玄関で靴下ざっと剥ぎ取ってぺたぺた歩く夏がきました
夕映えにレッドキングのシルエット遠ければ遠いほどあこがれる
うつくしきスローカーブを空振れば一瞬にして体透きとおる
つみ残す庭の草から種こぼれわたしゆっくりゆるしてもらう
改行の右にひろがる広野ありてその眺望のかぎりなきこと
せわしなき影ひき連れて黒揚羽ただひとたびの夏をよろこぶ
化粧品売り場むやみにあかるくてわが魂は影を濃くする
ガス管と水道管はからみあう苔むす庭のふかいとろこで
裏庭からほふく前進でやってくるゼニゴケたちは好ましからず
かんかんと鳴り始めたる踏切りをいそぎ渡ってゆく夏帽子
_/_/_/ 未来11月号掲載歌 _/_/_/
_/_/_/ ニューアトランティス欄 _/_/_/