倉子城物語
格子戸
4
國蔵が重い言葉を落とし始めた。
「本城と師匠の娘さんとの間に出来た子だ。本城はそんなことは知らないだろう。江戸へ行った後に子供が出来ていることに気づき・・・。その事が師匠に分かれば大変なことになる・・・。わしが、連れて帰った。おまえを産んで暫らくしていなくなった。江戸へ、本城のいる場所へ・・・。その後のことは分からないが・・・」
「みつ、お前はわしの子だ。お前の母をわしは密かにすいとった。お前と三人の生活は幸せじゃつた。本城が千葉の免許皆伝を持って倉子城に道場を開いたとき、わしがお前に残してやれるものは後の世まで値打ちの変わらぬ刀じゃと考えた。
今までの柵を断ち斬る事の出来る刀、その刀にお前の幸せを託すこと、そう考えて打ったがいいものは出来なかった。
刀は人斬り包丁じゃが、己れを守る為の物、好いた人を守るために生き長らえる道具、と考えたらこの一振りの刀が打てた。お前の幸せの、お前の母の・・・」
「いい、おとっちゃん・・・」目頭が熱くなりみつは袂で顔を隠した。
國蔵と名のある刀は、今、倉敷の医者の床の間に飾られてある。
皆様御元気で・・・ご自愛を・・・ありがとうございました・・・
恵 香乙著 「奏でる時に」
あいつは加奈子を抱いた。この日から加奈子は自分で作った水槽の中で孤独な魚と化した。
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1982年、まだ美しかった横浜―風変わりなおんぼろ塾で、あたしたちは出会った。ロケット花火で不良どもに戦いを挑み、路地裏を全力疾走で駆け抜ける!それぞれが悩みや秘密を抱えながらも、あの頃、世界は輝いていた。大人へと押しあげられてしまったすべての人へ捧げる、あなたも知っている“あの頃”の物語。
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作者のブログです・・・出版したあとも精力的に書き進めています・・・一度覗いてみてはと・・・。
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