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映画で楽しむ世界史

映画、演劇、オペラを題材に世界史を学ぶ、語ることが楽しくなりました

ブラッド・ピット「セブンイヤーズ・イン・チベット」

2010-12-26 15:19:01 | 舞台は東アジア・中国

ノーベル平和賞ダライ・ダマにも関わる歴史物語

リトル・ブッダ」の記事を書きながら、この映画のことを忘れていたことに気がついて、改めてアジア史も勉強し直さねばならないと猛反省の次第。

この映画は興行面ではもう一つであったようであるが「ガンジー」や「ラスト・エンペラ」に比肩する大作、重要映画である。

 映画の内容はいろいろ奥深いが、要約すれば以下の3点

①実際に「セブンイヤーズ・イン・チベット」という本を書いたオーストリア人登山家ハインリッヒ・ハラーの冒険と人間的成長物語。

②チベットという窮めて異質な地域(国)の文化と、そこでの宗教ならびに政治指導者ダライ・ダマとの出会い。・・・「リトル・ブッダ」は仏教思想を何とか理解しようという点に重点があったが、ここではチベットの政治や社会の状況を描こうとしている。

③時代背景としての第二次世界大戦。そしてその戦後、共産主義中国のチベット軍事侵攻、属国化の様子。(中国政府はこのシーンにクレームをつけたという)

ここでは、③の事件1950年の「チャムド戦役」をとりあげる。

中国共産党が率いる「人民解放軍」は、1949年に中華人民共和国を建国。翌年10月には「チベットは中国の一部である、チベット人民を解放する」との名目で、東チベットの州都チャムドへ軍事侵攻、チベット軍はひとたまりもなく敗走、中国は首都ラサに進駐する。

以後、1959年まで、チベット国内からおきる独立運動や、中国のダライ・ダマ懐柔策、インドの仲介姿勢など複雑な政治的つばぜり合いがあるが、結局中国共産党の猛烈な圧力の下、ダライラマ14世はインドに亡命し、チベットにはラマ教第2位の僧パンチェンラマが残ることで今日に至っている。現在チベットは中国の自治区扱い(国土面積は中国の四分の一を占めるが、人口は約600万人中国の総人口の0.5%)

 この中国によるチベット支配をなんと考えるか。

今日「共産主義による人民解放」などと考える人は先ずいない。

そこで・・・いわゆる中国の中華思想。この思想、というより周辺諸国、民族に対する優越意識は、その言葉に端的に表れる。

①中華(華夏、中国)とは、中心の華=地理的文化的中心を意味し、

②周辺諸国は、東夷、西戎、南蛮、北荻などと読んで、蔑視する。

こうした思想は、周の時代に華夷を区別する風が生じ、中国式の礼を知らない(自己に敬意を表さない)民族を禽獣のようにみなし、天下は有徳の天子が統治し彼らを徳化し懐かせるべきとの観念が染み着いてゆく。少なくとも清朝時代までその調子で・・・西洋との交流を受け付けなかった。 この観念が19世紀中国衰退、植民地化を招く原因とも言われるが・・・中国人はどう理解しているか?時代変わって21世紀にはどう変わってきているのであろうか?

 私見では、中華思想の原点は中国人がいち早く文字、しかも表意文字たる漢字を持ったこと。

そこから、文字を持たない人や民族に対し文字による命名が生じ(名前を表記して与える)、それが進んで中国に対する朝貢外交、文物輸入が盛んになっていったものと思っている。

アジア史では、各民族や国家がこの中国文化の圧力をどう受け止め、中国との距離をどう保ったか・・・その辺を常に頭に置くことが重要。

ちなみに日本人の場合は漢字をどのように受け入れ、どのように日本語を確立していったか・・・今月発売の岩波新書「日本語の歴史」が分かりやすい。

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