くりぃーむソ~ダ

気まぐれな日記だよ。

大魔人(21)【5章 調査】

2021-06-30 19:16:11 | 「大魔人」
         5 調査
 朝。
 いつものお勤めを終えたあと、アマガエルは空のような青い色のシャツに着替えると、
「いってきまーす」
 と言って、家の玄関を出た。
 ここのところ、なにかといそがしそうにしている姿を見て、住職である父親は、本業がおろそかになる、と渋い顔をしていたが、母親は反対に、怪我をするようなことはやめてほしい、と心配している様子だった。

 アマガエルが向かったところは、キクノさんの孫が通う小学校だった。

 二人の姉弟は、いつも決まって、一緒の時間に家を出るのが常だった。
 ゆっくりと、ペースを計って歩く向こうから、姉弟より先に家を出た父親が、軽く早足になって、こちらにやって来た。
 アマガエルが父親とすれ違うと、ちょうど家を出た、小学生の姉弟の後ろ姿が見えた。
 小走りになられると、小学生の足でも、ぐんぐんと距離を離されるが、一人二人と知り合いの顔が増えるてくると、二人の足取りは急に遅くなり、アマガエルも、やっと二人に追いつくことができた。
 初めて姉弟を見た時は、キクノさんの話が、まるで信じられなかった。
 どこにでもいる、ごく普通の小学生に見えた。
 ただ、登校する時間に合わせて、この三日間、姉弟と一緒に歩くうち、少なからず、回りの雰囲気がおかしなことに、気がついた。
 通学路で知り合いの姿を認めると、お互いに挨拶は交わすが、姉の方は黙ったままで、相手よりも先に出ないよう、わざと歩くペースを遅くしているようだった。
 その点、弟の方はどこかあっけらかんとしていて、知り合いに会うと、小学生らしく無邪気にじゃれ合うが、姉を気遣ってか、一人で先に進むことはなかった。
 遠巻きに避けられているのは、やはり姉の方だった。
 姉弟の母親の話しによれば、異常行動が始まって1年以上経った今でも、不意の発作のように、時折、異常な行動が見られるらしかった。
 それは家だけではなく、学校でも、同じように見られるのだという。
 しかし、病的にも思える行動と、周辺で見られる現象の内容とを聞けば、どれも小学生の女子がやったこととは、思えなかった。
 授業中に、突然立ち上がって、呪文のような物を唱え始める、といったことであれば、精神的な不安定さに、原因があるのかもしれなかった。しかし、大きな雹が降ってくるとか、カラスの大群がグラウンドの上空を群れ飛ぶとかいう現象について、どちらも異常行動と直接関係しているとするのは、どうにも無理矢理すぎる気がした。
 少女の異常な行動と、めずらしい現象のタイミングが奇妙に合致したため、あたかも少女が現象を引き起こしたかのように、見えるだけではないか。
 説明がつかないことがらを、同じように説明がつかない少女の言動とに結びつけて、安易に結論づけようとしているだけのようだった。
 アマガエルが、二人の様子をうかがいながら歩いていると、わずかのあとに、二人は小学生の子供達の流れに合わせ、学校の門をくぐって、靴箱が並ぶ玄関に向かっていった。
 通りを先に進む大人達の中に混じって、アマガエルは小学校の門を通り過ぎると、ややもして、校舎を横目に立ち止まった。
 丈の低い生け垣の向こうに見える校舎の中から、元気のいい子供達の騒々しさが、空気を揺らすかすかな振動になって、伝わってきた。
 姉弟が授業を終えて下校するまで、ここにいるわけにもいかなかった。
 学校の中で、なにかあるかもしれないが、少女が異常行動を起こすきっかけがわからなければ、ただ待ち続けていても、徒労に終わるのは目に見えていた。
 やはり気になるのは、弟のノートに見つけた、短い書きこみだった。
 アマガエルは、駅に向かう人達と同じ方向に向き直ると、またゆっくりと歩き始めた。
 通勤で、駅に向かう人達の中に混じりながら、今日の昼は何にしようか、考えていた。
 明日で5日目になるが、少女の異常行動がいつ起こるか、その実態を見るまでは、同じ生活を続けるしかなった。
 異常行動をする姉と比べ、弟の方は、繰り返し悪夢を見ると言っていたそうだが、それは、アマガエルが見た、あのノートのことなのだろうか。
 なにが書かれているのか、まるでわからなかった。しかし、なにかの法則というか、文章を記す約束事のような物が、あるようにも見えた。数枚の写真を携帯電話に収めたが、見直しても、規則的に配置された記号のようにも見えるが、なにが書かれているのか、さっぱりわからなかった。
 読めたのは、弟のノートになぜが姉が書いた、“外国人、宗教、二人組”という文字だけだった。
 わずかに汗ばむほどの距離を歩いて、目の前に大きな駅の建物が見えた。
 さすがに通勤時間だけあって、駅に出入りする人の流れが、わずかにも途絶えることはなかった。
 アマガエルは、駅前のコンビニエンスストアに入ると、いつものサンドイッチとミルクを買った。
 小さな袋を揺らしながら出入り口に向かうと、どうして、いつも決まって同じ物を買ってしまうのか、変化のない自分に、我ながらため息をついた。
 と、自動ドアを抜けた先に、本がびっしりと並べられた、書棚のある部屋が現れた。
 アマガエルは、まぶしそうにパチクリとまばたきをすると、慣れた様子で、書棚の列の間を進んで行った。
 小学校は、1時間目の授業が始まってから、まだあまり時間は経っていなかった。
 姉弟が通う、小学校の図書室に現れたアマガエルは、入口から陰になる席を選び、腰を下ろした。
 書棚には、小学生向けの本がびっしりと収められていたが、中には、大人向けの小説もいくらか混じっていた。普段から、石蔵の中に閉じこもっていることの多いアマガエルにとって、読み放題の本に囲まれている環境は、贅沢に過ぎた。
 アマガエルは、昼食の入ったレジ袋を隣の椅子に置くと、さっそくお気に入りの本を手に取った。




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よもよも

2021-06-30 06:10:20 | Weblog
はてさて。

最近暑いせいでやたらペットボトルの飲み物の消費が激しい。

ちょい昔? だったら麦茶は自分で煮出して

冷やしてたけど、

最近は買い物で調達してくるようになってる。。

考えてるのはみんなも同じみたいで

コンビニも時期になんなきゃ麦茶なんて置いてなかったけど、

ここんところは年間通して置くようなったよね。。

弁当食べたりするのにお茶もいいんだけど、

カフェインが入ってると眠くなんなくなったり

妙に神経高ぶったりすることがあるから、

がぶ飲みしても後に影響のない麦茶ってば、

最高だよね。。

で、昨日も仕事終わりに24時間スーパー行って

麦茶やら飲み物買ってきたんだけど、

並んでたスイカはやっぱしまだ高くって買えなかったXXX

とほほ。
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大魔人(20)

2021-06-29 19:26:09 | 「大魔人」
 と、これ以上は、問題に関わりたくない、といった言い方だった。
「一度、姉弟と話をしてみたいんですが、可能でしょうか」と、アマガエルは言った。
 母親は、はっきりとは断らなかった。今はなるべく、二人をそっとしておいてほしい、ということだった。

「――やっと落ち着いてきたので。申し訳ありませんが」

 アマガエルは、姉弟の状況を報告をしなければならないので、二人の周辺をしばらく調査するが、それは許可していただきたい、と母親の承諾を得ることができた。

「二人の部屋は、2階ですか」

 と、アマガエルは天井を指さして言った。
「ええ、そうですけど――」と、母親は顔色を曇らせた。「もうそろそろ、学校が終わる時間なので」
 アマガエルは、まだ熱いお茶をすすると、「お邪魔しました――」といって、姉弟が住む家をあとにした。
 玄関まで見送りにきた母親が、歩き去るアマガエルの歩調に合わてドアを閉めると、計ったように、アマガエルが立ち止まった。
 と、目にゴミが入ったのか、アマガエルはまばたきをすると、そこは、姉弟の部屋の中だった。
 静かに靴を脱ぐと、そっと持ち上げ、なるべく足音を立てないよう、並んで置かれた机に向かった。
 姉の机は、女の子らしく、きれいに片づけられていた。弟の机の方は、見た目だけはいいように、あわてて片づけたのが、ありありとわかった。
 おおかた、机に置かれていた物を、幅の広い引き出しに放りこんだのだろう。片手に、脱いだ靴を持ったアマガエルが、引き出しを開いた。
 引き出しの中には、筆記具やらノートやらが、無造作に押しこまれていた。
「こりゃひどい」と、人ごとのように言ったアマガエルだったが、普段の自分に対する戒めも含んで、の言葉だった。
 怪しまれないよう、慎重に部屋の中を見ていったが、たぶん母親が、定期的に掃除に入っているらしく、目につくような物は、なにもないようだった。
 つい最近まで、異常行動をしていた姉が、急に普通に戻るはずもなく、そう考えると、どこか違和感を覚えずにはいられなかった。
 アマガエルは、見回していた動きを急に止め、弟の机に向き直ると、先ほど中を見た引き出しを、もう一度開いた。
 掃除に入っているにもかかわらず、机の中だけが、自然な感じで散らかっていた。
 明らかに、なにかを隠そうとしているのに、違いなかった。
 散らかっている物を、散らかさずに確かめるのは、至難の業だった。
 と、一番奥まった所に、ノートがあるのが見えた。小学生が使っている、別段変わり映えのないノートだった。
 アマガエルは、ノートを取り出した。表紙には、なんの教科のノートか、書かれていなかった。しかし、そのよれ具合からすると、相当使いこんでいるはずだった。
 中を見て、アマガエルはぞっとした。
 最初の数ページほどは、他愛のない落書きだった。表紙にタイトルが書かれていなかったのは、自由帳であったためらしかった。
 しかし、そのページ以降は、見たこともない文字やら図形やらで、びっしりと埋めつくされていた。
 図鑑や教科書では、見たことのない文字? だった。それが、びっしりとのノートの後半まで続いていた。
 姉弟が、なにかのごっこ遊びで書いたのかと思ったが、冒頭の数ページと以降のページとを比べると、どういうわけか、明らかに筆跡が違っていた。
 思いつくままに書かれたページは、小学校の低学年が書いたであろうことは、ひと目でわかった。なにが書かれているかわからない、といった点では一緒だったが、そのほかのページは、その文字? を知っている者が、忘れないうちに素早く書き出した文章、のようにしか、見て取れなかった。筆圧も強く、ノートに深く彫りこむようにして、書かれていた。
 ノートは、それだけではなかった。机の本立てに片付けられていたノートを手にすると、同じような書きこみが、ノートから溢れ出しそうなほど、びっしりと書かれていた。
 これらのノートは、明らかに片付けられていた。
 ということは、掃除をしたであろう母親も、知っているに違いなかった。
 しかし、先ほど二人で話した中には、見知らぬ文字で書かれたノートについては、ひと言も触れていなかった。
 なぜ母親は、このノートを隠したいのか。そこまでは、まるでわからなかった。
 もしかすると、母親にはこの文字? が読めるのかもしれなかった。
 と、ノートの余白に、普通の文字が書かれているのを見つけた。
 “外国人、宗教、二人組”
 それだけだった。なにか、連想ゲームのクイズを出されているようだった。
 よく見ると、弟の字ではないようだった。
 アマガエルは、姉の机を見た。なんでもいいから、書かれた文字が見たかった。
 と、机の中にノートを見つけた。5年と書かれているこことから、今年使っている物のはずだった。
 表紙を開くと、すぐに文字が見つかった。やはり、弟のノートに書かれていた文字と、どこか筆跡が似通っていた。
 アマガエルはノートをしまうと、弟のノートのページは写真に収め、元どおりに戻して、机の引き出しを閉めた。
 ――――
 小さく瞬きをするアマガエルは、もう一度振り返って、子供達の部屋がある2階を見上げた。
 どこといって特徴のない、普通の住宅だった。
 ただ、その中で起こっていることは、容易に想像できるようなものではなかった。
 アマガエルは、姉弟が住む家に背を向け、歩き始めた。




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よもよも

2021-06-29 06:08:52 | Weblog
はてさて。

もう6月も終わっちゃうんだけど、

なんか暑い・・・。

スーパー行くとスイカもぞろぞろ出てきてて、

でもなんかスイカって言うとさ、

夏休みとか海とかってイメージがあって、

まぁ勝手なイメージなんだろうけど、

6月にはなんかあのビジュアルってふさわしくないと思う。

食べたいけど、暑さにかまけてがっついたらいくらでも食べられそうな気がして、

なんかお腹壊しそうに思うから、まだ買って食べてない。。

だけどなぁ。おいしそうだよね??

ってか、最近は糖度計ってかあ売ってるから、

買ってたいして甘くもない、なんて外れはないんだっけ??

それ考えると、カットしてるやつじゃなくって、まるっと1個買いたいけどなぁ、

やっぱり食べ過ぎちゃうからなぁ・・・。

へへ、夏はこれからだし。

今年こそは、悔いの残らないように食いだめしたい。。
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大魔人(19)

2021-06-28 19:17:55 | 「大魔人」
「急に別な場所に現れるとか、姿を消すとか、そういったことですか?」と、アマガエルは言った。
「飛び上がるんだよ、ボールが弾むみたいに」
「は?」と、アマガエルは苦笑した。
「私も信じられなかったさ。息子が撮影した映像を見るまではね。まるで自分に鞭打つみたいに、天井と床の間を、ドシンドシン――てね」
 キクノさんは、不慣れな手つきで携帯電話を取り出すと、息子さんが送ってきたというメールの一部を、アマガエルに見せた。
 決して見やすい映像ではなかったが、作り物ではないというのが、むしろ不思議なほど、迫力のある映像だった。
 ケイコちゃんと思われる女の子が、部屋の天井と床を、自分を鞭打つようにぶつかりながら、何度も繰り返し飛び跳ねていた。
 映像を加工するでもない限り、人の力で、どうにかしようとしている物でないことは、はっきりと見て取れた。
 アマガエルが見た映像は、もう半年以上も前の物なのだという。では一体、現在の状況はどうなのか? アマガエルが聞くと、キクノさんは、その後の話を聞かせてくれた。
 当然というか、女の子は病院で診察してもらうことになった。
 両親としては、心配でしかたがなかったようだが、医師の見立ては意外なもので、病気ではないという。
 何件も病院を訪ねては、娘に異状がないか、診察を受けたが、どの医師も首を振るばかりで、両親だけが「そんなはずはない」と、医師の診断を信じようとしなかった。
 やっとクスリを出してもらえる病院を見つけたが、親が注文するとおりの診断をする医師で、女の子の症状がよくなることはなかった。
 原因もわからぬまま、結局病院での治療はあきらめたが、そうこうしているうちに、症状が落ち着いたこともあって、現在ではまた、学校に通っているのだという。
 ただ、その学校でも、授業中に突然立ち上がっては、宙になにかを書くような動作をしたり、呪文のような物を繰り返し唱え始めたりしたことが、何度かあったということだった。
 イタズラのターゲットにされていたという弟は、どうしているのか。
 キクノさんは、ただ頭を抱えるだけだった。
 姉の異常な行動が激しくなってきたとき、キクノさんの家でしばらく女の子を預かろうという話があったが、お姉ちゃんと離れたくない、と弟が泣きながら訴えたのだという。
 理由を聞くと、実は弟にも異変が起こっていて、同じ悪夢を、何度も繰り返し見るのだという。
 恐ろしい悪夢で、目を閉じるのが怖くなるほどだが、勇気を出して姉に助けを求めると、夢に現れた姉が、助けてくれるのだ、と言っていたらしい。
 どうにも手に負えなくなった両親は、姉弟をまたひとつの部屋に戻したが、それ以来、女の子の異常行動は落ち着き、弟も悪夢を見なくなったのだという。

「で、タッちゃんに調べてもらいたいんだ」と、キクノさんが言った。「二人が、どうしてそうなったのか。もう、治ったっていうんなら、それでもいいんだ。ただ、せっかく落ち着いた二人が、これからどうなっちゃうのか、心配でしょうがないんだよ」

 アマガエルは、難しい顔をしながらも、うなずいて言った。
「キクノさんの頼みなら、引き受けないわけにはいかないですね。できるところまでですけど、やってみますよ」
 どこまでできるかわからない、と前置きしつつも、アマガエルはキクノさんから、家族の情報を、できうる限り話してもらった。
 姉のケイコちゃんが異常行動をするようになったのは、誕生日が過ぎた2週間後の、夏休みが始まろうとしている前後からだった。4月に学年がひとつ上がって、クラス替えがあったことにも、原因があるのかもしれなかった。
 おばあちゃんのキクノさんは、それほど古い時代の人ではないが、お寺に足繁く通うほど信仰心が強いせいか、「どんなことが考えられますか」というアマガエルの質問に、なにか動物の霊でも憑いたんじゃないだろうか――と、オロオロするばかりだった。
 部屋の中を飛び跳ねるなんて、いくら実際の映像を見せられても、素直に受け入れることはできなかった。
 キクノさんじゃないが、絵に描いたような悪魔でも、乗り移ったんじゃないだろうか、なんて、疑いたくもなった。
 門前払いは覚悟の上で、姉弟が暮らす家を訪ねた。
 平日の午前中だったが、アマガエルがインターホンを押すと、以外にも奥さんが返事をしてくれた。
「どちら様ですか」と、奥さんが抑揚なく言った。
 アマガエルはすかさず、「スクールカウンセラーの加藤龍青です」と、聞いたこともない職業を答えていた。
 しかし意外にも、アマガエルは家の中にすんなり入る事ができた。どうやら、キクノさんが、あらかじめ母親に連絡を入れておいてくれたらしかった。
「お母さんの方から、ボランティアの人って聞いたんですけど」と、お茶を持ってきた母親が言った。
「――そうです」と、アマガエルは笑顔で返事した。「子供専門に、カウンセラーをしている者です」
 アマガエルは、上着のポケットから名刺を取り出すと、母親に差し出した。
「かとう、リュウセイさん」
「龍青と書いて、タツオと読みます」
「近所のお寺さんの人なんですか?」母親が言うと、アマガエルは「そうです」と言って、うなずいた。
 母親に、娘のことについていろいろ尋ねたが、キクノさんに比べ、当事者である本人は、ただ混乱しているだけのように感じられた。
 ここのところ、現象が治まってきた、という理由については、
「弟と一緒の部屋に戻って、安心したのだと思います。急に一人になるのは、孤独で寂しいですから」と、母親は言った。「年上なのに、弟が一緒じゃないと不安でおかしくなるなんて、まだまだ子供だったんですね」




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よもよも

2021-06-28 06:18:50 | Weblog
はてさて。

動画サイトで、最近流行ってるマンガの

解説動画見てたら、なんか読んで見たくなって、

ひさびさ本のリサイクル屋さん探して買い物に行ったんだけど、

考えることは誰でも同じらしくって、

最初の方の巻がなかったから、Uターンして原価の本屋さんへ。。

だらだらとって言っちゃ悪いけど、

結構少年誌のマンガって人気が出ると巻数が増えていく感じがあるけど

完結してるってのがわかってるから、

面白いってのはまず基本にあるとして、どうやってまとめていくんだろうって

そんな嫌らしい読み方も含めて、最後まで買って読んじゃいそう・・・。

全巻買うみたいな大人買いはやめて、少しずつ買いそろえていく方が、

なんか楽しみが後に続いて行くんで、いい感じがする。。

感染者数がこのまま下降線で流れてくれればいいけど、

買い物のついでに寄り道するのが待ち遠しいわ。。
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大魔人(18)

2021-06-27 19:22:20 | 「大魔人」
 ――――  
 キクノさんから相談があったのは、毎月行っている仏事の後だった。
 仏事といっても、堅苦しいものではなかった。参加する人達も、それぞれ気心の知れた人達ばかりだった。
 本堂に集まった人達が、住職に続いてお経を読み上げ、簡単な挨拶の後、気持ちばかりのお菓子が用意された別室で、自由な時間を過ごす、といったものだった。

「それでは、ごゆっくり」

 と、先に部屋を出た父親に続き、アマガエルが襖を閉めようとしているところだった。
「タッちゃん」と、先ほどまで、ご婦人達と輪になって話をしていたキクノさんが、アマガエルを呼び止めた。
「――どうしましたか」と、アマガエルは静かに笑顔を浮かべた。
「あのね」と、キクノさんは、話しづらそうに言った。「孫のことなんだけどね」
「あ、はいはい。近所に住んでる息子さんのとこの」と、アマガエルはうなずきながら言った。「もう少しで、弟さんの方の誕生日、じゃなかったですか?」
「あら、よく覚えてるね」と、キクノさんが驚いて言った。「タッちゃんには、言ってなかったと思うけど」

 ハハハ――。と、アマガエルは小さく笑った。

「もう何度も聞きましたよ。男の子が10才になるんだって」と、アマガエルが目を細めて言った。「何回聞いたか、忘れちゃうくらい聞きました」

 異変は、去年から始まったのだという。

「お姉ちゃんがね、誕生日だったんだ」と、キクノさんが言った。「嫁さんとは、あまり仲がよくなかったんだけれど、ケイコちゃんが電話してきて、会いたいって言うもんだから、泊まりがけで行ってきたんだよ」
 と、二人は、寺の事務所に場所を変えていた。
「いくつになったんですか?」と、アマガエルが聞いた。
「誕生日はもう過ぎたから、今は11才だね」と、キクノさんが言った。「今年もまた流行が早いみたいだけど、去年は誕生日の2・3日前から、インフルエンザにかかっちゃって、誕生日の支度はしていたんだけれど、10才になったお祝いは、結局なにもしないで終わっちゃったんだよ」
「よくあることです」と、アマガエルはうなずいた。
「――で、次の朝だよ」と、キクノさんが言った。「私は毎朝散歩してるから、その場面は見ていないんだけれども、あとになって息子が言うには、自分の誕生日会で食べるはずだったオードブルを、床に叩きつけたんだって」
「なにかに怒って、というんじゃなく、ですか?」
「ああ」と、キクノさんがうなずいた。「そんなことするような子じゃなかったんだ。おとなしくて弟思いで。ただ、私に似てるから、嫁さんとはどうにも馬が合わない部分があったらしいけど――」
「なるほど」と、アマガエルが言った。「そのもやもやした物が、爆発しちゃったんですね」
「それだけなら、いいさ」と、キクノさんが真剣な顔で言った。「家の中で、こそこそイタズラするようになったんだって」
「イタズラ? 家の中でですか――」
 と、キクノさんが大きくうなずいた。
「それって、面白いのかなぁ。まぁ、小学生らしいですけどね」と、アマガエルが宙を見上げるように言った。「10才って言えば、4年生ですか? まだまだ子供ですよ」
「私のこの年齢になれば、そういいようにも捉えられるさ」と、キクノさんがため息をついた。「――小さなイタズラの積み重ねが、我慢できなくなったんだろうね。嫁さんがとうとう、どやしつけたらしいんだ。こっぴどくだよ」
「――」と、うなずくアマガエルも、真剣になって聞いていた。
「感情をぶつけるだけなら、あとからいくらでも修復できたと思うんだ。親子なんだし。だけど嫁さんは、弟がイタズラのターゲットにされてるのが許せなくて、一緒だった部屋を、無理矢理別にしたんだよ」
「ほう……」と、アマガエルは首を傾げた。「一軒家でしたか」
「――」と、キクノさんは、意外な指摘に顔を赤らめた。「私の子供にしちゃ、出来がよかったんだね」
 と、アマガエルは感心したようにうなずいた。
「だけど息子に聞いたら、それが原因じゃないらしいんだ」と、キクノさんが言った。「ケイコちゃんをただ空き部屋に押しこんだんじゃなく、実は誕生日までにこっそり準備していて、内装もかわいらしく模様替えしていたんだって。誕生日会が予定どおり開かれれば、そのタイミングで、ちゃんとプレゼントしようとしていたそうなんだ。ただ当の本人は、親がそんな計画を立てているなんて知らないし、誕生日会も流れちゃったから、息子達はしかたなく、別の日にタイミングを見計らって、プレゼントする気でいたらしいんだよ」
「――それが、娘さんを叱りつけたタイミングになった、と」と、アマガエルが言った。
「そう」と、キクノさんがうなずいた。「ケイコちゃんも、突然部屋を引っ越すってなって、びっくりしてたらしいんだけど、喜んでたって言うんだ」
「結果オーライでしょうが、まぁ、親には逆らえませんからね」かわいそうに――と、アマガエルは言った。
「わからないのがそこで、見ている限り、ケイコちゃんは、本当に心から気に入っているように見えたって」
「大人で考えれば、それこそ危うい兆候ですよね。自分ではどうにもできないから、表面的に取り繕っていただけかもしれない」
 アマガエルが言うと、キクノさんが、くやしそうに唇を噛んだ。
「――口には出さなかったけど。いや、反発するんなら、母親の悪口でもなんでも、言いたいことを吐き出せばよかったんだ。それができない子だったから、自分でも意識しないで、体が勝手に動き出すようになったんだろうね」





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大魔人(17)

2021-06-26 19:10:17 | 「大魔人」
 父親は、「そんなに気を使わないでください」と、頭を下げていたが、しっかりとお務めをこなしてご褒美をもらう息子を、どこか自慢しているようでもあった。
 仏壇の上に掲げられた遺影を見上げながら、どうしてこんな写真に向かってお経を上げているのか、疑問に思っていた。
 毎朝のお務めでは、いかにも偉そうな金色の仏像に手を合わせているのに、この写真の人達も、同じくらい偉いのだろうか。
 いつも、そんなぼんやりとした疑問に、頭を悩ませていた。
 学校でも時折話が出る、UFOや妖怪になんて、まるで興味を持てなかった。ましてや毎日のように耳にする地獄とか天国とかいう話には、まるで興味が湧かなかった。
 キャラクターを操作するゲームは大好きだったが、好きなテレビは報道番組ばかりで、学校に行っても、クラスの友達とはほとんど話が合わなかった。
 中学生になっても、生活はなにも変わらなかった。
 しかし、だんだんと知識がついてくるにつれ、考え方が人と違うせいか、以前にも増して人付き合いが苦手になった。けれどそれ以上に、小学生だった時と比べ、月参りにもらえるお菓子が、明らかに少なくなったことの方が、気がかりだった。
 ニンジンが言っていたように、「アマガエル」というあだ名を付けられたのも、中学生の頃だった。
 誰が言い始めたのか、その頃は、野球部に入っているわけでもないのに、短い丸刈りだった。家が寺ということで、“おしょう”というあだ名で呼ばれ始めたのが、気がつけば”アマガエル”というあだ名で呼ばれるようになっていた。いつだったか、同じ班の女子とあだ名の話になり、どうしてアマガエルなのか、と聞くと、毎日のように青い色シャツを着ているから、と言われたことがあった。
 確かに、毎日決められた制服で登校していたが、どこかに青い色の入った服も、一緒に身につけていた。
 今になって考えれば、いつも笑い声が聞こえる楽しい教室だったが、妙に冷めていたせいで、生徒達の輪の中にいるのが、苦痛だった。
 寺と同じ敷地にある家に帰ると、一人で石造りの蔵に籠もっていた。
 寺の創建当初からある古い蔵で、鍵はかかっていなかったが、重い扉の金属が錆びついているせいで、そう簡単には開けられなかった。
 なにが仕舞われているかは、石蔵と同じくらい古い目録があるため、どうしても必要があれば、探しに来ればよかった。ただ、今では滅多に使わない古物ばかりで、人がやってくることは、まずなかった。
 石蔵に初めて入ったのは、小学生の頃だった。
 いつも薄暗い部屋は、布団も毛布も机もあり、電気も通っていて、少し片づけただけで、最高の隠れ家になった。気がつけば、食事をしているときとお務めをしている時以外は、ほとんど決まって、石蔵の中で過ごしていた。

「――タツオ、ご飯できたよ」

 と、外から母親の呼ぶ声が聞こえた。いや、厚い石壁の向こうから、母親の声が聞こえた気がした。どうやら、夕飯の支度ができたようだった。アマガエルは、突っ伏していた座卓から顔を上げると、石壁の向こうを見通すように目を細め、袖口で口元のよだれを拭った。

「やばっ――」

 と、パチパチとまばたきをしたアマガエルが、食卓に料理を並べている母親の前に現れた。
「あんた、どこにいたの?」と、2階にいるとばかり思っていた母親は、不意に姿を現したアマガエルを見て、不思議そうな顔をしていた。
「うん。宿題してた」
 と、それは本当のことだった。ただ、ついうたた寝をして、最後まで片づけられなかったことを除けば、だ。
 学校から帰れば、ほとんど外に出ることはなかった。自然、同い年の友達と遊ぶことも少なかったが、寺に出入りする檀家の人達とは、なぜか仲がよかった。
 檀家の人達も、お寺を便利なクラブハウスのように利用していたため、住職に申し訳がないという思いもあってか、アマガエルを孫のようにかわいがっていた。
 すべてシニア向けの情報だったが、アマガエルは同じ世代の誰よりも早く、携帯電話の使い方も、FAXの使い方も、いろいろな家電の接続も、大工仕事も盆栽も、カラオケも覚えるのが早かった。
 そしていつのまにか、教えてくれた誰よりも達者になったので、今度は逆に、携帯電話の使い方も、FAXの使い方も、いろいろな家電の接続も、簡単な大工仕事も、盆栽の手入れも、教えて欲しい、とよく頼まれるようになった。
 アマガエルも、なにかと面倒を見てくれる檀家の人達に頼まれると、嫌な気がしなかった。
 頼みごとの中には、飼っていたペットが逃げたとか、役所で手続きをして欲しいとか、あわてて連絡をもらって、詐欺の被害に遭いそうな所を、助けたこともあった。
 それらはしかし、寺の仕事とは関係がなかった。
 本来のお務めであるはずの葬式については、やはり、いくつになっても、違和感があった。
 生前に仲良くしてくれた故人の葬式でも、手慣れた法要を器用にこなしたが、あの世がどうとかいう経文の中身は、正直、根拠のない嘘っぱちに思えて仕方がなかった。
 説法として、父親の住職が参列した人達に諭す極楽浄土の話は、いつもしかめっ面で聞いていた。
 このまま順調にいけば、父親の住職の後を継ぐのははっきりしていたが、その冷めたところさえなければ、父親に負けないくらい、しっかりやっていけるのに、と自分でも思っていた。





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よもよも

2021-06-26 06:13:08 | Weblog
はてさて。

ここんところいい感じの気温。。

日中は暑いけどからっとしてて、

こんな感じで7月まで行けば、

オリンピックのマラソンもいい感じでスタートできると思うわ。。

渡来のウィルスに結構やられてるけど、

よく見てみりゃ、ついてることもあるもんだよね。

・・・

朝からニュース見りゃインド由来のデルタ株とか、

きな臭い話ばっかでため息出ちゃうけど、

こんな感じが油断になるんかね??

一次ブームになった、眠っちゃいけないホラー映画みたいじゃない。

はぁーあ。朝からため息XXX
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大魔人(16)【4章 依頼】

2021-06-25 19:06:17 | 「大魔人」
         4 依頼
 青空の色を、そのままシャツにしたような服を着た、一人の男がいた。
 男は、アマガエルと呼ばれていた。
 アマガエルは一人、どこかへ向かっていた。
 寺の家に生まれ、いずれは跡取りということで、将来を決められていたせいか、高校受験にみんなが夢中になり始める頃から、一人だけ、どこか穿った目で世の中を見るようになっていた。
 ただ、定期的に開かれる寺の催しで、集まってくる檀家のおじいちゃんおばあちゃん達とは、子供の頃からかわいがられてきたせいか、気後れすることなく、つきあうことができた。
 いつのまにか、一人でいることが多くなっていたが、大人になるにつれ、よくしてくれる檀家の人達から、あれやこれやと頼まれごとをされることも多くなっていた。
 普段なら、寺のお勤めもおざなりで、そんなアマガエルを、厳格な住職である父親は、歯がゆい思いで見ていたが、昔から知っている檀家の人達とは、なぜかうまく接している息子を見て、ぎゅっと唇を噛み、言いたい小言も我慢せざるを得なかった。
 アマガエルが向かっているのは、創成川を越えた、国道の向かい側にあるアパートだった。最近ではあまり見られなくなった、木造の、古い2階建てのアパートだった。

 赤信号で立ち止まると、横断歩道の先に、アパートが見えていた。

 外にスチール製の階段がしつらえられた、絵に描いたような昔風のアパートだった。
 今どき、家賃はどのくらいなのか。おしゃれかと聞かれれば、おしゃれと言えるかもしれなかった。
 線香の匂いが染みこんだ、寺の本堂を遊び場にして育ったアオガエルにとっては、その古めかしさが、住んでいる人間の人となりを想像させて、どこか安心感を抱かせた。
 もしも自分が一人暮らしをするなら、こんな家を探すかもしれないな。アマガエルはそう思って、くすりと笑った。

 信号が、青に変わった。

 アパートの階段を、カッツコッツと音を立てて上っていくと、一度は通り過ぎた部屋のドアに、似つかわしくない看板がかけられていた。

“赤木探偵事務所”

 ただレタリングされた字が書いてあるだけの、粗末な看板だった。看板の見た目と同様、裏の顔は泣く子も黙る高利貸し、なんていらぬ詮索をされても、文句は言えないたたずまいだった。
 インターホン。ではない、ブザーを押すと、「はーい」と、間延びしたような返事が奥から聞こえてきた。
 ほどなくして、玄関のドアが開いた。

「赤木です、いらっしゃい」

 と、どこか見覚えのある顔が現れた。
「――あれっ、電話くれた人?」
 アマガエルは、小さくうなずいた。
「どこかで見覚えがあるんだけど」と、ニンジンは中学校時代を思い出していた。「ああ、もしかして、コウシンでしょ、幌辰中学校。じゃないかな――」
 二人は、同じ中学校の出身だった。
「ごめん、間違ってたら悪いけど、“アマガエル"とか、言われてなかったっけ」
 ニンジンは、お世辞にも、きれいとは言えない事務所にアマガエルを入れると、食卓テーブルを兼ねているのが丸わかりの応接に、アマガエルを座らせた。
「よく覚えてますね」と、腹の奥に響くような声で、アマガエルが言った。「あんまり、愉快な思い出じゃないんだけどね」
 ニンジンは、台所で熱いインスタントコーヒーを入れると、テーブルに置きながら言った。
「まぁ、それはいいとして。今日は、どうしてここに来たんだい」
 アマガエルは、コーヒーのお礼を言うと、ニンジンの目を見て、にやりと笑顔を浮かべた。

 ――――  

 子供の頃から、日の昇らない早朝から起きて、本堂でお経を上げるのが日課だった。
 暑い日も寒い日も、熱を出したとき以外は、あたりまえのように繰り返してきた。
 今ならば、そうでもないとわかるが、子供ながらに、厳しくて怖い父親だと、毛嫌いしていた。
 毎日毎日、意味のわからない経典を、すすけた仏像に向かって、読み上げていた。
 読み上げながら、ぼんやりと考えていたのは、正面で薄目を開けている仏像は、誰なのか、という事だった。
 金色に塗られた体は、もちろん本当にそんな人間がいた訳ではなく、ただの表現なのだということは、わかっていた。しかし、上半身は裸で、妙なポーズを取り、暑いせいからか、腰まで着物をはだけているのは、おかしいと思った。
 住職である父親には、一度となく聞いたことがあった。舌を噛みそうな名前が、いろいろと出てきた。さらに質問をすると、顔色が曇った。また質問をすると、舌打ちが出た。そして最後には、叱りつけられた。いつも決まって、最後には叱りつけられるので、もやもやとしたものを解決するのはあきらめ、黙ってやり過ごすことにした。
 それでも、楽しみがないわけではなかった。
 学校が休みの日には、父親の車に乗せられ、一緒に檀家の月参りに連れて行かれた。
 時には1日に何軒も回るので、気ぜわしかったが、ひとつお務めが終わると、家の人が、決まってお菓子をごちそうしてくれた。




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