夏は来ぬ 南天の葉がとめどなくとなりの庭にはみ出していて
水道の蛇口の高さに伸びている狐薊の孤高ぞよろし
母子草、姫踊子草、小錦草 根こそぎ抜いてゆかねばならぬ
杉菜ってきみどり色の炎だね それはともかく抜かねばならぬ
連休だ。どこへ行っても混んでるに決まってるんだ。われは草引く
一生を草引き過ごすこともよし それで暮らしてゆけるのならば
十薬の根のやわらかさうらむべし優柔不断なわれにさも似て
竜の髭を決して抜いてはなりません きみの言葉を守るひたすら
草引けば二時間ほどはまたたく間 土の匂いに癒されている
草引いてぬっと出てきた芋虫をもとに戻して土かけなおす
※ ルビ 狐薊(きつねあざみ)
_/_/_/ 未来9月号掲載歌 _/_/_/
_/_/_/ 笹公人 選歌欄 _/_/_/