「うっ――」
目の前が、真っ白い光に包まれた。
あれっ……。勢いに乗った足をあわてて止めると、そこは、人々が行き交う見たことのない街の中だった。
「あれっ?」
と、ソラはすぐに後ろを振り返った。たった今まで走っていたはずの水路が、跡形もなくなっていた。かわって、地下駐車場の出入り口が、大きく口を開けていた。
「――なんだよ、これ」明かりの灯る駐車場を見ながら、ソラはつぶやくように言った。
と、ウミが後ろで、大きな声を上げた。
「見て、お兄ちゃん。青い鳥――」
「えっ」
あわてて向き直ったソラが、ウミの指さしている先を見上げると、濃い青空に浮かぶ雲の間に、小さな鳥の姿が見えた。
「追いかけなきゃ――」
どこか半信半疑なソラに構わず、ウミが通りを走り始めた。
「ちょっと、ウミ、待てったら……」
ソラはとっさに手を伸ばし、ウミの腕を捕まえようとしたが、服にさわることもできず、ウミの背中が、あっという間に小さくなっていった。
「待てってば、ウミ、勝手に動き回るなよ」
街をゆく人々の間を縫うようにして、二人は青い鳥を追いかけていった。夢中になっていた二人だったが、次第に距離が開き、青い鳥の姿がとうとうビルの陰に消えしまったところで、ぜえぜえと息を切らせながら、あきらめたように足を止めた。
「なにかあったのかな」と、ソラは車が行き来している道路を見ながら言った。
四角いボードが、投げ捨てられたように何枚も落ちていた。短い言葉が、勢いを感じる字体で、ボードの一面に大きく書かれていた。ただ残念ながら、ソラにはどんな意味の文字が書かれているのか、わからなかった。しかし、力強く書かれた文字は、なにかを訴えているのに違いなかった。
「ここ、どこ……」
ウミはソラの隣に来ると、あらためて周りの様子を見回した。
ウミの言葉にはっとしたソラも、思い出したようにぐるりと周りを見回した。
二人は、めぐらせていた頭を戻すと、互いに顔を見合わせた。
「イヴァンが言ってたよね」と、ソラは思い出しながら言った。「青い鳥って、時間を越える能力があるって……」
こくんとうなずいたウミの後ろから、黒い警棒を持った警察官が一人、のっしのっしと歩いてくるのが見えた。