映画で楽しむ世界史

映画、演劇、オペラを題材に世界史を学ぶ、語ることが楽しくなりました

音楽が引っ張る「オペラ座の怪人」(1)

2012-07-20 13:19:34 | 舞台はフランス・ベネルックス
「オペラ座の怪人」(1)

①イギリスの貴族音楽家アンドリュー・ロイド・ウェバーのミュージカル(映画もあり)。

 確かに音楽は重厚・甘美、文句なく素晴らしいし、舞台は豪華絢爛、
 推理・怪奇的要素も加わり大ヒットした理由は分かる気がする。

 しかし物語の筋は、猥雑なものをいろいろ混ぜ込んだ感じで何ともすっきりしない。
 ストーリーだけで論じるとすれば、明らかにB級、駄作極まりない。

 要はオペラ座の地下に住む「怪人」が、コーラスガールだった女の子に恋をし、
 地下の隠れ家に連れ去るが、劇場の経営者としてやってきた金持ちで元彼の快男子が、
 オペラ座の地下水道で大活躍、何とか彼女を取り戻すという話。
 我々爺々婆々は顛末を聴いても「共感、感動」とはいかないだろう。

②いったい何で、こんな筋書きが良いのか?ちょっとだけ考えてみた。

 この劇の原作は新聞記者でもあったガストン・ルルーの小説。
 彼は新築されたオペラ座が、観客、出演者、楽団員等にとって巨大・複雑に過ぎて、
 なにか馴染めない、幽霊でも潜んでいる気がするといった噂話に着想して小説を書く。

 実際のオペラ座のロビー・客席・舞台や地下の巨大奈落など隅々まで見て歩き、
 また建築経過も詳しく調べ、10年超の建設期間中、
 始終地下水に悩ませれた話や、シャンデリアの一部が落下した事件などもストーリーに取り込み、
 ミステリアスな怪奇ロマンに仕立て上げた。

 ミュージカル版ではラブストーリーが強調されているが、
 原作では、肝心の怪人エリックは奇形児であり、
 過去の恨みから事件を起こして警察に狙われている身である。

 また、原作では、当初クリスティーヌはファントムが本当の音楽の天使ではないかと
 憧れのような気持ちで近ずくが、そうでないと分かると後は恐怖で逃げるばかりであることなど、
 随分話が違う。

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