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一日一書 1713 寂然法門百首 61

2022-02-11 11:02:29 | 一日一書

 

繋縁法界一念法界


 
人知れず心ひとつをかけくればむなしき空に満つ思ひかな

 

半紙

 

字体:草書

 
【題出典】『摩訶止観』一・上


 
【題意】 縁を法界に繋げ、念を法界に一(ひとし)うす

全世界に心を繋ぎ、全世界と心を同じくする。


 
【歌の通釈】
人知れず心1つをあなたにかけてきたので、大空にその思いが満ちるよ。(人知れず一念を全世界にかけてきたので、三千世間にその思いが満ちるよ。)

【参考】

わが恋はむなしき空にみちぬらし思ひやれども行く方もなし(古今集・恋一・四八八・よみ人しらず)

【考】

右の古今歌の本歌取り。恋の思いが大空に広がり満ち溢れることと、極小の恋が極大の三千世間に満ちるという一念三千の心を重ね合わせた。恋は罪業であるどころか、大空に満ち溢れるような一念の激しい恋の思いは、一念三千という天台の根本思想に通じるという大胆な発想。恋の想いの中に全世界と我が心が一体化する感覚をとらえようとした。

(以上、『寂然法門百首全釈』山本章博著 による。)


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▼信仰と恋愛は、キリスト教でも、いつも深い関係にあるものとして捉えられてきたように思います。恋愛歌としての「雅歌」は、旧約聖書の中で、愛されてきました。仏教でも同様なことが見られるのは、とても興味深いことです。
▼古今和歌集には、「大空」ということばがよく出てきて、どこか「近代的」な印象を与えます。
▼有名なところでは、
「大空は恋しき人の形見かは物思ふごとにながめらるらむ」酒井人真 (さかゐのひとざね)
「大空を照りゆく月し清ければ雲隠せども光消なくに」尼敬信
などがあります。
新古今和歌集では、「大空は梅のにほひにかすみつつくもりもはてぬ春の夜の月」(藤原定家)などが有名です。
               

 

 

 


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