くりぃーむソ~ダ

気まぐれな日記だよ。

機械仕掛けの青い鳥(55)

2019-05-25 22:26:34 | 「機械仕掛けの青い鳥」
「安っぽいSF小説みたいな話だと思ったが、どうも、きみ達の創作にしては、筋立てが具体的すぎる。それに驚いたが、実は私も、その青い鳥を見ているんだよ」
「えっ、知ってるんですか」ソラが言うと、牧師はニッコリと笑った。
「きみ達の話を聞いて思い出したんだ。5年前に首都で行ったデモ行進で、スピーチの演壇に立った時、確かにいままで見たこともない、真っ青な鳥が飛んでいるのを見たんだよ。わたしは、青い鳥が神様の化身に違いないと思い、デモに参加してくれたみんなに向けて、夢の話をさせてもらったんだ」
「じゃあ、信じてもらえるんですね」ソラは、ベッドから立ち上がって言った。
「ああ、ありがとう。勇気を出して私に会いに来てくれて」牧師は立ち上がると、二人と握手をした。「――そう言えば、私を狙っているという犯人は、どうなっているんだろうね」
「それなら、心配いりません」と、ソラは胸を張って言った。「ぼく達と同じように未来からやって来た忍者が、犯人の所へ一足先に行っていますから」
「忍者?」
 牧師は、得意になっているソラの顔を見ながら、不安そうに言った。

 ――――――――

 シェリルは、この街にやってきてから手に入れた車を運転し、牧師が泊まっているホテルのそばでソラ達を降ろすと、歴史上で犯人とされる男の元へ向かった。
 記憶が確かならば、犯人は、牧師を暗殺するため近くのホテルに部屋を借り、一番見通しのいいバスルームから、部屋を出てくる牧師を狙って、ライフル銃の照準を合わせているはずだった。
 牧師が宿泊しているホテルを左に見ながら、シェリルは犯人の男が宿泊しているホテルを探した。別の街で犯罪を犯し、牢獄に入っていた男は、課せられた刑をまっとうすることなく、脱獄して警察から追われている身だった。当然、本名など名乗ることもできず、その場しのぎにつづったジョンという偽名で、部屋を借りているはずだった。
 住宅が並んだ通りには、縦列駐車の車がズラリと両側に列を作っていた。止められている車の中、犯人が乗っていたと思われる白い車は、意外にもすぐに見つかった。シェリルは、怪しい車を過ぎて適当なスペースを見つけると、通りの端に寄せて車を止め、意を決してホテルに向かった。
 ――今にも壊れそうなドアを開けると、すぐ前に階段が見えた。シェリルは、靴音も高く階段に足を伸ばすと、一歩ずつ、踏みしめるように登っていった。
 と、階段の手前の開け放されたドアの奥から、女の人の声が聞こえた。

「誰だい、誰かきたのかい?」

 階段に足をかけたシェリルが振り返ると、部屋の中から顔を出したのは、細い鎖で結わえた眼鏡を、ネックレスのように首からぶら下げた年配の女の人だった。
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