yuuの夢物語

夢の数々をここに語り綴りたい

小説 冬の空 3 連載中

2006-02-21 23:08:00 | 小説 春の空  来春開始準備中
この小説は 海の華の続編である 冬の華の続編である 春の華の続編である 夏の華の続編である
秋の華
の続編である 冬の路の続編である 春の路の続編である 夏の路の続編である 秋の路の続編である冬の空1の続編である
「冬の空2」は彷徨する省三の人生譚である。
この作品は省三40歳からの軌道です・・・。ご興味が御座いましたら華シリーズもお読み頂けましたらうれしゅう御座います・・・お幸せに・・・。

  冬の空  どんよりと覆う空は 心を閉ざすのか・・・。

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冬の空 3

3

殺陣の練習が始まった。刀を腰に差して歩く稽古が始まった。省三の子供時代はチャンバラごっこという遊びがあったが、今はないのでそれを教えた。あの頃子供たちはみんな東映の時代劇をこぞって見に行っていた。見様見真似で刀の扱いは馴れていたのだった。が、今の子は時代劇を見ないから握り方もわからなかった。練習に走ることを取り入れている所為か顎を上げることはなく付いて来る事が出来た。脱力が役にたった。脱力を練習しているといざと言う時に怪我をしなくてすむのだった。活舌、鼻濁が出来て台詞が力強いものになっていた。
「芸文館の舞台は広いぞ・・・。大きく動け」
 省三は叫んでいた。
 一度ここでするのだと舞台を見せなくてはならないと思った。
 通しの稽古が練習日には行われた。
「演出の指示を待つな・・・考えてやれ」
「演出の人形になるな、台本を読んで考えろ」
「声が小さいぞ・・・バックには音楽が流れているぞ」
 稽古の成果は明らかに出ていたが、良く出来たとは言わなかった。

上手源内の書斎。
       小町と静と三太郎、五右衛門、茶子兵衛、お市、ドラゴン、お千がてんでんばらばらの姿勢でいる。
       何か置く事と明かりの処理。
ドラゴン  ゴロゴニヤーン、弱虫泣き虫三太郎、鼠に 負ける三太郎、キァャツフードを食べ過ぎて、腎臓結 石医者が通い、情けないぞい三太郎、二食付きの昼寝 付き、野性と 本能忘れた猫に、喧嘩も出来ず逃げ回 る、泣き虫弱虫三太郎・・・ニヤニヤニヤーン。
三太郎  野良猫くそ猫やくざ猫、弱いもの苛めの困り 猫・・・ニャーオンニヤン。
静  三太郎、たとえどんなに辱めを受けても相手にしてはいけません。我が家の飼猫ははしたない事をいたしてはなりませぬ。
五右衛門  ほっとけばいいのさ構わん事さワワワン。                               
小町  可哀相という同情は蔑みであり、傲慢です。
茶子兵衛  五衛チャンが言う通りほっとけばいいのよニヤーン。
お市  愛が欲しいのょ。一人ぼっちってとても淋しいもの・・・キャキンャ。
お千  ドラゴン君、お相手してあげようか。同じ世間に背を向けて生きている同士なのだからキャキャワン。
静  それにしてもあの人はどこへ行ってしまったのかしら・・・。三太郎も五右衛門も引き連れなくて・・・。
小町  お竜さんと・・・。
       源内とお竜が帰ってくる。
       源内へ近づく、三太郎、五右衛門、茶子兵衛。
静  どちらへ・・・。
小町  お父さま、新聞社から原稿が出来たかと・・・                                
源内  お竜さんと海を見てきたぞい。桂が浜で太平洋を遠望する竜馬の眺める海とこの瀬戸の海は続いておるからして、いや、海を渡った立石孫一郎が何を考えておったのか、いや、竜馬が何を見たのかが知りたくて、打ち寄せる波に尋ねておったぞい。
お竜  竜馬には太平洋に朝が来て、キラキラと跳ね返す黄金の波が、小判に見えたのでしょう。金金金に見えたことでしょう。それだけ金に執着をしていたお人であったとお祖母が申しておられました。
       みんなが歌う「竜馬金の亡者か偉人かなソング」
       土佐の高知の播磨やー橋で 坊さん簪買いいましたあーヨサコーイヨサコーイ。
        土佐のー偉人はー数数おれどーなぁーかーで光るはー竜馬かなーヨサコーイヨサコイー。
       土佐のーいごっそー数々おれえどー世間を騒がすー竜馬かーな ヨサコイヨサコイ。
       土佐ーのー泣き虫数々おれどー飲んでー泣くうのはー竜馬かなーヨサコイヨサコイ。
       竜馬・・・色々言うけれど・・・金好きー女好きー昼寝好き・・・ヨサコイヨサコイ。
       この唄は続く今度書く。この唄はもっと研究して書く。
       作者の勉強不足、研究の余地あり。
          6
       瓦板売りが中央トップ。
瓦板売り  孫一郎は通生院に三日いやした。三輪の案内で小舟を雇い下津井へ。大坂、京への船便の為に長門屋で四日間過ごしやした。飲めもしねえ酒を女に袖にされた後、自棄になったように胃蔵に流し込んでいやした。長門屋吉兵衛が色々と世話を妬いていやしたが、真っ赤な顔をして暮れ泥む穏やかな瀬戸の流れを見ていやした。大坂ヘ着いたのは、年が明けて慶応元年でやした。町々には痩せ衰えて胃臓だけが以上に膨れた子供の姿が哀れを誘いやした。
 物の流れは低いところから高いところへと・・・。幕府は何の策もなく商人の言いなり、正統な政など出来ぬ適わぬ、半身不随の症状を見たように思いやした。孫一郎は商人髷を落として後で束ね、大坂を見て歩きやした。大手を振って歩いているのは新撰組の隊士達と剛毛の薩摩武士・・・。
 蛤御門の変で会津若松藩と薩摩の連合軍と戦って破れた長州は、幕府に楯突くとして、幕府軍は長州征伐を、かたや長州は征伐軍の西下軍を迎え撃つか、撃って出るか議論百出、真っふたつに意見ごうごう、業を煮やした久坂玄瑞は京へ撃って出て散々の体の敗北その責任を取って自決。それでも懲りずにその後長州は京へ攻め込み敗れる禁門の変。それによりて朝敵としての汚名確かなり。それの先年には、イギリス、フランス、オランダ、アメリカの四ヶ國による下関戦争で敗れており、踏んだり蹴ったり困ったりでやした。
 大橋敬之助が、大坂の地を見て回っていた頃のことでやす。新撰組の輩と会ったのは・・・。さあさ、此れからが面白くなるよ・・・。買った買った・・・。その前に・・・。
       お竜と現内の、
お竜  へぇ。竜馬が薩摩の手に掛かって憤死しはってから、京の・・・。
源内  たしか、横須賀の大商人と再婚されて・・・。                                 
お竜  それは嘘で御座いますぇ。
源内  嘘ですかいなや。
お竜  お祖母さまが可哀相、二夫にまみえず、そんな女子ではおへん・・・。それから縁を頼りにこの倉敷に移り慎ましやかに生きてまいりましたぇ。
源内  歴史とはいい加減なものとは言え・・・。して、その頼りの方とは・・・。
       お竜が登場。
お竜  ほんに何と言う星の下に生れてきたのやろ。わては、前世でどんな罪を侵したんやろ。男はんにてんごして泣かしたんやろか。ふらりと、わての前に現われはったお人を忘れられへんようになるやなんて。姿形は大物やったけど、お金儲けしか考えん小さなお人。お金になることやつたら何でも・・・。東に、西にと、世渡り上手・・・。
    もっと大きな夢をよう結ばへんかつたのやろか・・・。
       大坂難波新地。
       新撰組の一団が闊歩している。
       近藤勇、沖田総司等である。
       万太郎。
       そこへ通りかかる孫一郎。
       万太郎と孫一郎の目が逢う。
       万太郎が刀を抜き横にはらった。
       孫一郎が辛うじて避ける。

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近藤勇  万太郎、何を手間取っておる。もう良い。そのようなこわっぱを斬っても刀の錆になるだけだぞ。刀を引け。
沖田  組長の命令ぞ。
万太郎  此奴なかなかの手だれ・・・。
沖田  どうします。
近藤  ほっておけ、傷をおうてもつまらん。
孫一郎  なにを!
       孫一郎が斬り込んだ。
       沖田が軽く躱し、
沖田  あなたもひかれい。今日の処は先を急ぐゆへに見逃してやる。だが、今度あった時には私があなたを斬る。(咳き込んだ)
       新撰組の一団が通り過ぎる。
孫一郎  おのれ・・・みておれ・・・。
       孫一郎が新撰組の一団の背に投げ掛けた声は虚しく響く。そこえ浪人が近寄り、
浪人  あなたも無鉄ぽうだぎゃ。あんな連中を相手に して。命が何ぼーうあってもかなわんぜょ。あんな連中と命のやり取りをするとはきぁー刀は役にたたんきに。
孫一郎  あなたは・・・。
浪人  なあに、新撰組が捜しとるんはこのわしじゃきに。
孫一郎  あなたは・・・。
浪人  名前か、土佐の浪人坂本竜馬と世間では言うとるきに。
孫一郎  土佐の坂本竜馬どの、してなぜに新撰組に・・・。
竜馬  わしには尊皇も佐幕もなかじゃ。今が・・・おっとっと、してあんさーは何者で・・・。
孫一郎  ああ失礼を、ご無礼をいたしました。備中は倉敷村の大橋敬之助と申します。
竜馬  倉敷と言やぁ、下津井屋事件・・・。
孫一郎  その事件のことは・・・。
竜馬  皆しっとるきに。あなたでしたか。
孫一郎  私ではありません。
竜馬  よかよか、そげん事はどちらでもよかとじゃ。                                
孫一郎  坂本さん、あなたは尊皇も佐幕もないといいましたが・・・。
竜馬  今のわしは、あなたと一緒で商人じゃきに、今を逃したら金を儲ける時がのうなるきに。これからは、金じゃ、船じゃ。金のあるもんの天下。例えば、これじゃ、(と言いながらピストルを取り出して)何か分かるかに。
孫一郎  鉄砲でしょう。
竜馬  いや、ピストル。もう、刀の時代ではなか、エゲレス、アメリカではもうとっくに刀は捨てとるきに。わしは、大きな船を買ってオランダ、ポルトガル、アメリカ、どこでもよかに、出掛けて大砲、連発銃、をこうて来て大儲けしょうと考えとるぜょ。東中島屋大橋敬之助、この話に乗らんかに。
孫一郎  なぜに私の名を・・・。
竜馬  あなたが大阪に着いたときから見とった。どのように動くかをな・・・。
孫一郎  私をその商売の仲間にと考えてですか、戦をさせて金儲けを・・・。
竜馬  そげんな目で見なさるな。時代じゃ、その方が戦が早ように終わり、平和な國になるのじゃきに・・・。
孫一郎  あなたはこれからこの國をどのように見られるのです。
竜馬  幕府も長州薩摩も戦に疲れきるじゃろうきに。その時、新しい政府が出来て日本國は変わると思うとるきに。して、フランス、エゲレス、と戦争になるじゃろうき。そのためにもアメリカの武器が欲しい、その武器をわしは貯えときていんぜょ。
孫一郎  そこまで考えておられますか・・・。わたしは・・・。
竜馬  わしが高杉に手紙を書くきにそれを持って・・・。此処や京より安全じゃきに。命あっての物種じゃきに。
    (ピストルを出して)これを持って・・・。なあに、商売の仲間の手付けじゃきに。
       中央トップ落ちる。
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          お竜がトップに入り。
お竜  祖母が申すには、竜馬は大橋敬之助を仲間に入れ資金を出させて、アメリカより武器弾薬を買い込んで、今で言う武器商人、幕府にも売る、長州にも買わす、手っ取り早い金儲け、株仲間を増やし資金を集め、亀山社中を創りしこたま儲けましたが、それだけで満足をするような人ではありませんでした。幕府の軍艦奉行勝海舟に取り入り後海援隊を造り、また、薩摩に船を買わせて・・・。なんと、その饒舌の土佐弁は留まるとことを知ら何だと言う事で御座います。
       勝海舟が現われて、
       岡田以蔵がシルエットの中・・・
海舟  親父は御家人、ちいせい頃から喧嘩の仕方は、修め方は嫌というほどたたき込まれやしたょ。大きい喧嘩の手打ちから、夫婦喧嘩の仲裁に入り仲直をさせて、食い扶持を稼ぐまったくの自由人、勝小吉を親父さんに持ち、御家人の気分気紛で生きていやしたょ。親父は剣が立ったものでやしたから、ちいせい頃からやっ刀は仕込まれやしたょ。暇があれば朝から晩まで・・・。
 時世と言うのでやしょうかね、御家人と言やあ、旗本の下、幕府の要職はとてもとても雲の上、何も食わずにこつこつと金を蓄め、同心株を買い同心になれれば出世という世の中。中には御家人株を売って商人に職人にへと・・・。
 なんでもやっておくもんだねぇー。親父について修羅場を掻い繰ぐつていたもんで、糞度胸だけは人の百倍は付いていやしたょ。それに親父に勧められて学問だけは怠らなかったことが、どこでどう間違ったのかとんとん拍子の出世、御家人が軍艦奉行、昔じゃあ考えられねえ事よ。
 なに、どうして坂本竜馬と会ったかと、あっしの存在が鬱と惜しい輩が刺客を送って来のょ。土佐の岡田以蔵があっしの後を付け回り、隙あらばと狙っていやしたょ。以蔵が我が家に斬り込んできたとき、偶然か必然か竜馬が以蔵を押さえ付けたのょ。それから弟子にしろ、子分にしろと喧しいの騒がしいの、こちとら江戸っ子面倒臭い事はとんと苦手、あっしの後に付いてきて軍艦に乗って喜んでいやしたょ。
 「竜馬よ、おめいは何が欲しい」と聞くと「金だ」「どうして金なんだ」と尋ねると
 「大きな船が欲しい」、とぬかす。「どうして船なんだ」と聞くと「貿易をしてえと」「どうして貿易なんだ」と聞くと「金が儲かる。この國を救うのは金だ」と抜け抜けとぬかしよったぜ。
 何となく気に入って、神戸の海軍操練所へ・・・。
 このあっしだって幕府に凝りはねえ、火事と喧嘩は江戸の華と言われていた時代が懐かしい、勝麟太郎として咸臨丸でアメリカへ、そこで見たものは日本は百年遅れているという現実でやしたょ。いま、尊皇だ攘夷だと騒いでいる時ではねえ、そんなていたらくだとこの國は外國の植民地になる。そこに平和や気侭があるのけえーと考えていやしたよ。それくれえなら、自分で出来ることはやらにやーなるめえーと・・・。
       孫一郎が登場して。
孫一郎  新撰組の扱いには腹が立った。それよりなにより京大坂の荒廃により心痛めた。この國を変えなくてはならん。坂本さんに金を・・・。この私は長州へ行って倒幕の為に命を捨てよう。坂本さんの手紙を持ち、作州の立石家へ走りました。立石家は毛利輝元から高五百石の感状と賞与の短刀を貰い受けていたのを行き掛けの駄賃と貰い受け、長州へと走りました。だけど、高杉さんはなにやかやと忙しいお人、周防の石城山にある第二騎兵隊へ。そこには神主の倅、御家人崩れ百姓町人のせがれ、全國の食い詰め浪人、何とも奇妙な連中が「幕府を倒せ!」と叫んでいた。私はここで始めて先祖の名前、立石孫一郎と名乗りました。中には十二三の子供までが、参加していました。幼いそれらの顔を見て、正吉、千之輔のことやお鶴のことが頭の隅を過りました。そして、おけいの・・・。桜井を倒すことはすなわち幕府を倒すこと、そうでのうては倉敷に帰られないのだ、と言聞かせました。そして、この年端も行かぬ騎兵隊士の未来に夢と自由がなければならないと願いました。この戦、長州のものでもなく、國民のものとして、國民の将来が係っているものにしくてはならぬとおもいました。
       倉敷大橋家。
       孫一郎とおけいがいる。
おけい  旦那さま、どうしてやりもしないことをやったと。
孫一郎  言うな、此れも私のいたらなさから出たことだ。真実を白日の元にしなくては倉敷には帰れぬ。正義の為に腐り切った幕府を・・・。
おけい  これから・・・。
孫一郎  身の潔白を・・・。そのために長州へ・・・。
おけい  長州へ・・・ですか。
孫一郎  正吉にはこの東中島屋を、千之輔は立石家へやってくれ、お鶴は良いところへ・・・。後の事は頼んだよ。
おけい  はい。
孫一郎  家の者を哀しませて何が正義の戦いか・・・。これも私の定めやも知れぬ。許してくれよ、おけい。
おけい  旦那さま!・・・その優しさが・・・。
孫一郎  倉敷で過ごした日々が・・・。
おけい  後のことは・・・。十分にお体をご安じなされて・・・。
       おけい泣き崩れる。
       瓦板売りが登場する。
瓦板売り  孫一郎が芸州周防にいた頃、将軍家茂は光明天皇の仲介によりやして、皇女和の宮との婚儀会い調い、一応表面上は平穏を装っていやしたょ。その時は長州だけが悪者、長州は孤立していやしたなぁー。高杉はその間、大砲、連発銃、ケペール銃、金蔵の金がなくなるまで買い付けたとかなかったとか・・・。それを仲介するのが坂本竜馬でやしたよ。
 「なんとでもほざけ、こん世は金じゃきに!」と竜馬の雄叫び。
 薩摩に何門大砲を買わした、長州もそれに対抗するには何門の大砲がいるぜよ。と、また、勝海舟を通うして幕府へと言う風に、商いの仁義などありゃしねえ。オット、大橋敬之助、いや、立石孫一郎のことを・・・。
 周防の石城山で立石孫一郎は洋式訓練を身に付けさせられやした。本営宿舎は式部岩城神社の社坊神護寺にありやしたょ。半年を経て、立石孫一郎は三十四歳、書記兼銃隊長になっていやした。竜馬の手紙が効いたのか、感状、賞与の短刀がものを言ったのか・・・。まあ、年令、学識、剣の腕からすると当たり前ということでやすか・・・。

 青年の上がりは子供たちに比べて遅かった。 

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