ソラの視線に気がついたウミは、さっとソラの後ろに回ると、こちらに向かってくる警察官の顔を、じっと探るように見た。
つばの広い帽子を被った警察官は、ガムを噛んでいるのか、片方の頬を吊り上げ、含みのある笑みをニヤニヤと浮かべながら、モグモグと口を動かしていた。でっぷりと突き出した腹で、ズボンのベルトが隠れた腰には、重そうな拳銃が下げられていた。
トッザザ、トッザザ――
と、靴音を鳴らしながらやって来た警察官は、持っている警棒を片方の手で握ったり離したりしながら、気だるそうに言った。
「おまえら、こんなところでなにやってるんだ」
なんと答えていいのか迷ったソラは、首をかしげて口ごもり、目をそらしてうつむいた。
「口がきけないのか? それとも、言葉がわからないのかねぇ」警察官は、からかうように言った。「ははん。もしかすると、肌の色が違う人とはお話ししちゃいけないって、ママに言われてるのかな」
ウミは、凍りついたようにじっと身動きもせず、ソラはなにを言われているのかわからないまま、もじもじと自分の指先をいじっていた。
「つい昨日のことさ、白人と黒人の子供達が、ケンカを起こす騒ぎがあったばかりだ。ここいらじゃ、子供だからって油断できやしねぇ。なにかとあれば、肌の色の濃い連中が、荒っぽい騒ぎばかり起こしやがる……」
「ふーん、そうなの。初耳ね――」
うつむいていたソラが顔を上げると、サングラスをかけ、長い髪を後ろにまとめたシェリルが、いかにも不機嫌そうに顔をしかめて立っていた。
「――で、この子達になにか用かしら?」
「……なんだよ、白人じゃねぇか。驚かすなよ――」
「この子達とどんな関係なんだって、そう言いたそうね」
シェリルが言うと、警察官はモグモグさせていた口を止め、ぺっと路上にガムを吐き出した。
「悪いことは言わねぇ。こいつらの肩を持つと、痛い目に遭うぜ」
「そっちこそ、なにを狙っているのか知らないけれど、黒人の多いこの地区で、我が物顔に肩で風を切って歩いていると、腰の拳銃なんか抜くひまもないくらい、あっという間に棺桶の中に押しこまれるわよ」
警察官は口を真一文字に結ぶと、つまらなさそうに「ちぇっ」と言いながら、やって来た道を戻っていった。警察官が向かった先には、道路の端に寄って停車しているパトカーがあった。フロントガラスが光を反射して見えにくかったが、もう一人別の警察官が運転席に座っていた。ソラ達が妙な動きをしないか、こちらの様子をじっとうかがっていたようだった。
つばの広い帽子を被った警察官は、ガムを噛んでいるのか、片方の頬を吊り上げ、含みのある笑みをニヤニヤと浮かべながら、モグモグと口を動かしていた。でっぷりと突き出した腹で、ズボンのベルトが隠れた腰には、重そうな拳銃が下げられていた。
トッザザ、トッザザ――
と、靴音を鳴らしながらやって来た警察官は、持っている警棒を片方の手で握ったり離したりしながら、気だるそうに言った。
「おまえら、こんなところでなにやってるんだ」
なんと答えていいのか迷ったソラは、首をかしげて口ごもり、目をそらしてうつむいた。
「口がきけないのか? それとも、言葉がわからないのかねぇ」警察官は、からかうように言った。「ははん。もしかすると、肌の色が違う人とはお話ししちゃいけないって、ママに言われてるのかな」
ウミは、凍りついたようにじっと身動きもせず、ソラはなにを言われているのかわからないまま、もじもじと自分の指先をいじっていた。
「つい昨日のことさ、白人と黒人の子供達が、ケンカを起こす騒ぎがあったばかりだ。ここいらじゃ、子供だからって油断できやしねぇ。なにかとあれば、肌の色の濃い連中が、荒っぽい騒ぎばかり起こしやがる……」
「ふーん、そうなの。初耳ね――」
うつむいていたソラが顔を上げると、サングラスをかけ、長い髪を後ろにまとめたシェリルが、いかにも不機嫌そうに顔をしかめて立っていた。
「――で、この子達になにか用かしら?」
「……なんだよ、白人じゃねぇか。驚かすなよ――」
「この子達とどんな関係なんだって、そう言いたそうね」
シェリルが言うと、警察官はモグモグさせていた口を止め、ぺっと路上にガムを吐き出した。
「悪いことは言わねぇ。こいつらの肩を持つと、痛い目に遭うぜ」
「そっちこそ、なにを狙っているのか知らないけれど、黒人の多いこの地区で、我が物顔に肩で風を切って歩いていると、腰の拳銃なんか抜くひまもないくらい、あっという間に棺桶の中に押しこまれるわよ」
警察官は口を真一文字に結ぶと、つまらなさそうに「ちぇっ」と言いながら、やって来た道を戻っていった。警察官が向かった先には、道路の端に寄って停車しているパトカーがあった。フロントガラスが光を反射して見えにくかったが、もう一人別の警察官が運転席に座っていた。ソラ達が妙な動きをしないか、こちらの様子をじっとうかがっていたようだった。