山本洋三「夢の時間」より
(半紙)
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ぼくの唯一の詩集「夕日のように」の中の一篇。
全文は以下の通りです。
夢の時間
夢の岸辺に
うちあげられる
セザンヌのリンゴ
やさしい時間の輪郭を
明るくふちどり
閉ざされる果肉に
つつみこまれる遠い青空
──夢の時間はいつからはじまったか
鹿の脚の形した寝台は
唾液のようになまあたたかい
海の水にうっとりと浮かび
カモメの瞳
ほどの貝がおまえの閉じたうすいまぶたに
白い影をおとす
──やわらかくくずれるのは
おまえの想い出ばかりでない
海の水をたっぷり含んだ風が
おまえの杏のようにすっぱい頬に
冷たいトゲを刺してゆくその時
おまえはみなければならぬ
夢よりさめようとしてなお
夢の中へと逆流する
すきとおるおまえの後姿を
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20代半ばごろの作。
何だかよく分からない詩ですが
その頃は、こういうイメージをひたすら追いかけていたようです。
全体としては、まとまりのないしょうもない詩ですが
第1連だけなら、わりといいかも。
後は、苦しまぎれに書いていますね。