海辺の自然観察会で出会った草木にて
習作 二十一首 (覚え書きとして)
静かなる地対空型ミサイルよメタセコイアの根もとはうずく
ワシントンヤシは二列に植えられて風の通りのよろしき車道
ゆうなぎは一日いちどおとずれてクロマツの葉を枝にとどめる
サンゴジュはクチクラ層をつみかさねまたつみかさね輝石とならん
海からのしめった風をうけ流しユッカゆらりとゆれる夕暮れ
コンクリの壁にかくれたヤブツバキふざけた奴をゆるしてあげて
マテバシイ葉っぱくるくる回すならカケスはとまるところに困る
わたくしはうす紅色に染められてオオシマザクラの葉につつまれる
海の辺の恋人たちは海をみるツワブキの花はひとりが好きだ
ヒヨドリはぴいよぴいよと鳴きやまずサネカズラの実の紅は濃くなる
ぼんやりとしていることが多くなるアキニレの実のうすっぺらさよ
酔いどれの宵のわたしはあこがれるスダジイの実のあぶら炒めに
アベリアの花の奥ではカマキリがましろき泡を吹いているらし
ヒメユズリハの生い茂る神殿に可視光ばかり集まってくる
マユミには雄と雌との木のありておんなの弓はおんなのしなり
サザンカの花びらゆるくこぼれゆく先に逝ったら楽だと思う
母の母のにおいのようだクスノキの下に落ちてる小枝を折れば
われわれの行くべきところを指すようにオリーブの葉はみな上を向く
チューリップツリーの葉っぱのおおかたは星の形に切り抜かれてた
ころころりまるい実を持つウバメガシ備長炭に化けるゆくすえ
黄泉の淵からのにおいをまとわせてハマヒサカキは羽虫を寄せる