いっせいにほろびの呪文を唱えれば並行世界がスクロールする
やわらかなバスが来るのを待っているサツキとメイの傍らに立ち
八月はかなしみの壁 泣きそうな声の少女を見ていられない
くろねこと見習い魔女は空をとぶ古典力学を置き去りにして
人間のようなタヌキに囲まれているかもしれず小田急線内
礼節を知りたる猫の男爵をジェントルニャンと呼べばたのしも
スピードと回転を得てよろこべば星の子供は宇宙をはしる
ぽにょぽにょの赤い体が集まっていもうとたちのトライポフォビア
かすかなるポトフの香りがとどくとき床下人をわれは疑う
月の夜は一旦停止の標識に御門のあごの尖りを思う
※ ルビ 御門(ミカド) 10首目
_/_/_/ 未来9月号掲載歌 _/_/_/
_/_/_/ ニューアトランティス欄 _/_/_/