している。SNSの接続性とオンライン決済システムの効率化によってグローバルな水平ネットワークが出現し、民間人と兵士がつながるようになった」
スパンスヴォル氏によると、ドローンの多くは高火力兵器を搭載し、以前はハイエンドの精密誘導弾に限られていた精度で敵に投下される。その効果は記録され、SNSを通じてほぼリアルタイムで世界中の視聴者に届けられ、継続的な財政支援の強固なサイクルを生み出す。
「クラウドファンディングは戦争の金融兵器に急成長した」
「クラウドファンディングの規模と範囲は過去に例を見ないものであり、戦争の金融兵器に急成長した。これは市販ドローンの大規模な取得と武器化に拍車をかけた。最も普及しているドローンの単価は350~1000ドルとかなり安価である」とスパンスヴォル氏はいう。
ウクライナへの“特別軍事作戦”は「邪悪な」西側諸国からロシアを守るため、というウラジーミル・プーチン露大統領のロジックは破綻している。クルスク州侵攻とモスクワへの大量のドローン襲来はプーチンの権威を足元から揺さぶっている。
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【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
旧態依然とした閉鎖的な体質を引きずるクレムリン、ロシア軍・情報機関は戦場の変化についていけない。英紙デーリー・テレグラフ(8月2日)は22億8000万円もするMi-8医療救護ヘリが7月31日、ウクライナ軍の小型ドローンによって撃墜されたという未確認情報を伝えている。
前線から50キロメートル近く離れたロシア支配地域のドネツク州で、爆発物を搭載したドローンが離陸するヘリにぶつかり、墜落・炎上させ乗員全員が死亡。ウクライナ軍側の操縦者はバーチャルリアリティヘッドセットを使ってクアッドコプター型ドローンをターゲットに誘導したとみられている。
ウクライナ軍がドローンを使ってロシア軍ヘリを攻撃する実験を始めたのは昨年9月のこと。キーウ・インディペンデント紙は今月7日、ウクライナ軍のドローンが露クルスク州上空でロシア軍Mi-28攻撃ヘリに命中したとウクライナ保安局(SBU)筋の話として報じた。
その2日後、ドローンは別のMi-8輸送ヘリも撃墜。
ノルウェー軍司令官ルナール・スパンスヴォル氏は、英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)の論文集に「SNSとクラウドファンディングとドローンの武器化」と題し「デジタル時代のパンドラの箱が開き、戦争の性格に予期せぬ変化がもたらされた」と指摘しているのだそうです。
SNS、クラウドファンディング、市販ドローンという三種の神器が現代の戦争とその性格に変化をもたらし、強力な「三位一体」へと収れんした。ウクライナは西側諸国から武器弾薬だけでなく、大量の市販ドローンを受け取り、武器化していると、国際ジャーナリスト・木村正人氏。
「戦争の性格は時代の技術的・社会的・文化的・政治的変化によって形成され、絶えず進化している。」
ドローンの多くは高火力兵器を搭載し、以前はハイエンドの精密誘導弾に限られていた精度で敵に投下されると、スパンスヴォル氏。
「クラウドファンディングの規模と範囲は過去に例を見ないものであり、戦争の金融兵器に急成長した。これは市販ドローンの大規模な取得と武器化に拍車をかけた。最も普及しているドローンの単価は350~1000ドルとかなり安価である」とスパンスヴォル氏。
ウクライナへの“特別軍事作戦”は「邪悪な」西側諸国からロシアを守るため、というウラジーミル・プーチン露大統領のロジックは破綻している。クルスク州侵攻とモスクワへの大量のドローン襲来はプーチンの権威を足元から揺さぶっていると、木村氏。
ゼレンスキー大統領も19日「積極的で予防的な防衛はロシアのテロに対する最も効果的な対抗手段であり、侵略国家に大きな困難をもたらしている。スームィ州の国境地帯からロシア軍をほぼ排除したことは作戦目標、戦術目標の一つ」と述べた。
停戦交渉に向け、ウクライナが交渉条件を一歩獲得と言えるのでしょうか。
# 冒頭の画像は、ロシアのグデルメスにあるロシア特殊部隊大学で隊員の実践訓練を視察するプーチン大統領
この花の名前は、センニチコウ ファイヤーワークス
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