「うそだよ、おばさん。信じちゃだめだ」立ち上がったソラは、ウミの元へ駆け寄ると、自分が盾になるように、妹を後ろに下がらせて言った。
「子供達のために持ってきたものですが、おひとついかがですか――」
ソラの声が聞こえなかったのか、魔女は手に持ったリンゴを、何事もなかったかのように差し出した。
「ありがとうございます」シェリルは笑みを浮かべながら受け取ると、むしゃり、とリンゴにかじりついた。
どさりっ、と先生に化けたシェリルが、めまいを起こしたかのようにその場に崩れ落ちた。
「おや、私としたことが、ちょっと材料の配合を間違えたかねぇ……」
ぼそり、と呟く魔女の言葉を聞いて、ソラは持っていたリンゴをとっさに捨てようとした。けれど、甘い香りが頭から離れず、目の前まで持ち上げたものの、どうしても放り出すことができなかった。
「食べちゃだめだ」と、ソラはリンゴを見ながら、自分に言い聞かせるように言った。
「そんなこと言うんじゃないよ」と、魔女が編みカゴを持ちながら近づいてきた。
「せっかく丹精こめて作ったんじゃないか、ひと口ぐらい味見して貰わなきゃ、作ったかいがないってもんだよ。さぁ、お嬢ちゃんも、遠慮しないで食べておくれ」
ソラが後ろを見ると、同じようにリンゴを捨てられなかったウミが、うっとりとした目でリンゴを見ながら、今にもかじりつこうと、口の前にゆっくり持ち上げているところだった。
「食べちゃだめだ、ウミ!」
と、ソラは大きな声で言ったが、自分が手にしているリンゴも、手放すことができなかった。
クックックックッ……と、声をひそめて笑いながら、魔女が言った。
「いつまでもやせ我慢してるんじゃないよ。さっさと食べちまえば、あっという間もなく夢の中に行けるんだからさ」
クックックックッ……と、お腹が痛いのをこらえるように、魔女は笑った。
「遅くなったな」
と、小さな影が開けっ放しの扉から飛びこんできて、ウミが持っていたリンゴを手で払いのけた。
「そんなもん食べちゃいけないぜ、デザートは食事の後に決まってるんだからな。少なくとも、近所のレストランじゃあそうだ」
「ニンジン――」と、ソラは言いながら、手にしたリンゴを思い切って放り投げた。
「ここは、ぼくにまかせろ。おまえ達は、早くここから逃げるんだ」
「子供達のために持ってきたものですが、おひとついかがですか――」
ソラの声が聞こえなかったのか、魔女は手に持ったリンゴを、何事もなかったかのように差し出した。
「ありがとうございます」シェリルは笑みを浮かべながら受け取ると、むしゃり、とリンゴにかじりついた。
どさりっ、と先生に化けたシェリルが、めまいを起こしたかのようにその場に崩れ落ちた。
「おや、私としたことが、ちょっと材料の配合を間違えたかねぇ……」
ぼそり、と呟く魔女の言葉を聞いて、ソラは持っていたリンゴをとっさに捨てようとした。けれど、甘い香りが頭から離れず、目の前まで持ち上げたものの、どうしても放り出すことができなかった。
「食べちゃだめだ」と、ソラはリンゴを見ながら、自分に言い聞かせるように言った。
「そんなこと言うんじゃないよ」と、魔女が編みカゴを持ちながら近づいてきた。
「せっかく丹精こめて作ったんじゃないか、ひと口ぐらい味見して貰わなきゃ、作ったかいがないってもんだよ。さぁ、お嬢ちゃんも、遠慮しないで食べておくれ」
ソラが後ろを見ると、同じようにリンゴを捨てられなかったウミが、うっとりとした目でリンゴを見ながら、今にもかじりつこうと、口の前にゆっくり持ち上げているところだった。
「食べちゃだめだ、ウミ!」
と、ソラは大きな声で言ったが、自分が手にしているリンゴも、手放すことができなかった。
クックックックッ……と、声をひそめて笑いながら、魔女が言った。
「いつまでもやせ我慢してるんじゃないよ。さっさと食べちまえば、あっという間もなく夢の中に行けるんだからさ」
クックックックッ……と、お腹が痛いのをこらえるように、魔女は笑った。
「遅くなったな」
と、小さな影が開けっ放しの扉から飛びこんできて、ウミが持っていたリンゴを手で払いのけた。
「そんなもん食べちゃいけないぜ、デザートは食事の後に決まってるんだからな。少なくとも、近所のレストランじゃあそうだ」
「ニンジン――」と、ソラは言いながら、手にしたリンゴを思い切って放り投げた。
「ここは、ぼくにまかせろ。おまえ達は、早くここから逃げるんだ」