「あり得ない事じゃないさ、地球が気まぐれに自転の速度を上げたり下げたりすれば、時間なんてとたんに曖昧になる」イヴァンが、肩をすくめて言った。
「ふん、つまらないことを言うじゃないか」と、ニコライがあきれたように言った。「地球が気まぐれに速度を上げようと、時計は機械的に一定の時刻を刻む。そもそもそんな大がかりなセットは、神様じゃなきゃ作れまいよ」
「閉塞された狭い空間にいて、時間の感覚が曖昧になり、単に実感が持てなかっただけか……」イヴァンは独り言のように言うと、すぐに首を振って打ち消した。「――だめだ、それじゃ話が振り出しに戻っちまう」
「互いの見解をぶつけ合うのはいいがな――」と、ニコライが、とがめるように言った。「とにかく今は、逃げた子供達を助けるのが優先だ」
「ああ、青い鳥を追いかけるのは、その後だ」
二人は、子供達が逃げていった方に向かって、そろって走り出した。
子供達の後を追いかけていったソラは、ウミともども、マンホールにつながる梯子を上って、地上に出た。
キュンキュン――と、いくつもの銃弾が、思わず首をすくめたくなるほど、空気を切り裂いて飛ぶ音が、あちらこちらから聞こえてきた。
「手をつかんで……よいしょ」と、ソラは梯子を登ってきたウミに手をかすと、地上まで引っ張り上げた。
「大丈夫、怪我はないかい?」ソラが聞くと、ウミは服についた汚れを払い落としながら、うなずいた。
二人はすぐにマンホールから離れ、先を行った子供達の姿を捜した。すると、いつのまに追い越されたのか、確かに自分達の後ろにいたはずの子供が何人か、ソラよりも先に地上に出て、斜め前に建っている、屋根も、壁もほとんど失っている廃墟の中に入っていくのを見つけた。
下水道から出てきたほかの子供達も、次々と同じ廃墟の中に入っていくのを見て、ソラ達も迷わず、後を追って走り出した。
元は教会だったのか、廃墟に足を踏み入れると、正面の高い位置に砕かれた像が掛けられ、仕切りのない広い室内には、壊れた何列もの机と、ひしゃげて座れない椅子がびっしりと並んでいた。
「我々が今日のこの決戦を迎えるに当たって――」
白いヒゲに顔中を覆われ、肩からライフル銃を提げた男が、祭壇のような段の上に立ち、こぶしを握りしめながら、なにかを力強く訴えていた。
男と同様、銃器を手にした大人達の姿がいくつもあった。集まった子供達は、思い思いの場所に腰を下ろして、男の言葉に熱心に耳を傾けていた。
「――よくここまでたどり着いた。我々の手で、一方的な支配から解放されよう!」白いヒゲの男は声高に叫ぶと、片手にライフル銃を持ち、天を射るように力強く頭上に持ち上げた。
「ウォー――」と、その場にいた誰もが、思い思いの手で硬くこぶしを作り、声を張り上げ、何度も何度も、頭上高く突き上げた。
「ふん、つまらないことを言うじゃないか」と、ニコライがあきれたように言った。「地球が気まぐれに速度を上げようと、時計は機械的に一定の時刻を刻む。そもそもそんな大がかりなセットは、神様じゃなきゃ作れまいよ」
「閉塞された狭い空間にいて、時間の感覚が曖昧になり、単に実感が持てなかっただけか……」イヴァンは独り言のように言うと、すぐに首を振って打ち消した。「――だめだ、それじゃ話が振り出しに戻っちまう」
「互いの見解をぶつけ合うのはいいがな――」と、ニコライが、とがめるように言った。「とにかく今は、逃げた子供達を助けるのが優先だ」
「ああ、青い鳥を追いかけるのは、その後だ」
二人は、子供達が逃げていった方に向かって、そろって走り出した。
子供達の後を追いかけていったソラは、ウミともども、マンホールにつながる梯子を上って、地上に出た。
キュンキュン――と、いくつもの銃弾が、思わず首をすくめたくなるほど、空気を切り裂いて飛ぶ音が、あちらこちらから聞こえてきた。
「手をつかんで……よいしょ」と、ソラは梯子を登ってきたウミに手をかすと、地上まで引っ張り上げた。
「大丈夫、怪我はないかい?」ソラが聞くと、ウミは服についた汚れを払い落としながら、うなずいた。
二人はすぐにマンホールから離れ、先を行った子供達の姿を捜した。すると、いつのまに追い越されたのか、確かに自分達の後ろにいたはずの子供が何人か、ソラよりも先に地上に出て、斜め前に建っている、屋根も、壁もほとんど失っている廃墟の中に入っていくのを見つけた。
下水道から出てきたほかの子供達も、次々と同じ廃墟の中に入っていくのを見て、ソラ達も迷わず、後を追って走り出した。
元は教会だったのか、廃墟に足を踏み入れると、正面の高い位置に砕かれた像が掛けられ、仕切りのない広い室内には、壊れた何列もの机と、ひしゃげて座れない椅子がびっしりと並んでいた。
「我々が今日のこの決戦を迎えるに当たって――」
白いヒゲに顔中を覆われ、肩からライフル銃を提げた男が、祭壇のような段の上に立ち、こぶしを握りしめながら、なにかを力強く訴えていた。
男と同様、銃器を手にした大人達の姿がいくつもあった。集まった子供達は、思い思いの場所に腰を下ろして、男の言葉に熱心に耳を傾けていた。
「――よくここまでたどり着いた。我々の手で、一方的な支配から解放されよう!」白いヒゲの男は声高に叫ぶと、片手にライフル銃を持ち、天を射るように力強く頭上に持ち上げた。
「ウォー――」と、その場にいた誰もが、思い思いの手で硬くこぶしを作り、声を張り上げ、何度も何度も、頭上高く突き上げた。