くりぃーむソ~ダ

気まぐれな日記だよ。

機械仕掛けの青い鳥(49)

2019-05-19 20:07:19 | 「機械仕掛けの青い鳥」
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 ソラとウミが手掛かりのない穴を通り、無事に下水道に降りると、バタン、と乱暴に鉄の蓋が閉められ、辺りが急に光を失った。
「おわっ」と驚いたソラは、ぎくりと首をすくめながら、閉められたばかりの蓋を見上げた。
「どうしよう。暗くて、なんにも見えないよ……」水路の真ん中に立ったウミが、ぶるぶると小さく震えながら、心配そうに言った。
「大丈夫だよ。お兄ちゃんの手をしっかり握って、離さないで」ソラは言うと、自分達の前後に延びている水路の奥を見通し、遠くに見えている薄明かりに目をこらした。
「マット達が心配しているかもしれない。ぼく達も、早くみんなの所に急ごう」
 こくりとうなずいたウミの前に立ち、ソラは歩き始めた。
「きっと、こっちだと思うんだけど――」
 じめじめとしたコンクリートの壁に手を触れながら、ソラはゆっくりと、ほとんど光の差さない暗闇の中を進んで行った。

 ズズン――。

 いくらも行かないうち、足下が、大きく左右に揺れた。
 二人は立っていられず、壁に手をついて足を止めると、向かっていた先の天井が、ガラガラと音を立てて崩れ落ちてきた。土砂が、あっという間に行く手をさえぎり、ツンと鼻の奥を刺激する生臭い土のにおいが、辺りに充ち満ちた。
 バラバラと落ちてくる土砂は、隙間もないほどびっしりと水路を埋め尽くし、あふれ出た土砂が、二人の目の前にまで迫ってきた。
「こっちはだめだ、引き返そう……」
 ソラが言い終わるのを待たず、ウミは前を向きながら後ろに下がると、ソラの手を握ったまま、くるりと踵を返して走り出した。
「――ちょっと、ウミ、危ないってば」
 ピチャピチャと水たまりを跳ね上げ、二人はかすかに見える明かりを目指して、水路を一目散に駆け抜けて行った。
 天井から洩れ差す光が、だんだんと近づいてきた。ウミを追い越したソラが、うれしそうに言った。
「もう少しだ、がんばって、ウミ」
 濃い闇が薄れ始め、互いの顔が見えるほど明るさが増してくると、おっかなびっくり地面を蹴っていた足にも、しっかりと地面を踏みしめる力強さが戻ってきた。
 徐々に明かりが近づいてくるにつれ、なぜか人の話し声ではない、聞き慣れた街の喧噪のような音が、ザワザワと聞こえてきた。
 ソラは、まぶしくて、先が見えない光の壁の中に飛びこんでいった。
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