中国は、中露安全保障会議(8月於モスクワ)で戴秉国国務委員が北方領土と尖閣での共同歩調を持ち掛けましたが、ロシアは反応を示していないことについて触れていました。
ロシアは、更に一歩踏み込んで、プーチン大統領の側近中の側近で安全保障会議書記のパトルシェフ氏を日本訪問させ、「日本国外務省とロシア連邦安全保障会議事務局との間の覚書」に署名させました。つまり、中国と安易に共同歩調とるのではなく、日本との安全保障協議を進めるとし中国を牽制する行動を示したのです。
中露関係の歴史は、互いに協調して米国に対抗しますが、双方で対立する時もあり、そんな時は、劣勢の側が日本に接近して相手を牽制してきていました。
GDP世界第二位の経済大国に成長し、ロシアを大きく上回った中国の海洋覇権拡大状況に警戒心を持つロシアが、中国をけん制したようです。
尖閣 ロシアが中国と徒党を組まない訳は - 遊爺雑記帳
尖閣諸島をめぐって日中の対立が深まるなか、ロシアのプーチン大統領がとても興味深い動きをしている。「側近中の側近」として知られる大物政治家を日本に送り込み、日ロ協力を強めようとしているのだ。
その人の名はパトルシェフ氏(61)。22日から25日まで日本に滞在し、日本側の要人と会談する。彼の肩書はロシアの安全保障会議書記。あえていえば、米大統領の国家安保担当補佐官のような存在といえる。
だが、重要なのは肩書ではなく、彼とプーチン氏の極めて親密なつながりだ。ロシアに詳しい安保関係者は指摘する。
■プーチン氏の正真正銘の側近
「パトルシェフ氏はプーチン氏と家族ぐるみで付き合い、唯一、本当に腹を割って話ができる正真正銘の側近だ。しかも、彼が外遊することはめったにない。プーチン氏が彼を日本に派遣するのは、ただの政策協議だけが目的ではないはずだ」
<中略>
日本では衆院選が近づき、野田政権の基盤はぐらついている。尖閣では中国、竹島では韓国から攻勢を受け、日本の外交も危機にある。そんな日本に、めったに外遊しないパトルシェフ氏が乗り込んでくる意図はどこにあるのか。
<中略>
■日本との安保関係強化が目的
8月下旬には、パトルシェフ氏はモスクワで中国の戴秉国国務委員と会い、戦略安保協議にのぞんだ。尖閣をめぐる日中対立が激しくなるなか、中国がロシアに共闘を呼びかけたのではないかとの観測も流れた。
しかし、パトルシェフ氏の来日はむしろ、日本との安全保障関係を強めることが目的だという。日ロ関係筋は解説する。
「彼の来日のねらいは、日本との海洋安全保障協力を加速することにある。日ロは7月の外相会談、9月の首脳会談で安保協力を進めることで一致した。それを後押しするつもりだ」
だが、これだけなら、パトルシェフ氏がわざわざ来日する必要はない。すでに首脳会談でも安保協力の推進で一致しているため、あとは実務レベルに任せればすむからだ。こんな疑問について、別の日ロ関係筋は解き明かす。
■海洋安保での日本との協力演出へ
「パトルシェフ氏の訪日は中国を意識したものだ。海軍力を強め、東シナ海でも攻勢を強める中国の存在は、ロシアにとっても懸念材料になっている。そこで、プーチン氏は中国をけん制するため、懐刀を日本に送り、海洋安保で日本と協力する姿勢を演出しようとしている」
そうしたロシアの狙いが本当だとすれば、日本にとっては必ずしも悪い話ではない。中ロが対日圧力で連携し、領土で揺さぶりを強めてくるよりはずっとましだからである。
ただ、窮地の日本を助けようと考えるほど、ロシアはお人よしではないだろう。彼らの意図を見極めながら、日ロ協力の歯車を回していく周到さが求められる。
早速中国が反応し、情報収集に奔走しているのだそうです。
日本とロシア両政府は10月下旬、新たな覚書を交わした。一見すると、何の変哲もなさそうな合意文書だが、中国がこれに強い関心を寄せているとされる。
文書の名前は「日本国外務省とロシア連邦安全保障会議事務局との間の覚書」。玄葉光一郎外相が先月23日、来日したパトルシェフ安全保障会議書記と会談し、署名した。
■ロシアとの間で安全保障協力を強化
ロシア側の要望もあって、その内容は公表されていない。両国関係者によると、日ロの安全保障協力を強めていく方針が盛り込まれている。
その具体策を話し合うため、「日本外務省―ロシア安保会議事務局」による対話を進めていくことも決まったという。
日本には「安保会議」に当たる組織がないため、パトルシェフ氏の対話相手が誰になるのかはっきりしていなかった。覚書によってこの問題は解消され、今後は日本の外相がパトルシェフ氏と安保問題について協議していくことになる。
この合意に注目しているのが、ロシアと蜜月の関係にある中国だ。さっそく情報収集に動いているとの情報もある。
日ロは安保協力の推進について、9月の首脳会談でも合意している。覚書はその延長線にあるもので、さほど目新しくはない。それなのになぜ、中国は反応するのか。
その理由は覚書の中身よりも、それに署名した人物にある。玄葉外相との署名式にのぞんだパトルシェフ氏は、プーチン大統領の「側近中の側近」。プーチン氏が心を許す、数少ない腹心とさえ言われる。
■プーチン氏に直結するチャネル確保
そう考えると、中国が関心を抱く理由も分かる。日本政府は今回の覚書によって、パトルシェフ氏という、プーチン氏に直結する対話チャネルを確保したことになる。尖閣諸島をめぐり、日本と激しく対立する中国からすれば、こうした日ロ接近の動きは気になるところだろう。
日本としてはロシアとの協力を進めることで、中ロが領土をめぐり、対日圧力で共闘するのを防ぎたい考えだ。一方、中国軍の増強に内心、懸念を抱いているロシアとしても、日本との協力はマイナスではない。
そうした思惑が一致してか、玄葉氏とパトルシェフ氏は会談で、海上自衛隊とロシア海軍の共同訓練や防衛対話を加速することでも足並みをそろえた。
日本側によれば、玄葉氏は「地域の安保環境は一層激しさを増している」と発言。尖閣をめぐる日中対立についてもふれた可能性がある。
11月にはロシアからシュヴァロフ第一副首相が来日。12月には日本の首相が訪ロする日程も固まっている。年末にかけて日中ロの駆け引きがさらに激しくなりそうだ。
ちょっと面白い展開になってきましたね。
メドベージェフ氏の時は、中国との共闘に積極的でしたが、流石はプーチン、読みが深く広いですね。
毎度の念仏のようになっている話で恐縮ですが、地下資源の輸出で目覚ましい経済成長を遂げているロシアですが、主力天然ガス田の枯渇が近づき、極東や北極圏での開発を迫られ、その技術と外資の支援及び、販売先を必要としている苦しい台所事情を抱えているのです。
開発支援と販路の重要パートナーが日本なのです。
世界が注目するアジア市場の成長。ASEMでは、欧州も進出に積極姿勢を示していますが、ロシアも南下を目指しています。中国と米国が覇を争っていますが、遅れをとったロシアも虎視眈々と進出を狙っていますが、西太平洋、東シナ海、南シナ海での中国の覇権拡大と、米を旗頭にする中国包囲網との中に割り込んで、存在感を示す必要があります。
また、北極海への進出意欲を示す中国への備えも必要です。
経済力では差を付けられ、軍事力でも急伸する中国への警戒感は、ロシアにとって強まってきているのは当然です。
日本は、安易に開発協力話に飛びつくのではなく、北方領土と平和条約、エネルギー安全保障(欧州は脱露の動き & サハリン1, 2開発での煮え湯)をしっかり考えた国益重視の対応が必要で、待てばその時が来ると言ってきましたが、兆しが見えてきたようです。
民主党政府で対応できるか不安ですが、大事な局面をしっかり乗り切っていただけることを願っています。
# 冒頭の画像は、玄葉外相とパトルシェフ安全保障会議書記
この花の名前は、オルラヤ
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