ゆいもあ亭【非】日常

映画や小説などのフィクション(非・日常)に関するブログ

治外法権(エリア・ネイション)? いや、単なるスラム。

2010-05-05 | 映画
第9地区

腐った牛乳飲んで酔っ払う蛸頭異星人が、人間と共存し、しかるべき地位を得ているという「エイリアン・ネイション」。30万人を受け入れたのは移民の国アメリカである。実態はどうあれ、アメリカには、自由とチャンスの国=合衆国という建前がある。

映画「第9地区」で、120万の異星人が隔離されているのは、南アフリカ共和国のヨハネスブルグの一角。機能停止してしまった巨大母船が静止したその真下。エビといわれて蔑まれる異星人と、ナイジェリア・ギャングが住み付いたスラム街を第9地区と呼ぶのである。28年の時を経ても、溝は深まるばかり、政府は彼ら異星人のみを一層狭い第10地区に移動させ、隔離を進めようとしていた……。やっぱり、アパルトヘイトの国だ。

関係者への取材と、ニュース映像、というフェイク・ドキュメント風のスタイルで前半のストーリーは進んでいく。第9地区からの異星人立ち退き計画の責任者ヴィカス。風采の上がらぬこの男が、ストーリーが進むに従ってなかなか味のあるキャラクターに育っていく。異星人クリストファー・ジョンソンとの間に生まれる奇妙な連帯もよい。偏見の持ち主が行動をともにするに従って強い連帯で結ばれるようになるバディ・ムービー。「エイリアン・ネイション」は、そのものずばり、異星人刑事同士のバディ・ムービーだったが、「第9地区」始まりの部分では予想が付かない次第を経てバディ・ムービーとなっていく。実に面白いバランスの映画だった。

ジェームズ・キャメロン監督の「アバター」。彼が今回元妻のキャスリン・ビグロー監督とアカデミー賞を争い、大敗したのは記憶に新しい。それでもアバターはノミネート9部門のうち、撮影賞、美術賞、視覚効果賞の三つを受賞したのであるが、作品賞、脚色賞、編集賞、視覚効果賞でノミネートしていた「第9地区」とはバジェットが圧倒的に違うし、受賞こそしなかったものの「アバター」がノミネートさえしていない脚色賞の存在が、なんだか「第9地区」のアイデア勝ちを告げているようで面白い。先ほどからなんとなく比較するように併記している「エイリアン・ネイション」。そのプロデューサーはゲイル・アン・ハード。つまり、ジェームズ・キャメロンの、キャスリン・ビグローの前の奥さんだよ!

何が言いたいか? 「アバター」よりも「第9地区」の方が数倍面白いということ!

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2 コメント

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Unknown (hello nico)
2010-05-08 13:48:49
「第9地区」面白かったですね!
もうハリウッド系の結末が分かりきった映画に飽き飽きしているので、ヨーロッパ映画を新鮮に感じます。そして、この南アフリカ出身の監督が作った映画は意外性に富み、私にとって忘れられない映画となるでしょう。
「第10地区」も製作されるそうで、楽しみにしています。

それにしても「アバター」「第9地区」を押しのけて受賞した「ハート・ロッカー」はどれほど面白いのか興味はありますが、好みのジャンルでは無いのでTV上映まで待つつもりです。
「エイリアン・ネイション」はまだ観ていません。
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ハロニコさま (yuimor)
2010-05-11 20:52:16
またまた書き込みありがとうございます。

キャスリン・ビグロー「ニア・ダーク」持っているだけで、それさえ見たことがないし、たしかに「ハート・ロッカー」はいまひとつ見る気がわかないですね。

ところで「タイタンの妖怪」が出発点のひとつとか。それじゃあ、わたしとおんなじですね。

「ブレイン・スナッチャー/恐怖の洗脳生物」ご覧になりましたか? VHS版は以前に出ていましたが、DVDは国内未発売なんだよね。

見たくなってきた。
あちら盤、買っちゃおうかな。
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