yuuの夢物語

夢の数々をここに語り綴りたい

太鼓橋 4

2007-10-06 21:24:01 | 創作の小部屋
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倉子城物語
太鼓橋(たいこばし)

 4

「こりゃあ大変だ・・・」
 嘉平はそう言って走り出していた。四十瀬の銀杏の木をめざした。北の空がにわかに真っ黒くなりだんだんと大空を覆う様に広がり始めていた。稲光が走り落雷が轟き空を裂きながらだんだんと近づいてきていた。茶店に急ぐ人の数が増していた。
 銀杏の側のお鹿ばあさんの茶店で夕立をやり過ごそうと嘉平は考えたのだった。ついたとたんに大地に雨粒は突き刺さり水しぶきが散った。銀杏の木の葉が激しい雨にあってざわめき悲鳴に似た音を立てていた。
「どうやら間に合ったようだね」
 お鹿は息が上がって咳き込みそうになっている嘉平に声を掛けた。
「ああ、ようやく・・・俺も歳を取ったものだ」
「あの頃はまだ若かったのにね・・・」
「・・・」
「もう二十年も前かね・・・嘉平さんがかわいいおたねさんとこの倉敷村へ来たのは」
「そんなに突っかかるもんじゃねえよ」
「訳あり同士・・・そんな匂いがしたんだよ」
「お鹿さんにはかなわねえよ」
「まあ、茶でも飲んで少し話でも・・・冥土への土産話と言うところ・・・」
 お鹿は奥に入って茶の用意を始めた。店は通り雨待ちの客で賑わっていた。一通り客の相手をしてお鹿は嘉平に茶を持ってきた。
「月日の流れるのは早いね・・・おたねさんは息災かね」
「ありがとうよ、今じゃあっしがこき使われているぜ」
「夫婦はそうでなくちゃ・・・私だって・・・」
「お鹿さん、何十年になるんだい」
「歳かい」
「ここに来て、この倉子城に来てだよ」
「なにいってんだよ・・・わたしゃ・・・」
「根っからの地の者ではあるめえ」
「今日は嘉平さんのことを・・・私の事は・・・」
「話が聴きてい」
 嘉平は茶を啜って言った。
「四十年かね・・・ある人をここで待っているのさ・・・それより嘉平さんの話を・・・」
「あっしだって、一度通り雨を軒下で・・・それが縁で・・・」



皆様御元気で・・・ご自愛を・・・ありがとうございました・・・

恵 香乙著 「奏でる時に」
あいつは加奈子を抱いた。この日から加奈子は自分で作った水槽の中で孤独な魚と化した。

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1982年、まだ美しかった横浜―風変わりなおんぼろ塾で、あたしたちは出会った。ロケット花火で不良どもに戦いを挑み、路地裏を全力疾走で駆け抜ける!それぞれが悩みや秘密を抱えながらも、あの頃、世界は輝いていた。大人へと押しあげられてしまったすべての人へ捧げる、あなたも知っている“あの頃”の物語。

山口小夜著「青木学院物語」「ワンダフル ワールド」の文庫本・・・。

作者のブログです・・・出版したあとも精力的に書き進めています・・・一度覗いてみてはと・・・。
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