「いいえ。全力だったわ」と、沙織は自分を支えていたジローの手を放して言った。「彼女を止めるために、必死だった」
まだおぼつかない足で立っている沙織の肩に、アオがふわりと止まった。
「ごめんね、アオ」と、沙織はちらりと、肩に止まった機械仕掛けの青い鳥を見て言った。「やっぱり、あなたアオなんでしょ。私の知っているアオにそっくりだもの。――ううん。マスクの子を助けなきゃ。あの子じゃ、スカイ・ガールには勝てないから」
Sガールにしたたか地面に叩きつけられた亜珠理は、力を振り絞って立ち上がろうとしているところを、「もう立つな、寝てろ」と、何度も繰り返し、Sガールに踏みつけられていた。
「石を返せよ」と、真人は沙織を見ると、手の平を出して言った。「おまえ達のかなう相手じゃない」
「おれからも、頼む」と、ジローは沙織を見て言った。
「――」と、沙織は一度は首を振ったが、Sガールに踏みつけられる度、苦悶の声を上げる亜珠理を目に留め、しぶしぶ指輪を外した。
「あなたにまかせるわ」
「まかせせとけって」と、真人は指輪を受け取ると、右腕の銃を実体化させ、装填しようとした。
「おまえら、シカトしてんじゃねぇぞ」
と、指輪を真人に手渡した沙織に、Sガールが音よりも早い蹴りを放った。
しかしSガールの放った蹴りは、わずか紙一重のところでジローに足首を掴まれ、沙織に食らわせることはできなかった。
真人は、Sガールの蹴りがはらんでいた風圧を受け、ふわりと浮き上がったかと思うと、後ろ向きに転がされてしまった。
アオは、翼の下に隠した剣を抜くことなく、飛び上がって宙に留まったまま、なぜかじっと様子をうかがっていた。
「放せ」と、Sガールはもう一方の足でジローの腕を蹴り外すと、沙織ではなく、ジローに殴りかかった。「私の邪魔をするヤツは許さない」
「――もう立つな、そこでじっとしていろ」
と、ジローはSガールに向かって行こうとする沙織に言った。「おれを倒さなければ、彼女には手を出させない」
ジローは胸にSガールの拳を受けたが、一瞬の後、同じように拳を固めて打ち返した。