くりぃーむソ~ダ

気まぐれな日記だよ。

機械仕掛けの青い鳥(30)

2019-04-30 20:53:47 | 「機械仕掛けの青い鳥」
 ガラガラガラ……。と、不意に図工室の扉が開いた。はっとして顔を向けたソラの目に映ったのは、黒っぽい服に身を包んだシルビア、子供達から魔女と呼ばれている女の人だった。

「おやおや、どうしちゃったのかねぇ、だいの大人が教室に倒れているなんて」

 魔女は後ろ手に扉を閉めると、目を細めて、やさしそうに笑いながら言った。大人の姿をしたソラとウミが、本当は小学生なのを知っているかのようだった。
「危ない、おばさん」と、ソラは目の前に突きつけられた切っ先のことを忘れ、思わず声を上げそうになった。はっとして口ごもると、息がかかるほど近くにいた忍者の姿が、恐ろしげな刀と共に、煙のように消えてしまっていた。

「あれ?」

 と目を点にして、ソラが後ろを向きながら立ち上がった。
「こらこら、そんなにあわてなくてもいいさ。片付けるなら、私も手伝ってあげるよ」と、魔女は背中に手を回すと、どこに持っていたのか、竹で編んだカゴを取りだした。「ちょっとお座りなさいな。採れたばかりのリンゴを食べておくれよ」
 魔女が持っていたカゴの中には、季節外れのリンゴがびっしりと入れられていた。

「さあ、遠慮しなくていいんだ。たんとお上がり――」

 甘い匂いを漂わせたリンゴをカゴから取り出すと、魔女は床に座った二人にひとつずつ、おいしそうなリンゴを手渡ししていった。
 甘い匂いをかいだとたん、急にお腹が減りだした二人は、すぐにでもリンゴにかじりつこうとしたが、そばで笑顔を浮かべたまま、じっとこちらを見ている魔女の様子が薄気味悪いので、なにか企んでいるのではないか、とかろうじて思いとどまっていた。
「どうしたんだい、毒なんて入っていやしないよ」
 せかすように魔女が言うと、ガラガララッ……と、また図工室の扉が開いた。
 あっ、と二人は目を見張った。扉を開けたのは、眼鏡こそかけていたものの、グレーのスーツに身を包んだシェリルに間違いなかった。
「まだ片付けてなかったのね」と、二人を見下ろしたシェリルが、片手で眼鏡の端を持ち上げながら言った。「父兄の方ですか? もう少しで終わりますので、申し訳ありませんが、外で待っていてもらえませんか」
 シェリルが言うと、魔女はもうひとつリンゴを取り出しながら言った。
「先生ですか? いつも子供達がお世話になっております。もうとっくに学校は終わっているものと思って、中まで入ってきてしまいました」
「こんな先生学校で見たことないよ」と、ソラがシェリルを指さして言った。
「信じちゃだめ、こんな先生学校にいないよ」と、立ち上がったウミが、魔女を見ながら言った。
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よもよも

2019-04-30 06:53:29 | Weblog
やれやれ。

あわてて飛び起きたけど

休日だったわ・・・。

ほっとしたけど、

テレビつけても世の中

元号が変わるって話題ばっか、

と思いきや、変な脅迫事件やら事故渋滞やら

のニュースも続けてあって、

なんか不安なことばかりでしょ。

そういえばガラス男の映画DVDで見たわ。

けっこう好み。。

シャマラン監督ここんとこあんま精彩かいてる感じするけど

あっと驚く映画また撮ってほしいなぁ。。

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機械仕掛けの青い鳥(29)

2019-04-29 22:41:37 | 「機械仕掛けの青い鳥」
「――来い。ぐずぐずするな」
 ソラとウミの耳元で、姿は見えなかったが、囁くような女の人の声が聞こえると、見えない手が、グイッと体ごと、あらがうことができないほど強い力で、二人を引きずるように走らせた。
 白い霧の中を、手探りしながら走った二人が放りこまれたのは、石膏の胸像や、生徒の描いた水彩画が飾られた図工室だった。
 放りこまれた勢いのまま、固い床を滑りながら、ごろりと転がるように机にぶつかると、きれいに並べられていた机と椅子が、ばらばらとドミノのように倒れていった。

 ピシャリ――

 と、図工室の扉が閉められた。
「あたたっ……」と、倒れた机の中から、頭を押さえたソラが這い出してきた。手にしていた上着は、どこかに無くしてしまっていた。
「大丈夫かい、ウミ」
「痛タタッ――」と、顔をしかめたウミが、山になった机をどけて、体を起こした。
「大丈夫、みたい」ウミは、どこかに怪我をしていないか、確かめるように言った。

 ――さぁ、言え。

 どこからか、姿を見せない声の主が言った。
 二人は床に座ったまま、ぐびりっと喉を鳴らして息を飲み、声の主を捜して、部屋中に目を走らせた。

「青い鳥は、どこに行った」

 座ったまま、天井を見上げていたソラが、黙って小さく首を振った。
 ススッ――と、ソラが見上げていた天井ではなく、濃い緑色をした黒板から、黒装束に身を包んだ人影が浮かび上がった。人影は、まるで陽炎のように揺らめくと、くっきりと忍者の輪郭を現した。忍者は、背中に背負った剣を抜き放つと、ソラの横へ煙のように移動し、恐ろしげな切っ先を目の前に突き立てた。

「お兄ちゃん――」と、恐ろしさに震えているウミが、声にならない声を上げた。

 忍者は、目だけを出した頭巾ですっぽりと顔を覆っていたが、口元を隠している布に手をかけると、正体を見せるように剥ぎ取った。
「隠し立てすると、ろくな事にならないぞ」
 忍者は、シェリルだった。しかしその言葉は、聞き慣れない外国語のイントネーションなど、かけらも含まない、流ちょうなものだった。
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機械仕掛けの青い鳥(28)

2019-04-28 21:28:46 | 「機械仕掛けの青い鳥」

 タン、タタンッ――。

 拳銃が二度、光を瞬かせて火花を吹くと、ヴァンパイアのような怪物は、よろよろと、胸に手を当てて崩れ落ちた。
 バサリ、とおびただしいほどの羽ばたきが起こった。目の前にいる怪物の姿が、急に輪郭を失い、ゆらゆらと陽炎のように揺れると、無数のコウモリが現れ、黒い固まりとなって、警察官に襲いかかった。
 コウモリに襲いかかられた警察官は、懸命に抵抗したが、全身にコウモリの大群をまとわりつかせたまま、力なくうつ伏せに倒れてしまった。
 逃げたソラとウミの二人を追って、コウモリが再び舞い上がると、身につけていた制服と拳銃を残し、警察官はその場から跡形もなく消え失せていた。
 横向きになったまま、力なく倒れている獣をやすやすと飛び越え、玄関に向かっていたソラとウミだったが、無数のコウモリが竜巻のような塊となって、二人の行く手に立ち塞がった。

「来るな!」

 と、ソラは着ていた上着を脱ぎ、ムチのように振り回して、襲いかかってくるコウモリを追い払おうとした。
 ウミは、しゃがみこんで耳を両手で押さえたまま、悲鳴を上げた。

「ふん――」

 と、風を切る音とともに声が聞こえ、サクリッ、サクッと真っ二つに切断されたコウモリが、ばらばらと廊下に落ちていった。
 きらりと光を反射する刃が、薄暗い廊下を何度も切り裂いた。

 チャキン――。

 黒ずくめの装束を身につけた忍者が、片膝を突き、剣を素早く背中のさやに収めた。
 わずかの間で、たくさんのコウモリが切り落とされたが、黒い塊となったコウモリの大群はひるまず、現れた忍者に狙いを定めると、竜巻のように渦を巻いて襲いかかった。
 と、懐に手を差し入れた忍者が、なにやら丸い物を取り出し、大きく振りかぶると、足下に投げつけた。

 ボンッ――。

 火の粉と共に霧のような煙があっという間に沸き上がり、目の前が白一色に覆われてしまった。
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機械仕掛けの青い鳥(27)

2019-04-26 23:18:19 | 「機械仕掛けの青い鳥」
 ソラはウミを背にして、牙をむくヴァンパイアのような怪物の方を向きながら、徐々に後ろに下がっていった。 
 ウミはソラの服をつかみつつ、肩幅の広い影の方を向きながら後じさりしていたが、ソラと背中合わせになると、ゾクリと身震いして足を止めた。
「ちょっと、どうして――」と言ったウミの声を聞き、足を止めて振り向いたソラは、異様なものを目にしてその場に凍りついた。
 スーツを着た先生が、腹痛をこらえるように跪き、両手を廊下についていた。と、獣の遠吠えが、堰を切ったように轟いた。
 手足を廊下についたまま、顎を突き出すように上を向いた先生の顔は、骨をポキポキと鳴らしながら長く伸び、犬のような風貌へと変わっていった。同時に先生の着ていたスーツが、内側からはち切れるように裂け、全身を覆うふさふさとした強い毛が、中からもっさりとあふれ出してきた。

 オオオゥ――ッ……。

 凶暴な犬歯を剥き出しにしたまま、狼のような獣に変身した先生が、ヘビのような長い尻尾をのたうつように振り乱しながら、二人に向かって飛びかかってきた。
 互いの手を取りながら、二人はなすすべもなく、その場に立ちつくすしかなかった。
 と、鋭い牙が二人に襲いかかる直前、廊下の天井から、なにかが獣に覆い被さった。
 身動きができなくなった獣は、地響きを立てて横倒しになり、泡のようになったつばきを吹き飛ばしながら、その場でむなしくのたうち回った。
 とっさに目をつぶった二人が、恐る恐る目を開けると、漁網のような網に全身を絡め取られ、身動きもできないほど、ぐるぐる巻きになっている獣がいた。
 助かったのかな……? と、状況を把握できないでいる二人が後ろを向くと、制服を着た警察官が、こちらに背を向けて立っていた。
「さっきの――」と、警察官の顔を見たソラが、思わず口走った。通学路で、三人に声をかけてきた警察官に間違いなかった。
 警察官は無表情のまま、ヴァンパイアのような怪物と向かい合っていた。自然に下ろされた右手には、すでに拳銃が握られていた。
 足を止めた怪物は、宙を舞うようにゆらゆらと動きながら、挑発するように時折甲高い奇声を発し、襲いかかる機会を今か今かとうかがっているようだった。

「二人は、先に行け」と、警察官が後ろを向いたまま言った。

 ひりひりとした緊張感で張り詰めた空気の中、気づかれないように後じさりしていたソラとウミは、警察官の声を聞いて小さくうなずくと、サッと後ろを振り返り、廊下の先に見える玄関に向かって、一目散に走り始めた。
 怪物が、二人を追いかけるように飛び上がった。
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機械仕掛けの青い鳥(26)

2019-04-26 21:42:57 | 「機械仕掛けの青い鳥」
「どうしたんですか、下校時間はとっくに過ぎているはずですけど」こちらに顔を向けている先生が、うっすらと口元に笑みを浮かべて言った。
 ウミは、ソラの後ろに下がると、背中の陰に隠れるようにして、右腕の袖をギュッとつかんだ。
 背中を向けている先生が、ゆっくりと振り向いた。
「どうして、早く帰らないんだ」
 青白いロウソクのような顔が、カッと口を開くと、針の山を思わせる無数の牙が、ぽたぽたと、糸を引きながらよだれをしたたらせた。

「キャー――……」

 耳を覆いたくなるようなウミの悲鳴が、ソラの鼓膜を破るかのように甲高く響いた。
 ソラはウミの手をつかむと、職員室のドアを蹴破るような勢いで、廊下に走り出た。

「待て!」

 もはや先生ではない、ヴァンパイアのような得体の知れない怪物が、二人の後ろを追いかけてきた。
 気持ちの悪い笑い声が、すぐそばまで迫ってきた。広いと思っていた廊下だったが、夢中で走る二人にとっては、あっけないほどすぐに行き止まりになり、学校の外に出るには、狭い階段を下りるしか、ほかに逃げ場がなくなった。
「いそいで!」ソラは階段の横で立ち止まると、息を切らせているウミを先に行かせた。
 追いかけてくる怪物を見る余裕もなく、しかし階段を駆け下りる直前、ソラがちらりと目の端で捉えたのは、奇声を発しながら宙を舞う、黒いマントのような姿だった。
 階段を下りたウミは、玄関には向かわず、走ってきたのとは逆の方向に向かって、再び廊下を走り出した。学校の外に出ようと考えていたソラは「違う」、と舌打ちをしたが、もはや後戻りすることはできなかった。
 ウミに追いついたソラは、横に並ぶと言った。
「向こうの玄関から、外に出るんだ」
「わかった」息を切らせたウミが、短く言った。
 と、真向かいに見える窓の明かりを受けて、人影が見えた。スーツを着た肩幅の広い影は、職員室にいたもう一人の先生に違いなかった。
 走っている二人は互いに声を掛け合わなかったが、通せんぼをするような先生の姿を目にとめると、その足はみるみる勢いを失っていった。
 ゆっくりと、先生が二人の方に向かってきた。
 バサリ、と二人の後ろで風を切るような音がすると、耳に残る気味の悪い声が、廊下にこだました。ヴァンパイアのような怪物が、廊下に降りてきたのだった。
 前後を挟まれた二人は、やむなく足を止めた。
 ヴァンパイアのような怪物は、「ケケケケッ……」と笑いながら、やはりゆっくりと、二人に向かって歩き始めた。
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よもよも

2019-04-26 05:52:14 | Weblog
やれやれ。

仕事でまたも札幌出張…。

26日って言えば、

宇宙の人口の半分

取り返す映画の公開でしょ。

行きたいけど、

はぁ、仕事だし無理。

はぁ…。
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機械仕掛けの青い鳥(25)

2019-04-25 20:54:41 | 「機械仕掛けの青い鳥」

トン、トン、トン……。

 ニンジンが階段を駆けあがる靴音が、だんだんと小さくなっていき、ふっつりとかき消えた。抜き足差し足で、二階の職員室に向かった二人は、あらためて、誰も生徒のいない学校が、怖いほどしんと静まりかえっているのに気がついた。
 照明が消された廊下は、遠く向かい側の窓の光が、やけにまぶしく感じられるほど薄暗かった。気のせいか、外に比べて、気温が何度か低くなっているようだった。
 高学年の靴箱が並ぶ玄関が見えると、ソラは向きを変え、校舎の隅にある階段を上り始めた。いつも上り下りしている階段のはずだったが、一段ずつ足をかけるたび、緊張感が増してくるのがわかった。
 ウミは、ソラの背中に隠れ、腰の辺りの服をグイッとつかみながら、小さな物音にもビクリッと、大げさなほど反応していた。
「ちょっとウミ、あんまり服を引っ張るなよ――」声をひそめて、ソラが言った。
「だって、お兄ちゃん」と、震える声でウミが言った。
 二階に上ると、正面に職員室の扉が見えた。ニンジンが言ったとおり、まだ先生が残っているのか、扉の上のガラスから、明かりが見えていた。
 ソラが、職員室のドアを静かに開けた。
 職員室の中は、意外にもがらんとしていた。ざっと見た限り、知っている先生の姿はどこにもなかった。おびえていたウミも、職員室の中に入るとさすがにしゃんとするのか、捕まえていたソラの服を離して、ソラの横につかず離れず立っていた。
「失礼します……」と言いながら、ソラは先生達の机の前を通り、残っている先生の所に向かった。
 天井の照明が照らしている机には、向かい合わせに二人の先生がいた。ソラの思い過ごしか、どことなく、青い鳥を捜していたサングラスの男達に似ている気がした。一人はこちらに背を向け、試験の採点をしているのか、厚く束にされた書類にささっとペンを走らせていた。書類をはさんで向かい側に座っている先生は、机に目を落としたまま顔を上げなかったが、ソラにもウミにも、その横顔に見覚えはなかった。
「――あの」と、ソラが先生達に声をかけた。が、すぐそばに来ているにもかかわらず、先生達は、声が聞こえていないのか、顔を上げようともしなかった。
「ねぇ、先生」と、もしかして、本当に姿が見えないんじゃないかと思ったソラは、今度は大きな声で言った。
「ちょっと、お兄ちゃん」と、ウミがソラに聞こえるように小声で言った。ソラが見ると、ウミは眉をひそめて首を振った。
 うなずいたソラは、大きな声を出すことなく、もう一度言った。「すみません、先生」
 背中を見せていた先生の手が止まった。こちらを向いている先生も、やっと顔を上げ、二人に目をとめた。
「なにか、ご用ですか」聞こえたのは、二人の方に顔を向けている先生の声ではなく、机に向かったまま、背中を見せている先生の野太い声だった。
「あの、ちょっとお聞きしたいんですが」と、ソラは緊張した面持ちで言った。
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よもよも

2019-04-25 06:22:46 | Weblog
やれやれ。

朝から雨だわ・・・。

なんか暑くって、

寝苦しくて目が覚めたって、

冬のこと考えりゃ贅沢な話だわね。。

連休前でなんか周り見回しても

どこか浮き足立ってて、

確かにこっちもなんかいつもよりは

テンションが下がり気味で、

桜の開花が宣言されたってニュース聞いても、

「あっそ」って感じ。。

ああ、休みに入ったらまずは1日寝て過ごす。

? 変な目標だけど、心の叫びかも??
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機械仕掛けの青い鳥(24)

2019-04-24 20:24:16 | 「機械仕掛けの青い鳥」
 立ち止まったニンジンが見上げると、青い空にとけこむような鳥が、三人を誘うように、ゆらゆらと左右に揺れながら、学校の方に向かって真っ直ぐ飛んでいった。
「後を追いかけて来いって、そういうことなのかよ」
 振り返った三人が気がつくと、今の今まで後を追いかけてきていた警察官の姿が、どこにも見えなくなっていた。
「どうなってんだ、こりゃ――」ニンジンが首を傾げると、青い鳥の行方を目で追っていたソラが、驚いたように言った。
「教室の中へ、入っていった」

「早く戻ろう――」

 ニンジンが言うと、三人は来た道を、息を切らせながら学校に戻っていった
 小学校の校門の前で、三人は足を止めた。頑丈なスチール製のゲートが、しっかりと閉じられていた。
 青い鳥は間違いなく、最上階の教室に入っていった、とソラが六年生の教室を指さした。ウミも、青い鳥が閉じられた教室の窓ガラスを通り抜け、中に入っていったのを見たと言った。
「追いかけてきた警察官が、どこかに姿を消した」と、ニンジンが言った。「青い鳥を見つけたとたんだ。ひょっとすると、あの警察官も、青い鳥を探して変装していたのかもしれない。だとしたら、とっくに先を越されたかもな――。だからって、ここで引き返すわけにはいかないぜ」
 ニンジンは、小さな手でゲートをつかんだ。鍵がかかっていなかったのか、スルスルと、力をそれほどかけていないにもかかわらず、あっさりとゲートが開いた。
「やっぱりな。もう誰かが、先に来てるってことだろう」
 三人は門を抜けると、ウミが使っている低学年の玄関に向かって行った。

「おい、緊急事態なんだ、靴なんか履き替えなくたって、怒られやしないよ」ニンジンは、上履きに履き替えようとしているウミに言った。

「おまえも、もし罠があったらどうするんだ」と、ニンジンが、手に靴を持って裸足で歩いているソラに言った。
「大丈夫かな……」と、心配するソラにニンジンが言った。
「警察官に化けるような連中だぞ、どんな妨害をしてくるのか、わかったもんじゃない」
「それじゃあ、二手に分かれよう」ニンジンが言うと、ウミが「えっ」と、不安そうな声を洩らした。
「おまえ達は、職員室に行ってくれ。生徒は誰も残っていないだろうが、先生は誰かしら残っているはずだ。もしかすると、青い鳥を見ているかもしれない」
「ニンジンは?」と。ソラが聞いた。
「オレは、六年生の教室を覗いてくるよ。二人が見たとおりなら、きっとなにかしら痕跡が残っているはずだ」
 三人は互いにうなずくと、二手に分かれて学校の中を進んでいった。
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