遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

中国はハリス氏とトランプ氏のどちらが嫌か

2024-08-27 01:33:55 | 中国 全般
 両者互角の米大統領選挙戦は、11月までにほんの小さな変化でも票が動く。民主党のハリス副大統領か、共和党のトランプ前大統領なのか。
 欧州の政治指導者たちは政策の予測可能な「ハリス勝利」を期待し、ウクライナ東部の占領で戦争の決着を狙うロシアのプーチン大統領は「トランプ勝利」を望む―との見方が米欧のアナリストには多い。
 中国の習近平国家主席は、大統領選が白熱して両陣営が「どちらが中国により強硬なのか」を競う事態を警戒している。政治的な分裂で米国民主主義が衰退に向かう方が好都合。
 
中国はハリス氏とトランプ氏のどちらが嫌か 戦略家の米誌論文を読み解く 湯浅博の世界読解 - 産経ニュース 2024/8/23

 硬貨を投げて勝敗を占う「コイントス」のようだと英誌はいう。両者互角の米大統領選挙戦は、11月までにほんの小さな変化でも票が動く。民主党のハリス副大統領か、共和党のトランプ前大統領なのか

 
欧州の政治指導者たちは政策の予測可能な「ハリス勝利」を期待し、ウクライナ東部の占領で戦争の決着を狙うロシアのプーチン大統領は「トランプ勝利」を望む―との見方が米欧のアナリストには多い

 ところが、
中国の習近平国家主席は冷ややかに推移を見ている。中国外務省の林剣報道官は、「選挙は米国の内政問題」とのタテマエから、どちらに親和性があるかが悟られないよう慎重に言葉を選ぶ。

 むしろ、
大統領選が白熱して両陣営が「どちらが中国により強硬なのか」を競う事態を警戒している。民主、共和という「2つの毒」に期待をつなぐより、政治的な分裂で米国民主主義が衰退に向かう方が好都合なのだ。

 
興味深いのは、北京大学国際戦略研究所の王緝思(おうしゅうし)氏ら研究者3人が、米外交誌フォーリン・アフェアーズに「中国はハリスとトランプのどちらを好むか?」という思わせぶりな論文を掲載していることだ

 
サブタイトルには「なぜ中国の戦略家は両者に違いを見ないのか」とあり、読者の下世話な関心を突き放している。ワシントンには、中国を「主要な敵国として扱う超党派の合意」ができており、異なる戦術であっても打倒中国の戦略目的は同じだとみるのだ

 この
論文が、中国当局のチェックをすり抜けて米外交誌に掲載されたのか、あるいは当局のメッセージが織り込まれているのかは分からない。いずれであっても、この長い論文から、「2つの毒」を嫌う中国の思考のパターンを探り出すことはできる

■北京大戦略研究者、米を3学派で分析

 
王氏らは米国の対中戦略家は大まかに3つの学派に分けられるとみるその手がかりとして、トランプ政権の大統領副補佐官だったマット・ポッティンジャー氏と前下院議員のマイク・ギャラガー氏が同誌電子版に発表した論文「勝利に代わるものはない」を巡る論争から考えを解き起こす

 王氏らが
「新冷戦派」と位置付けるポッティンジャー氏らは、中国との戦略的競争を「管理するのではなく、勝利しなければならない」と明確に定義づける。中国の脅威に対して米ソ冷戦に勝利したレーガン大統領(共和党)を例に戦略を組み立てている。

 
第2の「競争管理派」は、このポッティンジャー氏らの論文を批判するバイデン政権(民主党)の前国家安全保障会議副部長、ラッシュ・ドッシ氏やサリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)らを指している。この派は米中対立をゼロサムではなく、競争を管理しながら共存のための戦略が必要と主張する。

 
第3の「順応派」は、やはりポッティンジャー論文を危険視するオバマ政権(民主党)の国務副長官、ジェームズ・スタインバーグ氏らを挙げ、冷戦に持ち込むことに反対していると指摘する。対中圧力によって中国を変革させようとすれば、「独裁政権を弱体化させる可能性だけでなく、それを強化する可能性も同じくらい高い」との考えだ。

■毛沢東のお好みは「共和党」だと言及

 王氏らはこれら
3つの学派に共通しているのは、中国は脅威であり、対中政策の成功のためには超党派の基盤が必要だと考えることだという。その上で、これら異なるアプローチが、次期政権にどう影響を与えるかを探っている。

 
「競争管理派」と「順応派」は、民主党政権の対中戦略であり、「新冷戦派」はトランプ第1期政権を支えた戦略家らが主張している。王氏らはこのうち、米中新冷戦の枠組みを主張するアナリストが増えているとの認識を示す

 しかし、
トランプ第2期政権は、ポッティンジャー氏らがトランプ氏と距離を置いており、本来の米国第一主義が色濃く出てくる可能性が高い。従って、「米国第一派」を加えて、4つの学派が混在していることになる

 興味深いのは
王氏らが、「中国は民主党と共和党のどちらを好むのか」と自問して、毛沢東が1972年にニクソン大統領(共和党)に語った言葉を挙げていることだ。毛沢東は西側諸国の「政治的右派の方が好ましい」と語っていた

 右派は自国の経済と安全保障を語るが、左派はイデオロギーと政治的な価値観に基づいて政策を進めると毛沢東は考えた可能性が高い。
そのココロは、経済や安全保障は対米交渉や取引が可能でも、共産党のイデオロギーや価値観は妥協ができないという点にある

■習氏の就任時から冷戦始まっている

 
トランプ氏が2017年に持ち込んだのは、対中貿易赤字と技術流出が国家安全保障にかかわるとし、中国を「戦略的競争相手」と位置付けたことだ。第1期政権の戦略家たちはこの地域を対中抑止の意味を込めて「インド太平洋」と呼称し、勢力均衡を図るために日米豪印の安全保障枠組み「クアッド」を強化した

 ただ
王論文は、全体的には中国に対して柔軟性を維持していたとし、「技術的競争や台湾などの厄介な問題で妥協する意欲を示した」と一定の評価をした。

 これに対して
バイデン政権(民主党)は、対中政策では「前政権との顕著な連続性」があり、より体系的で多国間的なアプローチから「敵対的な方向性を固めている」とみる。中国との争いに「民主主義対独裁主義」と呼ぶ新たなイデオロギーを重ねて、「北京に対する大同盟を構築しようとしている」と批判した。

 他方、
ハリス氏に対しては、バイデン政権のアプローチを踏襲すると仮定し、「北京との戦略的競争を激化させ、中国に対抗するためアジア諸国の連合を構築する取り組みを強化する」と警戒感を示す

 
この論文が強調する西側へのメッセージは、「香港、台湾、チベット、新疆(しんきょう)、人権」への干渉に抵抗し、フィリピンとの領土紛争を含め身勝手な拡張主義は変わらない。そして中国当局者は、対中抑止を強化する米国や日本に、冷戦思考を捨てよとモノ申す

 しかし、ポッティンジャー氏が指摘するように
習氏は権力の座に就いて間もなくの秘密演説で、「資本主義は必然的に滅び、社会主義は必然的に勝利する」と述べたのではなかったか。

 別の声明でも、
「西側諸国とわれわれの闘争は和解不可能であり、必然的に長期化し、複雑化し、時には非常に厳しいものになる」と冷戦思考そのままに論じている中国自身が既に「第2次冷戦」に舵(かじ)を切っているではないか。

------------------------------------------------
湯浅博
 国家基本問題研究所主任研究員、産経新聞客員論説委員。1948年生まれ。中央大学法学部卒。プリンストン大学公共政策大学院 Mid Career Fellow program修了。産経新聞でワシントン支局長、シンガポール支局長、論説委員、特別記者などを経て現職。

 興味深いのは、北京大学国際戦略研究所の王緝思(おうしゅうし)氏ら研究者3人が、米外交誌フォーリン・アフェアーズに「中国はハリスとトランプのどちらを好むか?」という思わせぶりな論文を掲載していることだと、湯浅博氏。
 サブタイトルには「なぜ中国の戦略家は両者に違いを見ないのか」とあり、ワシントンには、中国を「主要な敵国として扱う超党派の合意」ができており、異なる戦術であっても打倒中国の戦略目的は同じだとみる。
 この論文が、中国当局のチェックをすり抜けて米外交誌に掲載されたのか、あるいは当局のメッセージが織り込まれているのかは分からない。いずれであっても、この長い論文から、「2つの毒」を嫌う中国の思考のパターンを探り出すことはできると、湯浅氏。

 王氏らは米国の対中戦略家は大まかに3つの学派に分けられるとみる。
 「新冷戦派」と位置付けるポッティンジャー氏らは、中国との戦略的競争を「管理するのではなく、勝利しなければならない」と明確に定義づける。

 第2の「競争管理派」は、このポッティンジャー氏らの論文を批判するバイデン政権(民主党)の前国家安全保障会議副部長、ラッシュ・ドッシ氏やサリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)らを指している。この派は米中対立をゼロサムではなく、競争を管理しながら共存のための戦略が必要と主張する。

 第3の「順応派」は、やはりポッティンジャー論文を危険視するオバマ政権(民主党)の国務副長官、ジェームズ・スタインバーグ氏らを挙げ、冷戦に持ち込むことに反対していると指摘。
 対中圧力によって中国を変革させようとすれば、「独裁政権を弱体化させる可能性だけでなく、それを強化する可能性も同じくらい高い」との考え。

 3つの学派に共通しているのは、中国は脅威であり、対中政策の成功のためには超党派の基盤が必要だと考えることだと王氏ら。

 「競争管理派」と「順応派」は、民主党政権の対中戦略であり、「新冷戦派」はトランプ第1期政権を支えた戦略家らが主張している。王氏らはこのうち、米中新冷戦の枠組みを主張するアナリストが増えているとの認識を示すと、湯浅氏。

 しかし、トランプ第2期政権は、ポッティンジャー氏らがトランプ氏と距離を置いており、本来の米国第一主義が色濃く出てくる可能性が高い。従って、「米国第一派」を加えて、4つの学派が混在していることになると。

 興味深いのは王氏らが、「中国は民主党と共和党のどちらを好むのか」と自問して、毛沢東が1972年にニクソン大統領(共和党)に語った言葉を挙げていることだ。毛沢東は西側諸国の「政治的右派の方が好ましい」と語っていたのだそうです。
 右派は自国の経済と安全保障を語るが、左派はイデオロギーと政治的な価値観に基づいて政策を進めると毛沢東は考えた可能性が高いと、湯浅氏。

 トランプ氏が2017年に持ち込んだのは、中国を「戦略的競争相手」と位置付けたことだ。勢力均衡を図るために日米豪印の安全保障枠組み「クアッド」を強化した。

 # 安倍首相(当時)が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」にも賛同しました。

 王論文は、全体的には中国に対して柔軟性を維持していたとし、「技術的競争や台湾などの厄介な問題で妥協する意欲を示した」と一定の評価をした。

 これに対してバイデン政権(民主党)は、より体系的で多国間的なアプローチから「敵対的な方向性を固めている」とみる。
 「民主主義対独裁主義」と呼ぶ新たなイデオロギーを重ねて、「北京に対する大同盟を構築しようとしている」と批判。

 他方、ハリス氏に対しては、バイデン政権のアプローチを踏襲すると仮定し、「北京との戦略的競争を激化させ、中国に対抗するためアジア諸国の連合を構築する取り組みを強化する」と警戒感を示すと、湯浅氏。

 この論文が強調する西側へのメッセージは、対中抑止を強化する米国や日本に、冷戦思考を捨てよとモノ申す。
 習氏は権力の座に就いて間もなくの秘密演説で、「資本主義は必然的に滅び、社会主義は必然的に勝利する」と述べた。
 別の声明でも、「西側諸国とわれわれの闘争は和解不可能であり、必然的に長期化し、複雑化し、時には非常に厳しいものになる」と冷戦思考そのままに論じている。中国自身が既に「第2次冷戦」に舵(かじ)を切っていると、湯浅氏。

 米国新大統領がトランプ氏なのか、ハリス氏なのか。
 そして、米中新冷戦時代は続くのか。要注目ですね。


 # 冒頭の画像は、中国の新米政権観



 この花の名前は、八重咲ニチニチソウ

↓よろしかったら、お願いします。


遊爺さんの写真素材 - PIXTA

月刊Hanada2024年2月号 - 花田紀凱, 月刊Hanada編集部 - Google ブックス

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« SNS、クラウドファンディング... | トップ | 自民党総裁選 小泉進次郎氏... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

中国 全般」カテゴリの最新記事