顎鬚仙人残日録

日残りて昏るるに未だ遠し…

老木の多い偕楽園

2019年08月22日 | 水戸の観光
夏の終わり、雨上がりの偕楽園はさすがに人影まばらです。
天保13年(1842)創設の偕楽園は、樹齢100年以上と推定される老木も多く、歴史を語るようなその姿は、花のない時期の鑑賞の楽しみの一つです。
梅の老成の美を語ることばに「疎瘦横斜」があります。枝はまばらで、肌のゴツゴツ感、横や斜めに枝を張る姿が良いとされてきました。また、風雪に耐えてきた老木の幹や形には風格が感じられ、「鉄幹」という雅称まであります。
老成の美を追求する梅やいろんな盆栽に使われる、観賞用の幹の名称を梅林に探してみました。
多く見かけられる「ネジ幹」、ねじれた樹形はなぜかほとんど右巻きですが、左巻きもあるようです。原因についての確証はなく、地球の自転とコリオリの法則などの説がありますが、形成層の細胞が斜めに位置してねじれができ年数の経過で強調されるのではという専門家の意見もあります。

なお、この形成層とは活発に細胞分裂を繰り返している部分で、内側に根から水分を葉まで送る導管、外側に葉から根まで養分を送り返す師管があります。この形成層が毎年外側に向かって成長を繰り返し、内側の残った部分が年輪となって、木部として木を支えます。
内側の木部は成長を止めた死んだ組織のため、年月を経ると腐って木くずのようになり土に還りますが周りの樹皮部分に形成層は残るため、水分養分の行き来は行われ木は生きています。ただ、木を支えることはできなくなり、支柱に寄りかからねばなりません。この支柱は園芸用語で頬杖(方杖)支柱といいます。
「ネジ幹」の代表と仙人が認める老木は、南崖の高いところにあるので、注意しないと見落としてしまいます。
「ウロ幹」は 空洞になった状態の幹で、大きな杉の木などでもよく見かけられます。
水戸六名木の「白難波」、真ん中の木質部分が腐って消失しウロとなり、周りの樹皮部分が円弧の形で残っています。
東門見晴亭脇の銘木、「梓弓」のウロから、偕楽園を開設した水戸藩9代藩主斉彬公の諡が付いた「烈公梅」の若木を撮ってみました。
「サバ幹」は、皮が剥がれたりして中の木質部がむき出しになった幹のことです。
「シャリ幹」は、幹や枝の木質部が朽ち果てて、白骨のように見えるものをいいます。シャリ(舎利)と辞書を引くと、仏の遺骨、白い米粒と出てきます。
「コブ幹」は、コブなどで覆われたゴツゴツした幹をいいます。
盆栽ではありえない形態なので、とりあえず「横臥幹」と名付けました。樹皮が土に付くことでかえって元気が出ているようです。
こちらは「案山子幹」と名付けました。細い形成層の樹皮一本がわずかに残って、木全体の水と栄養の供給を行っています。
まるで城を守る老将が仁王立ちのようです。
老木としての威厳を保ち続けているこれらの梅の木も、遅かれ早かれ枯朽して伐採される運命であることは確かです。偕楽園公園センターでは、剪定は見栄えではなく、樹勢を強化することに重点を置き、また樹に管理の優先順位(トリアージ)を示す色付きのタグを取り付け、作業員が情報を共有するなど、老木に対応した細かい管理などを行っているそうです。