映画で楽しむ世界史

映画、演劇、オペラを題材に世界史を学ぶ、語ることが楽しくなりました

名作「女だけの都」題名の由来

2010-12-26 18:49:59 | 舞台はフランス・ベネルックス

1935年フランス・シネマ大賞の名作の題名は・・・

 

 

ギリシャ悲劇を映画にしたものは「アポロンの地獄」「王女メディア」を始め「エレクトラ」「トロイアの女」「イフゲニア」等数多くある。しかし喜劇を映画にしたものが見当たらない。終戦直後フランス映画で「女の平和」があったが、もはやビデオショップでもお目にかかれない。

と思っていると、昔朝日新聞社が出した「世界シネマの旅」(1994年)を読み直して思わぬ発見をした。それは戦前1935年の喜劇映画ながら、専門家がフランス映画史の名作として必ず取り上げる「女だけの都」の話。

映画の舞台は1616年フランドル地方の小都市。

ある祭りの夜、スペイン軍が駐屯に来るという報に、町は大混乱に陥る。ほんの一昔前、スペイン軍がフランドルで犯した略奪暴行、恐慌政治はまだ記憶に新しい(宗教改革闘争、ネーデルランド独立運動)。

そこでお怖気ついたお偉方は、町長が急死したことにして身を隠し、町長夫人達が喪服の正装でスペイン軍を出迎えて・・・お色気作戦でスペイン軍を篭絡する。

フランドルフリューゲル家は画家を何人も輩出している家柄。ストーリーの中にフリューゲルを名乗る画家が出てくるし、有名な絵「農民の踊り」が動き出したかのように見えるシーンが続くなど、まさに「生きたフランドル美術」そのもの。

そして俳優達の芝居の旨さ、エスプリの効いたセリフの面白さなど本当に楽しめる、まさに名作。(但しこの地域は政治的に色々微妙、難しいところがあり、公開当時、上映反対運動や上映禁止など物議をかもしたという)

 

そこでこの映画の題名の話。

フランス語の原題を直訳すると「英雄的お祭り」(女達がスペイン軍を飲ませ歌わせのお祭り騒ぎでフランドルを救った)。英語版は「フランダースのカーニバル」ドイツ語版は「賢い女性」。

日本での題名は一般公募によった。そして東京の女性の応募作から「女だけの都」と決められたのだが・・・その過程で古代ギリシャのアリストファネスの喜劇「女の平和」が関係者の頭をよぎったことは間違いなかろう。古代ギリシャの女性達が相次ぐ戦争にあいそを尽かし、団結してセックス拒否作戦を取る、そのことによって平和を取戻すというお話、この映画の女達ストーリーとダブったのであろう。

(参考 1994年 朝日新聞社刊「世界シネマの旅」第3巻)

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