映画で楽しむ世界史

映画、演劇、オペラを題材に世界史を学ぶ、語ることが楽しくなりました

「美女と野獣」系列か「オペラ座の怪人」(2)

2012-07-20 13:28:52 | 舞台はフランス・ベネルックス
「オペラ座の怪人」(2)

③この原作の「怪人=奇形児」から少し私見をこじつけると・・・。

 フランスの大衆娯楽分野には「美女と野獣もの」という系譜がある。
 そもそも「美女と野獣」は1756年に出版された民話集に端を発するが、
 野獣が美女に懸想する話を取り込んだ物語は多く、音楽、バレー、
 映画、ミュージカルと盛んに繰り返される。
 最も元話に近いのはジャン・コクトーの「美女と野獣」。
 最も楽しめるのは「ノートルダムのセムシ男」。

 元々は「愛がすべてを良きものに変える」というキリスト教的テーマを持ったものだが、
 そんなことはどこ吹く風、現代は・・・ルックスに自信のない男どにも
 「こんな俺でもひょっとして美女を娶ることが出来る」なんて妄想を持たせる、
 ストーカー行為を流行らせた原因を作ったなんて・・・ウソ。

 いずれにしてもフランスの男は、自分の顔のことも考えないで軟派に精を出す、
 「オペラ座の怪人」もこのテイストがあるのではなかろうか。

④しかし更に考えると、そもそも野獣・怪人伝説はどういうことか

 パリのオペラ座建設は、ナポレオンの甥「ナポレオン3世」が、
 有名なオスマン男爵を起用してのパリ大改造の一環として
 (自身を称える記念碑的建造物を意識し)1860年に発令したもの。

 建築設計はシャルル・ガルニエの案が採択され、
 1874年12月に完成、翌年1月5日に落成式が行われた。

 考えてみるとこの時期フランスは喧騒極まりない。
 そもそも大統領だったナポレオンがいつの間にか「皇帝」になり、
 パリ大改造は良いのだが、伯父を真似してやたらに海外出兵
 ・・・中国、インドシナ、クリミヤ、メキシコ等々。それがそんなに上手くいかない。
 スエズ運河は作ったが、1870年の普仏戦争に負けて自身が捕虜になるという醜態。
 とうとう、有名な「パリ・コミューン」を招き「第三共和制への移行」ということになる。

 とすれば、革命や騒動騒ぎに血の湧くフランス人のこと。
 ギロチンとまでいかぬとも、ルーブル宮からオペラ座周辺は、
 政治的・経済的・社会的あらゆることで命のやりとりも多く、恨み辛みの溜まった場所。

 そんなところで地下を掘り返すとなれば、幽霊話の一つや二つあっても何の不思議もない。
 事実このオペラ座工事は何度も、中断されて随分時間がかかった。
 それでも経済は、産業革命期の勢い盛ん・・・あの広さ・大きさ、
 飾れるものは何でも飾るという豪華極まりない代物が出来上がったが、
 その前途にややこしい話がいっぱい立ちはだかったことは間違いないだろう。
 そこを新聞記者ガストン・ルルーは捉えたのだろう。

 ストーリーはB級、駄作などと貶したが、少しは見直す値打ちがあるのかも。
 ・・・日本にも「番町皿屋敷」なんて夏向け物語がある。









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