麦畑

太陽と大地と海は調和するミックスナッツの袋のなかで

魂は

2024-08-02 23:37:02 | 短歌

 

魂は形而下的に固まってロールキャベツの中までキャベツ

神様はちょっと怒っていたりしてばらりばらりと雹が降るとき

永遠に帰るところがないみたい青いレールを回る電車は

ヤシの木を一本植えて育てたいほどほど狭い離島があれば

シンプルな手帳ぱらりとひらいたらミニマリストが現れるかも

ひといきに裸足になれば夏になるねむたい春を置き去りにして

行き先のないチケットを渡されてぼくは青春期を乗り過ごす

青光る鋭き羽根を隠し持つカルガモたちに岸辺をゆずる

青春に終わりは無いと言いしひとのガハハ笑いを忘れ得ぬかな

読みかけの小説いくつあるだろう苦みの効いた汗がこぼれる


_/_/_/ 未来8月号掲載歌 _/_/_/
_/_/_/ ニューアトランティス欄 _/_/_/

 

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工房月旦5月号

2024-08-02 23:35:53 | 短歌記事

 

未来4月号からもう1年間、工房月旦を執筆します。
担当は、紀野・高島・飯沼・江田、各選歌欄です。

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工房月旦5月号    鈴木麦太朗

  崩したる文字にはあれど〈愛〉らしき 
  青墨淡くまろまろとして 萬宮千鶴子 
 淡い青墨のやわらかな感じ、丸みを帯びた
字体、かろうじて「愛」と読める崩し字。書
道作品に魅せられた作者の気分がよく伝わっ
てくる。
  自動ドアにぶつかりそうな3歳児、くら
  い 経験による目測   田島 千捺 
 3歳くらいに見える子供を「3歳児」と断
定せず、その判断理由をていねいに説明する
ことで、そこはかとないユーモアが生まれた。
上句の危うさとの微妙なバランスもいい。
  角砂糖かたちが好きだ熱い湯にほろほろ
  とけていくやりかたも  峰  千尋 
 結句の「やりかた」という表現に立ち止ま
った。角砂糖が自らの意志で溶けていくよう
にも感じられて面白い。また角砂糖を紅茶な
どではなく湯に溶かすという行為に驚いた。
作者はよほど角砂糖の溶けゆく姿が好きなの
だろう。
  酒飲めば饒舌になるこの孫は気の使い過
  ぎ まあそこらへんに  新居 千晶 
 結句に惹かれた。孫をやさしくたしなめて
いる台詞をそのままもってきたのだろう。一
文字の字余りであるが、そこに引っかかりが
あり味わいとなっている。
  冬の蠅まひるまに脚ひき摺りて橇を引い
  てるトナカイ、みたい? 千葉 弓子 
 怪我を負った蠅を独特の比喩で表現した。
蠅とトナカイは容易には結びつかないがその
大胆な飛躍は手柄である。また?マークによ
る読者への問いかけは工夫であり面白い。
  初場所の呼び出しの声のびやかに震災地
  の力士次々呼ばれて   森松さち子 
 力士が土俵入りするときは四股名に続いて
出身地、所属部屋がアナウンスされる。国内
出身の力士であれば都道府県名が唱えられる
ので、ことに震災など災害のあった地域に住
む人びとは勇気づけられるものだ。そんな事
象をこの歌はうまく捉えている。
  鮮やかなる君のサラダはうまかりき「み
  つよしサラダ」とわれら命名す 
              布宮 慈子 
 「みつよし」は名字だろうか名前だろうか。
いずれにしても斯様に命名されるほどのサラ
ダということは相当おいしいのだろう。さら
に「鮮やか」とあるので見た目も優れている
のだろう。食してみたいものだ。
  再雇用の仕事、水泳、孫の世話、バンド、
  自治会、疲れがたまる  岡田 淳一 
 疲れがたまるのは事実かもしれないが、作
者の充実した生活が伝わってきて、むしろ羨
ましく思った。
  ぬいぐるみはくまくまパンダ木の椅子に
  座らせ今日の名前をつける
            しま・しましま 
 二頭のクマと一頭のパンダなのか、あるい
は「くまくま」という名を付けたパンダなの
か、わからないけれどリズムが楽しい。作者
の筆名と響き合っているのも面白い。
  分断の進むアメリカこの秋に高齢・毒舌
  いづれを取るか     服部 一行 
 なるほど納得の「高齢・毒舌」。あの二人
を実に端的に示す言葉である。アイロニーが
効いていて、どうせどちらを取ってもダメだ
ろうという諦念も感じられる。
 最後に、歌は引かないが47ページの坪井燎
さんの作品は相当に攻めていて、面白く読ん
だことをここに記しておく。

 

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