ハハハハハッ……
と、楽しそうに笑ったアマガエルを、亜珠理はキッと睨むような目で振り返った。
「悪魔に貰っても神様に貰っても、力それ自体には悪魔も神様もないんじゃない」と、アマガエルは遠くを見るように言った。「貰った力を使う者が、悪いことに使うか、良いことに使うか、その違いによるはずだよ」
「――この覆面は、悪魔から貰ったんです」と、亜珠理は向き直って言った。「この覆面のおかげで、キングみたいに強くなれたんです。でも、悪魔から貰ったことが許せなくって、破り捨ててしまおうとしたんですけど、燃やすことも切ることもできなくって、どう処分しようか考えて、ここに来たんです」
「もし君が被らなくても、誰かが被って、悪魔のように変身するかもしれないよ」
と、アマガエルは言った。「悪魔のことを危険な存在だって知っている君が、正しく力を使えば、悪魔を寄せつけないことができるだろ。それが――」
「闇を切り裂く無敵の光。シャドウ・ライト・キング」
と、亜珠理が言うと、アマガエルは大きくうなずいた。
「――どう、一人で降りられるかい」と、アマガエルは心配そうに言った。
「大丈夫です」と、立ち上がった亜珠理はアマガエルを見ると、マスクを被っていてもそれと分かるほど、にっこりと笑いながら言った。「一人で帰れます」
「だって私、正義の味方ですから――」
「あっ」と、息を飲んだアマガエルは、亜珠理を助けようと手を伸ばした。
小さく手を振った亜珠理が、ビルの屋上から、真っ逆さまに落ちていくように見えたからだった。
「すごいな」と、屋上から下を覗いたアマガエルは、思わず舌を巻いた。
どういう原理なのか、空は飛べないようだったが、亜珠理は何もない空間を足場に、次々に飛び移りながら、どこかに向かって移動していた。
「キングか――」
と、笑みを浮かべたアマガエルは、ポケットに手を入れると、タン、という音と共に姿を消した。
雪が、どんよりと曇った空から、ちらほらと舞い降り始めた。
おわり。そして、つづく――。
※長きに渡り閲覧いただき、ありがとうございました。
またいつか、そのうち、近々、すぐにまた、新たな場所でお会いできればと思います。
それじゃ、したっけ!